10年前まで日本の「無責任」の代名詞と言えば植木 等さんだった。自分はリアルタイムのハナ肇とクレージーキャッツは知らないけれど、レコードが小学校の友達の家にあったので、スーダラ節やハイそれまでヨ、だまって俺について来いなど、彼らの数々のヒット曲をそこで聞いた。小学生にも分かる面白い歌詞がウケて、リアルタイムでもその頃リバイバルがあったわけでもなかったが、一時期仲間内で流行った。
だが今、日本の「無責任」の代名詞と言えば安倍とその仲間たちである。これについては異論を聞こうとは思わない。この印象は五輪招致での「アンダーコントロール」を筆頭に、この数年の安倍やその周辺の態度からも明白だったが、
安倍は4/7の記者会見で、イタリア人記者に「新型ウイルス対策に失敗したらどう責任をとりますか?」と問われ、
これは例えば最悪の事態になった時、私が責任を取ればいいというものではありませんと述べた。
安倍首相「責任を取ればいいというものではない」発言に批判集まる | ハフポスト
かなり優しい目で見れば、安倍は「責任をとるとかどうとかでなく、失敗は絶対に出来ない」「失敗したらそのリカバリーをしなくてはならない」と言いたかったのかもしれない。だが、この記事に掲載されている当該質問に対する安倍の答弁全体を見ても、「責任をどう取るか」という質問の趣旨には一切答えず、ただただ自分の言いたい事を言っているだけだ。これでは前述のような捉え方は、あまりにも優しすぎる。というか大甘であって、詐欺師を信じて金を預けるようなものだ。
何よりこの男は、これまでに何度も問題のある議員を閣僚に任命し、中には大臣や政務官等の辞任に至った者も多いが、その度に「責任は全て私にある」と述べるだけで、なんら責任をとろうとしてこなかった。
責任を果たす方法は2つに1つで、1度犯した過ちを2度と繰り返さないようにするか、自身の能力のなさを認めて職を辞すかのどちらかだ。もう7年以上もその座に居続けているのだから、彼が選択したのは前者なのだろうが、ほぼ年に1人以上のペースで閣僚の不祥事が明るみになっており、しかも2019年9月に発足した現体制では、たった2ヶ月程で2人の大臣がその職を辞した。しかもその内の1人には公選法違反の疑いがかかっている。その疑いがかけられているのは元法務大臣だ。
河井前法相が12人、妻が1人に現金持参か|日テレNEWS24
NNNは、広島県内の首長、県議、市議、後援会の関係者など160人に対し、去年7月の参院選前に河井克行議員または案里議員から現金の持参があったかどうかを取材しました。その結果、13人が「現金を持ってきた」と回答。このうち、「受け取った」または「受け取ったが後に返金した」と回答したのは、県議4人、市議2人などあわせて10人にのぼりました。政治家に限らず誰もが法を守らなければならないが、法や条例等を検討して成立させるのが仕事である議員は、弁護士や検察官・裁判官などと並んで市民以上に遵法意識がなくてはならない立場だ。更に行政府の人間は、法に基づき政策を行う側であり、政治家の中で最も遵法意識が必要だし、「法務」大臣などは更にその筆頭である。だが今の内閣では、公選法違反者が法務大臣に任命されていた。
私たちの取材に応じた政治関係者は、事務所に克行議員が30万円を持ってきたと証言しました。
厳密には、まだ裁判で有罪になったわけではないので公選法違反者と断定してはいけないかもしれない。しかし既に「現金を河井氏から受け取った」と証言する者が複数いて、しかも河井氏は大臣を辞任している。潔白であるなら大臣職を辞する必要はなかったはずで、やましいところがあったから辞職したと判断するのは決して不自然ではない。
そして安倍自身も、河井氏らの辞職に伴って、いつものように「責任は私にある」という旨の発言をしている。
河井法務大臣が辞任 安倍総理は任命責任を陳謝
安倍総理大臣:「河井大臣を法務大臣に任命したのは私であります。こうした結果となり、その責任を痛感をしております。国民の皆様に深く心からおわびを申し上げたいと思います」また、安倍総理は菅原前経済産業大臣に続き、閣僚の辞任が相次いでいることについて「厳しい批判を真摯に受け止める」と強調しました。前述のように、安倍が責任を果たす方法は2つに1つで、1度犯した過ちを2度と繰り返さないようにするか、自身の能力のなさを認めて職を辞すかのどちらかだ。この件でも直近に菅原氏の件があるし、それ以外でも不適合な者を大臣に何度も任命している。昨年の暮れにはIR・カジノに関する汚職が発覚し、秋元 司議員が国交副大臣当時の容疑で逮捕・起訴された。
安倍が責任を果たすには、自身の能力のなさを認めて総理大臣の職を辞すしか道はない。それをしないということは、責任の放棄であり、全くの無責任としか言えない。
