音楽は酒や麻薬と同じドラッグの1種だ、と以前から感じていたのだが、最近特にそう感じさせられることが多い。3月後半から仕事が激減し、4月以降仕事のない日の方が多く、収入面での不安と、余計なことを考える時間が多分に有り余っていることもあって、何かと気分が沈みがちだ。新型コロナウイルス感染拡大以外にも、差別や不正などバッドニュースが溢れていることも、そんな気分になる原因の一つだ。
だが幸いなことに?この状況の影響で、自分の好きなダンスミュージックのDJミックス配信が確実に増えた。クラブは国内外問わず休業を余儀なくされている状況で、当然大規模イベントも軒並み中止されている。だがその所為で配信を始めるDJやアーティストが増えた。
これまでもDJミックスのネット配信はそれなりに行われていたが、1990-2000年代に活躍した、自分達の世代のDJやアーティストはネット配信に消極的な者が少なくなかった、というか寧ろ多かった。だが、そんな自分のお気に入りのDJによるミックス配信が、今は聞ききれない程に増えている。
このブログの投稿を書く前の1時間程度は大抵それらのDJミックスを聞いて気分を盛り上げる。そうしないと、ただでさえ気が滅入りがちなのに、取り上げる内容が余りにもくだらないことばかりで余計に気が滅入ってしまうからだ。
音楽は酒や麻薬と同じドラッグの1種だ、と感じるのは、どんなに気が滅入っていても、自分のお気に入りのDJによるミックスを聞いていると、無理矢理気持ちが盛り上げられるからだ。自然と体を揺らしてリズムに乗っている自分がそこにいる。勿論「泣き」のイメージで仕上げられたミックスを聞けば、強引に逆にどん底まで下げられるので、どんな曲/ミックスを聞くかによって気分はかなり左右される。
このように書いたり、今日のトップ画像のようなイメージを使うと、偏見に左右されやすい人は「ああ、やはりクラブミュージック好きはドラッグが好きなんだな」と考えるかもしれない。だが、クラブミュージック好きの大半は酒と音楽で酩酊するのが好きな人達だし、それはクラブミュージックに限らず音楽全般に言えることではないだろうか。ジャズやクラシックを聴きながら酒を嗜むのが好きな人も世の中には大勢いる。メディアが作り上げたステレオタイプがこの世の全てだと捉えるのは、確実に間違っている。
ダンスミュージック以外を聞いて、音楽は酒や麻薬と同じドラッグの1種だ、と感じることも当然ある。
小平はブルーハーツ、— 大袈裟太郎 = 猪股東吾 (@oogesatarou) May 10, 2020
現クロマニオンズのマーシーの育った場所です。
彼の歌「青空」をナイジェリアのビコ&マナがカバーしたバージョンを贈ります。pic.twitter.com/WdWjqbuTvw#0510朝大前ヘイト街宣を許すな
これは、大袈 裟太郎こと猪股 東吾さんの5/10のツイートだが、昨日彼自身がツイートしていた為、再び自分のタイムラインにも表示された。この、どこの誰なのかもよく知らない2人のギタリストが歌う曲をたった数秒聞いただけで、自然と涙が流れてきた。音楽にはそんな力がある。
大袈 裟太郎こと猪股 東吾さんは、現在ジョージ フロイドさんが警察官らによって殺害された(米黒人男性の死は「殺人」と、正式な検視結果で 死因は「首の圧迫による心停止」 - BBCニュース)ミネソタ州ミネアポリスに取材に出向き、現地の状況を伝えてくれている。彼の昨日のツイートの中にはこんなツイートもあった。
ミネアポリス、#GeorgeFlyod さん殺害現場。— 大袈裟太郎 = 猪股東吾 (@oogesatarou) June 3, 2020
大音量で地元のスター、
Princeのパープルレインが流された。
驚くほどに多様な人々が、
社会を変えようと奮闘している。
昨年、香港でbeyondが流れた瞬間を思い出す。想えば今日(米国では明日)、
天安門事件から31年をむかえるのだ。#blacklivesmatter pic.twitter.com/7OjBdBgUBy
