先月の中旬ころから末にかけて、「人の密集を避ける為に外出を自粛して」と呼びかけている側の、政府や自治体の会見や国会、閣議、専門家の会議が、通常通り人が密集しており全く説得力がない、という話が広がり、そのように批判されて初めてそれらに、人の間に一定の距離を置く対応が見え始めた。それと同時期かやや後追い気味に、テレビの生放送番組でも同種の対応が始まった。その時点で自分は「政府もメディアも緊張感がない」「自分達は感染しないと思っている他人事感が如実に現れている」と思っていた。
2月の下旬には、カラオケボックスやライブハウス、屋形船等の密閉空間での宴会などで感染が広がる恐れが指摘され始めたのに、政治家やメディア関係者は自分達がそれと似たような環境にあることを認識するのに1ヶ月もかかった。しかも自発的に気付いたわけではなく、周りから批判され、政府関係者や芸能人などから感染者や死者が出て、やっとそれに気付いた。政治や専門家、その発信を伝えるメディアに不信が広がるのも当然だろう。
それから約1ヶ月が過ぎ、収録形式の番組でも、3月以前に通常収録したストックがつき始めたようで、演者間に一定の距離を置いたスタジオ収録や、自宅や別室などからの中継形式で演者が出演している番組を、今ではしばしば見かけるようになった。
この数年、Youtubeなどで自宅等から配信する人が急激に増えたことなどによって、スマートフォンやカメラなど配信に使う機材の高性能化が進んだ。また廉価版機材の低価格化も同時に進み、個人で簡易スタジオのような設備を持っている人は決して珍しくない。しかも今はそんな機材を揃えなくても、スマートフォンやタブレット端末が1台あれば、とりあえずはそれだけで動画撮影から編集、そして生配信まで出来る状況だ。
これは昨日報じられた、新型コロナウイルス感染症対策推進室の職員が、当該ウイルスに感染していたことが確認され、この職員は、新型コロナウイルス対応担当・西村大臣の4/19の病院視察に同行し、その他に会議などでも職員と大臣が接触していたことを受けて、今のところ症状はないが西村大臣が念の為自宅待機することになった、と伝えるニュースの映像だ。
西村大臣が自宅待機、症状はなし 対策室で感染者受け TBS NEWS
記事にはこうある。
25日に予定されていた会見も中止大臣が自宅待機することになったので、昨日・4/25に予定されていた会見が中止になった。だが前述の通り、西村氏に発熱等健康上の問題があるわけではない。なぜ中継による会見を行わず、会見そのものを中止することにしたのか。
考えられる理由は2つある。
1つは、実際は既に西村氏に何らかの症状がある、つまり西村氏に、会見することができない健康上の問題がある可能性だ。もっと端的に言えば、西村氏の感染は既に明らかで、軽症かそれ以上の症状・発熱や咳があり、担当大臣が感染という、政府にとって都合の悪い情報を隠蔽する為に西村氏を人前には出せない、という可能性である。
そんなことになっているとは、これまでの戦後の日本の政権であれば「十中八九ない」と言えるかもしれないが、現政権はあからさまな隠蔽改竄捏造すら厭わない、情報操作上等政権であり、決してあり得ない話ではない。
もう1つ考えられるのは、自分達が感染する恐れ、周辺から感染者が出る恐れを考慮しておらず、隔離等によって離れた場所から公務を行う恐れに対する準備をしていなかった可能性だ。
冒頭でも書いたように、政府やメディアには「自分達は感染しないと思っている他人事感が如実に現れている」感じが如実に感じられたし、この新型コロナウイルス感染拡大だけを見ても、今の政府はプランAが失敗した際のプランBを全く用意しないどころか、想定すらしていない、と感じられることもかなり多い。そんな理由から、自身が感染したり、周辺から感染者が出て隔離が必要になる恐れを考慮し、離れた場所から会見をする準備、つまりテレワークの準備を怠っていたのではないか?とも考えられる。
前述の「西村氏が既に感染していることを隠す為」という想定よりも、この仮説の方が可能性が高いと自分には思える。
