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山積する問題に向き合わない首相・政府・記者クラブ


 一口に「向き合う」と言っても、その表現が使われる状況、前後の文脈でその意味合いは微妙に異なる。物理的に顔と顔の正面をお互いに向ける、ということを意味する場合もあれば、ある事柄から目を背けずに真摯に対応する、のような精神的な面での向き合いもある。そこへ更に「逃げずに毅然と立ち向かう」のような意味が込められることもある。

 トップ画像に加えたConfrontという英単語は、
  • ~と直面する、~を~と(with)直面させる。
  • ~と対決する、~を~と(with)対決させる。
  • ~に立ちふさがる。
  • ~を~と(with)照らし合わせる、照合する。
など、かなり能動的/積極的な向き合いを意味する言葉だ(confront - ウィクショナリー日本語版)。


 昨日、日本の首相・安倍が記者会見を行った。官邸の当該ページアーカイブ)には、一体何の記者会見なのかが書かれていないが、前日に、コロナ危機に伴って問題が山積している状況に鑑み、野党側が会期延長を要求していたにも関わらず、首相が総裁を務める与党自民党と公明党、そして維新がそれに向き合わずに国会を閉会したことに伴う記者会見だったのだろう。
 会見を行うことを伝える時事通信の記事にも、

安倍首相、18日に記者会見 新型コロナ、政権運営で見解

安倍晋三首相は18日夕、通常国会の閉幕を受け、首相官邸で記者会見する
とある。
 この会見で安倍は憲法改定に触れ、
自民党は憲法改正に向けて、緊急事態条項を含む4つの項目について、既に改正条文のたたき台をお示ししています。緊急事態への備えとして、我が党の案に様々な御意見があることも承知しています。各党、各会派の皆さんの御意見を伺いながら進化させていきたい。建設的な議論や協議を自民党は歓迎します。
と、首相としての会見であるにも関わらず自民党総裁としての見解を示し、更に、
国会の憲法審査会における条文案をめぐる議論は、残念ながら今国会においても全く進みませんでした。今、目の前にある課題を決して先送りすることなく解決していく。これは私たち政治家の責任です。
とも述べた。もう彼の中では憲法条文を変える前提で話が進んでいる。首相としての会見で改憲推進としか思えない発言をするのもおかしいし、まるで条文の改定が既に決定事項であるかのような発言もおかしい。

 安倍がこの会見の中で、自民党総裁という立場での見解を示したのは「我が党の案」「自民党は歓迎します」と述べたことからも明白だ。そしてその自民党総裁が

 目の前にある課題を決して先送りすることなく解決していく

と、ハッキリと述べている。

 「目の前の課題を先送りすることなく解決していく」と言っているのは、
  • 不透明な持続化給付金委託の経緯
  • GoTo政策の高額委託費
  • 予備費10兆円の使途詳細
  • コロナ危機に関する専門家会議議事録がない問題
  • これまでのコロナ対応の検証
  • 検察庁法改正の経緯と賭け麻雀処分の妥当性
  • 35万もの署名が集まったのに拒否される森友問題再調査
  • 工事再開の妥当性等、辺野古移設工事にまつわる諸問題
  • 桜を見る会の問題
  • イージス・アショア検討の杜撰さ
など、数々の問題が山積する中、野党側の会期延長要求をつっぱねて国会を閉じた党の総裁だ。一体どの口でそう言っているのか。真性のバカというのは恥の概念が欠如しているので、平気でこのような矛盾したことを言ってのける。そんな真性のバカが日本の首相で、日本の有権者は恥ずかしくないのか?自分は顔から火が出て世界の全てを焼き尽くすんじゃないかと思える程恥ずかしくて仕方がない。もし全く恥ずかしくないという者がいるなら、その有権者も恥の概念が著しく欠如した真性のバカということになるだろう。


 残念なのは首相だけでない。記者会見で質問した記者らも同様に残念である。こんなにハッキリとした矛盾が、安倍が直前に会見冒頭で示した無駄に長い見解の中に含まれているのに、そのことに誰一人として触れない。つまり、この質疑応答は茶番に過ぎないとしか言いようがない。
 因みに、記者らが質問したのはこのようなことだった。

フジテレビの鹿嶋

  • 元法相河井夫妻逮
  • 東京都五輪開催
  • 解散総選挙の可能性

産経新聞の小川

  • 憲法改正について
  • 党総裁任期を延長する可能性

NHKの髙橋

  • 拉致問題について

テレビ朝日の吉野

  • イージス・アショアについて

日本経済新聞の重田

  • 海外とのビジネス往来について

ラジオ日本の伊藤

  • 党総裁任期について

日本テレビの菅原

  • ポスト安倍について

読売新聞の今井

  • 安保戦略について

西日本新聞の湯之前

  • 財政不安について

ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー、東京特派員の髙橋

  • イージス・アショアについて
  • 拉致問題について
前述した山積する問題について質問している記者の少なさに閉口する。同日逮捕された元法相河井夫妻についての質問は、一応冒頭で1件だけあったが、他は軒並み政府や首相にとって都合が悪い話をほぼ聞いていない。しかも、ラジオ日本の伊藤などは、産経記者の質問と重複してしまっている。


 安倍が山積する問題と向き合っていないのは、最早明白で誰の目にも明らかだが、官邸記者クラブ、つまりメディアも問題に向き合っていない、としか言えない。警察官が黒人男性を圧死させたミネアポリス市警には、そのようなことが起きる土壌が凝り固まっており、市議会が解体再建を決断した。

米ミネアポリス市、警察を解体し再建へ 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News


 政治・政府・首相にまつわる諸問題と向き合えないような、日本の官邸記者クラブなども一度解体するべきではないだろうか。


 トップ画像は、Photo by Chris Curry on Unsplash を加工して使用した。

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