昨日は、滋賀県大津市で保育園児らの列に車が突っ込み、園児2人が死亡、14人が重軽傷を負った事故が起きてから丁度1年の節目だった。昼のニュースでは、事故で左大腿骨を骨折するなどの重傷を負った女の子の父親の、歩けるようにったが、今も心理的な影響が残っているという話を紹介していた。
大津市 園児ら16人死傷事故から1年|TBS NEWS
この父親は、すべてのドライバーに向けて、として、こう話したとも伝えていた。
安全に運転できる能力と責任がなければ、運転するのをやめてほしい。決して一生、いえることのない被害者、犠牲者の心の傷の痛みや悲しみを背負う覚悟があるのかここでもやはり取り沙汰されているのは「責任」で、市民の多くが日常的に行う運転という行為にも、間違いなく責任が生じる。事故を起こした際に責任を負えない者は運転してくれるな、とこの父親は言っている。「責任をとればいいというものではない」なんて言ってしまう無責任な男にも、早急に総理大臣職を辞して欲しい。
昨日の昼のニュースではこんなことも伝えていた。
「37.5度以上の熱が4日」の目安 きょうにも見直し
新型コロナウイルスの疑いがある場合の受診の目安について、厚生労働省はこれまで「37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」などとしてきた。それを改める方針を厚労大臣が示した、という話である。
ここに加藤厚労大臣の無責任っぷりが如実に表れている。
加藤厚労大臣:「(37.5度以上4日という)目安が受診の基準のように(捉えられた)。我々からみれば誤解でありますけど…」
これまで間違いなく厚労省や政府専門家会議は、感染が疑われる相談する目安として、「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」を挙げてきた。が、
新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)|厚生労働省
確かに、どこにも「37.5度以上の熱が4日以上続いていないなら病院へはくるな、自宅で様子を見ろ」とは書いてない。だが、政府は「軽症者はできる限り自宅療養」という方針も間違いなく示してきた。
東京新聞:新型肺炎 政府が基本方針 軽症者に自宅待機も:政治(TOKYO Web)
軽症であれば原則として自宅で療養してもらい、重症化の恐れがある人の治療に注力するため医療機関の態勢を整備する。厚労省も「ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合家庭内でご注意いただきたいこと」という啓発を行っている。確かにこれらにも、「37.5度以上の熱が4日以上続いていないなら病院へはくるな、自宅で様子を見ろ」という旨の表現はない。しかし、この2つを合わせれば、「37.5度以上の熱が4日以上続いていないなら病院へはくるな、自宅で様子を見ろ」という解釈が生じるのはそれ程不自然ではない。
また「政府対策本部の専門家会議や厚労省クラスター対策班等の関係者で組織された専門家の有志の会です」と称する、コロナ専門家有志の会 なるSNSアカウントが、
4/8にSNSやWebサイトで「うちで治そう」「四日間はうちで」というメッセージを画像で示してもいた。
東京新聞:<新型コロナ>「4日間はうちで」削除 専門家会議の有志HP 「受診抑制招いている」批判の声:社会(TOKYO Web)
もしこのアカウントやWebサイトが、全く厚労省とは無関係である、というのなら、SNS上で相応に話題になっていたのだし、厚労省は否定する必要があった筈だ。そういうことをしないでただただ「誤解が生じた」「我々はそんなこと言ってない」なんて、よくも言えたものだ。
新型ウイルスに感染して命を落とした女優の岡江 久美子さんは、 発熱後様子を見るように言われていたが3日目に急変し緊急入院、人工呼吸器が必要な状況で、その後PCR検査で陽性と判明した。それから2週間強で死去した。
女優の岡江久美子さん死去、63歳 新型コロナ肺炎で:時事ドットコム
加藤大臣は岡江さんの遺族や、同じ境遇の人達の目の前で「(37.5度以上4日という)目安が受診の基準のように(捉えられた)。我々からみれば誤解でありますけど…」と言えるのだろうか。もし言えるのだとしたらかなり冷酷だ。自分が加藤氏の立場だったら、「もっと分かりやすく情報発信すべきだった」としか言えない。
加藤氏の発言は責任逃れ、無責任以外の何ものでもない。
今の安倍や加藤には、大津の事故被害女児の父親の台詞を借りてこう言いたい。
安定して適切な政権運営ができる能力と責任がなければ、首相や大臣を直ちにやめてほしい。もう元には戻せない自粛要請による廃業と関係者、厚労省の見積もり不備で命を落とした犠牲者や遺族の、心の傷や痛みや悲しみを背負う覚悟はあるのかと。