安倍首相は4/7に、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を発令した際の記者会見で、企業に対して、テレワークを出来る限り行って、出勤者を最低7割削減するよう求めていた。
原則在宅勤務、出勤者最低7割削減を-安倍首相が企業に要請 - Bloomberg
民間にはテレワークを出来る限り行って出勤者を7割減らせと要求する政府が、テレワークの準備を怠っていて、健康上問題がないのに大臣が自宅待機になっただけで会見が出来ない、なんてことが実状だとしたら、彼らの言う事が説得力を失うのは当然だろう。
つまり、この西村氏の自宅待機による会見中止からも、「自分達は感染しないと思っている他人事感が如実に現れている」という印象を再確認させられる。というか最早確信するのに充分と言っても過言でない。
ただ、これも前述したように、自宅からの中継による会見はスマートフォンかタブレット端末が1台あればすぐにできる。万が一西村氏の自宅にインターネット回線がなかったとしても、通信機能を内蔵する、つまり一般的なスマートフォンがあれば自宅から中継で会見を行うなんてのは簡単にできるのだ。技術的な準備は寧ろ関係なさそうである。
例えば3/27にニュージーランドのアーダーン首相は、SNSのライブ配信機能を使って、新型コロナウイルス対応に対するリアルタイムの質問に自宅で答える、ということをやっている。
NZのアーダーン首相、自宅からネット中継で新型コロナの質問に答える。子どもを寝かしつけた後、国民に発信 | ハフポスト
なぜニュージーランドの首相には出来て、日本の新型コロナウイルス対応担当大臣には出来ないのか。準備云々という話もあるが、アーダーン首相が何か特別な機材を揃えた配信をしているようには全く見えない。つまり、隔離された自宅からの会見は、やろうと思えば昨日の今日でもできることである。
ここで第3の仮説に至ることになる。政府や大臣がテレワークによる公務・自宅から中継で会見しなくてはならなくなる恐れを考慮し、準備をしていたか否かは定かでない。ただ、会見を中止したということは、準備をしていなかった、ということでほぼ間違いないだろう。だが、準備をしていなかった理由は別にも考えられる。
安倍は会見で記者の質問を早々に打ち切ることで有名だ。自分の言葉でしゃべることが出来ず原稿を読み上げるばかりで、この新型コロナウイルス危機以降の会見でも、しばしばおかしなところで文書を切って読み上げる姿が見られる。国会でも官僚や補佐官のアシストがないとおかしなことを言いだすし、手元に用意されている資料は、馬鹿でも読み間違いのないような巨大な文字で書かれており、しかも漢字には丁寧に一言一句全てにルビがふられているのも中継にもしばしば映る。
西村氏は安倍話法の継承者である、というタイトルの投稿を以前に書いた。西村氏も安倍同様に、官僚の書いた想定問答集がないと会見できないのかもしれない。現在の一般的な社会人であれば、ファイルで書類を受け取り、プリントorタブレットで見ることで対応できそうなものだが、何事も秘書や官僚任せでデジタルに疎い人が現政権には多そうだ。そして、資料があっても補佐官が側にいないと何も出来ない、ので自宅隔離の状況では、健康上問題がなくても会見できない、ということや、だからそもそも自宅からの中継による会見の準備や、テレワークの準備すらしていない、なんてことも有り得る。
今の政権関係者は、どいつもこいつも1人じゃ何にも出来ない大臣なのかもしれない。かもしれない、ではなく多分そうなんだろう。この投稿に書いたことは、そのどれかが正解ということでなく、複数の正解が含まれている恐れ、というかどれも正解という恐れすらある。勿論、激アマに考えれば、どれも該当しない可能性もないわけではないが。
兎にも角にも、健康上問題ない自宅隔離だけで会見を中止するような者が対応担当大臣では、まともな対応など期待できない。期待しても時間を無駄にするだけだと断言する。勿論、イタリアやニューヨークのような最悪の状況に至らずに収束を迎える可能性もあるが、それは決して現政権の対応が正しかったことの証明ではない。もしそうなったとしても、それはたまたま運が良かったに過ぎない。
トップ画像は、Photo by CoWomen on Unsplash を使用した。