Purple rain は人種差別に抗議するような曲ではなく、恋愛に対する感傷的な気持ちを歌っていると自分には思えるが、その歌詞を聞いてあらためて考えると、分かれを惜しむ曲と捉えることも出来るし、ジョージ フロイドさんが殺されてしまったことを悼むのに相応しい部分が多く感じられる内容だ。これを見ていてもやはり涙が出た。
音楽には気持ちを大きく揺さぶる力があることは間違いない。しかも、時には単なる言葉以上に気持ちを揺さぶる。
— Kei l 小さなニューヨーカー (@smallnycer) June 3, 2020
ネブラスカ州リンカーンでは、警察官による黒人殺害に抗議する集会に警察官が参加して一緒にキューピッド・シャッフルを踊った。 https://t.co/pIqV8eJWJc— 町山智浩 (@TomoMachi) June 4, 2020
オークランドの昨夜のデモの様子。平和的なレイヴ・パーティになっています。暴動でも略奪でもテロでもありません。 https://t.co/EZXAia0adK— 町山智浩 (@TomoMachi) June 4, 2020
こんな風に音楽や踊りで抗議行動をしている人達もいる。米国内でこれがどのように評価されているのか分からないが、デモ自体を嫌悪する風潮が強く、そして若者に対して「何も分かってないくせに出しゃばるな」と言いがちな社会の日本では、間違いなく「単にお祭り騒ぎしたいだけ」のように揶揄する者が現れるだろう。だが、たとえお祭り騒ぎしたいだけの人がそこに混ざっていたとしても、そんな風に揶揄する人よりも、音楽の力で抗議したいと考える人の方が間違いなく信頼に値する。
何故なら、差別や偏見に対して抗議しない人は、消極的に差別や偏見を行う側に加担することになるからだ。
#BlackLivesMatter にも、渋谷警察署の件にも触れない日本の大企業、政治家、都知事、首相らには、これをどう思うかと聞いてくれるジャーナリストはいませんか?— Tulsa Birbhum (@74120_731241) June 1, 2020
公共広告機構 知らんぷりよりちょっと勇気 pic.twitter.com/iCDSwNjWtP
こんな公共広告もあって、見て見ぬふり、知らんぷりはよくない、と教えられて育ったはずなのに、日本人の多くは大人になるとなぜかそれよりも保身を優先してしまう。この日本に蔓延る長い物には巻かれろをどうにかしない限り、日本社会の悪い部分の改善はないし、改善しないどころか更に堕ちていくだろう。
それをどうにかする為には、音楽でも何でも使える手段はありとあらゆるものを動員して人の気持ちを揺さぶる必要がある。綺麗事は聞き飽きた。面子を重視して実を後回しにすることに一体何の意味があるだろうか。「音楽家は政治に口を出すな」なんてあまりにも馬鹿げている。勿論音楽以外でも同様だ。
最後にテニス選手の大坂なおみさんのこんなツイートを紹介しておく。
I hate when random people say athletes shouldn’t get involved with politics and just entertain. Firstly, this is a human rights issue. Secondly, what gives you more right to speak than me? By that logic if you work at IKEA you are only allowed to talk about the “GRÖNLID” 🤷🏽♀️?— NaomiOsaka大坂なおみ (@naomiosaka) June 4, 2020
「スポーツ選手は政治に関わるべきではない、ただ楽しませるだけでいい」と、自分勝手なことを言われるのは嫌だ。まず、これは人権の問題で、 そしてあなたには、私に対してそんなことを言う権利がある? その論理だと、イケアで働いていると、 "GRÖNLID "(イケアのソファの名称)についてしか話せないことになるでしょ 🤷🏽♀️ ?
トップ画像は、Photo by Krys Amon on Unsplash と Photo by JOSHUA COLEMAN on Unsplash を組み合わせて加工した。