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下手の考え休むに似たり総理大臣


 下手の考え休むに似たりという寛容表現がある。読んで字のごとくで、下手の考え休むに似たり(ヘタノカンガエヤスムニニタリ)とは - コトバンクでは、良い知恵もなしに考えても、いたずらに時間を費やすばかりで、何の効果もない、と解説している。能力も準備もなしに思案しても結局結果には繋がらない。それは休んでいるのと同然だ、ということである。

 世間は一応ゴールデンウイークという期間を迎えている。カレンダー通りに休めない仕事をしている自分は、 例年であれば「ゴールデン仕事ウィーク」などと愚痴をこぼすのだが、今年は昨年10月の消費税増税と、1月からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4月の頭からゴールデンウイーク、というかマンスに突入してしまっている。そのままゴールデンクォーター(四半期/3ヶ月)、ゴールデンハーフイヤーになりそうな雰囲気すらある。収入に不安のない長期休暇なら喜ばしいが、事態が収束する目途もまだ全く立たず、そしてもし半年程度で収束が訪れたとしても、経済がそれ以前の状況に戻るにはさらに時間がかかることは必至であり、仕事がすぐに見込めるわけでもない。しかしそれでも日々の生活のランニングコストは変わらず必要で、今は不安しかない。


 しかもその不安を更に大きくする輩がいる。それは日本の首相だ。今日の昼のニュースでは、

緊急事態宣言 全国対象に1か月程度延長で調整 | NHKニュース / インターネットアーカイブ


と、5/6が期限になっている緊急事態宣言について、政府は1か月程度延長する方向で調整を進めている、報じられている。しかし、4/24の時点では次のように報じられていた。

「緊急事態」延長是非 5月5日前後に判断 解除は地域ごとに - 毎日新聞


一応「5/5前後」とし、5/5に限定してはいないものの、5/6に期限を迎える緊急事態宣言を延長するか否かの判断を、前日の5/5に示すとしていたのだ。
 すでに生活や経営が切羽詰まっている人は多い(コロナ倒産急増、2カ月で50倍に 苦しい宿泊・飲食業 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)。緊急事態宣言が解除されれば、すぐにでも営業を再開したいという経営者も決して少なくないはずだ。だが、5/6以降の緊急事態宣言が解除されるか延長されるかを前日の5/5に示されても、すぐに対応できる者は少ない。ゴールデンウイーク明けからの対応を準備するには、少なくともゴールデンウイークに入る前にはどうなるかの見通しが示される必要があり、ゴールデンウイークに入るギリギリではなく、市民が準備を進める期間の余裕をもって、4/23には見通しを示す必要があったはずだ。諸外国ではロックダウンの延長が前日に示されたなんていう話は聞かない。例えばイギリスでは約10日前にロックダウン延長の方針を示していた(英政府、ロックダウンを延長へ 「感染ピークは越えていない」 - BBCニュース)。
 本当は一体いつ頃この状況が収束するかの見通しを示して欲しいが、流石に現段階ではそのような見通しが示されても、確実性があまりにも低く役に立たないだろう。だが、短期的な見通しすら示されなければ、市中に不安が広まり、不安が混乱を呼ぶのも当然だ。
 緊急事態宣言を延長するか否かを期限前日に示すなんてのは、政府が市民生活のことを真剣に考えていない証拠でしかない。


 更に昨日の参院予算委員会の審議の中でこんなやり取りがあった。国民民主党の森議員が
感染状況が(緊急事態宣言の解除や延長を判断する)ひとつの要素だって、さっき言っていましたけど、いったいどれくらいなんですか? いったいどれくらいの国民が感染しているんですか? このコロナウイルスに。いま現在
と問われた安倍は、しばらく手元の書類を見つめ、加藤厚労大臣に答えようとさせた。だが森氏に「総理に(聞いている)」と言われ、官僚と相談した後にこう述べた。
いまの、その、現時点で、いまの感染者数というご質問はいただいてなくてですね。いま、あの、これにあるのは『緊急事態宣言を解除、延長する基準、判断時期を明確にされたい』、というのが、私への答弁、質問でございまして、いましておられることについては、質問の通告はされていないということは、まず申し上げておきたいと思います

新型コロナ感染者数が答えられない 安倍首相答弁に不安の声 | 女性自身


次のツイートには、当該部分の映像がある。


要約すると、「国内の感染者数を聞かれても、質問通告にないから答えられない」と安倍は言っている。森議員が「緊急事態宣言を解除する/延長する判断の根拠を明確に」という通告をして、自身が「感染者数がその判断材料の一つ」と述べたにもかかわらず。

 本来なら把握していて欲しいところだが、例えば、昨日の時点の正確な感染者数を安倍が昨日の審議の中で答えられなくても、「自分が把握しているのは前日の数字、若しくは数日前の数字だがこのくらい」と提示できたなら、安倍を強く責めたり批判したりする人は決して多くないだろう。しかし全く答えられないということは、安倍は国内の総感染者数を大まかにすら把握していない、ということだ。しかもそんな程度の認識で、「感染者数は緊急事態宣言を解除する/延長する判断材料の一つ」と言っている
 更に言えば、官僚だか閣僚だか知らないが、安倍のところに駆けつけて相談しても答えられない、厚労大臣や官房長官も誰も耳打ちしないということは、政府の早々たる面々が誰も感染者数を把握していないということだろう。
 つまり安倍は、そして安倍以外の政府関係者も「新型コロナウイルス感染拡大に対応している風」でしかないのだ。これで5/5までに宣言を延長するか否かを判断すると言っているのだから、まさしく「下手の考え休むに似たり」という言葉がぴったりだ。


 今朝は久しぶりに朝からテレビをつけた。選んだわけではないが付けたらテレビ朝日だったので、朝7時の情報番組を7:00少し前から見ていた。相変わらず「都内でパチンコ店が営業している」というスケープゴートづくりに加担するようなことを取り上げる一方で、前段の話は一切取り上げられなかった。昼過ぎにテレ朝ニュースのWebサイトを見てもその件に関する記事はない。
 また、googleニュースでこの件が引っかかりそうなワードで検索しても、出てくるのは紹介した女性自身の記事だけである。「下手の考え休むに似たり総理大臣」に、翌日のテレビ局や全国紙が一切触れないなんて、この国の報道は最早死んでいる


 トップ画像は、OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像 を加工して使用した。

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