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仕事をしていない、鈍い、なまやさしい検察


 ナマケモノという動物がいる。中南米に生息する哺乳類で、生活の殆どを樹木の上で行う猿にも似た動物だが、猿のように機敏には動かず、緩慢でかなりのろのろとしか動かない。英名は Sloth である。Sloth は怠惰・ものぐさ・不精者を意味する。つまり和名は、恐らくこの英名をそのまま日本語化したのだろう。

 ナマケモノで検索すると、ナマケモノは本当は怠け者ではない!という趣旨のページが多くヒットする。
そもそも、この動物を怠け者と呼んでいるのは人間の勝手だ。人間から見れば、あまり動かず動いてもゆっくりとしか動かない、というイメージなので怠けているように見えるが、それらのページによれば、このナマケモノの生態は、省エネを追求した結果、つまり少ない食料でどう効率よく生き残るか、という方向性で生存競争に挑んだ結果なのだそうだ。
 遭難してしまった人が、いつ来るかわからない救助に備え、手持ちの水と食料でなるべく長く生き延びる為に、極力じっとしている選択をするのと似ている。そんな対処をする人のことを怠け者と呼ぶだろうか。人間だとそう呼ばないのに、私たちはこの動物にそんなレッテルを貼っている。


 怠け者の定義とは何だろうか。 怠け者(ナマケモノ)とは - コトバンク には
怠ける人。怠けてばかりいる人。 
とある。怠ける(ナマケル)とは - コトバンク には、
なすべきことをしない。働かない。ずるける。「仕事を―・ける」
とある。また「なまやさしくなる。鈍くなる。」ともある。まさに、為すべきことをしない・働かない・なまやさしい・鈍い、の定義に完全に合致するのが、今の日本の検察である。そんなニュアンスを込めて、ナマケモノには申し訳ないが、今日のトップ画像を作った。

 直近だけでも、検察が働かず、政権与党になまやさしく鈍い、と言わざるを得ない事案が3件もある。

菅原前経産相の元秘書「明らかに違法なのに、なぜ不起訴?」 特捜部の処分に困惑:東京新聞 TOKYO Web

現金受領100人立件せず 検察内でも「整合性とれぬ」 [河井夫妻の公選法違反事件]:朝日新聞デジタル

黒川前検事長と記者らを不起訴処分に 賭けマージャン 東京地検 - 毎日新聞


  菅原氏は公選法違反を認めているのに不起訴になった。また河井氏の公選法違反事案でも、現金を受け取った者の多くが不起訴になるそうだ。これではババを引いた河井だけが罪に問われるということになる。そんないい加減な話があるだろうか。黒川氏は検察官という立場にも関わらず、常習的に麻雀賭博をしていたのに不起訴である。これでは検察は鈍い・仕事を放棄している、と非難されるのも当然だろう。


 しかも、検察の怠惰さを示す事案はこれだけにとどまらない。パっと思い当たるだけでも、2019年12月に発覚したIRカジノ汚職事件でも、罪に問われたのは秋元議員だけで、贈賄側・収賄側共に不起訴になった者が多く、秋元議員以外にも100万円を受け取った議員が5名いるが、いずれも不起訴になった。

IR汚職、5議員の立件見送り 金額など考慮か―東京地検:時事ドットコム


 森友学園問題に関連した公文書改竄事件でも、改竄に関与した財務官僚らはいずれも不起訴になっている。公文書を恣意的に書き替えたことは誰の目にも明らかなのに、誰も罪に問われることはなかった。

森友問題、佐川氏ら10人再び不起訴 特捜部捜査終結 [森友学園問題]:朝日新聞デジタル


 これらの内1件だけでも不可解だろうに、こんなにも検察が政治家が関与する事案について不起訴を連発するようでは、検察は仕事をしていない、鈍い、なまやさしい、と非難されるのも当然ではないだろうか。


  日本国憲法は、アメリカに倣った厳格な三権分立と、イギリスや大正デモクラシー期の議院内閣制を折衷した三権分立制を採用している、とされている(権力分立#日本国憲法下の権力分立 - Wikipedia)。しかし現在、立法機関である国会は、国会与党が構成する行政機関・内閣の追認組織に成り下がってしまっている。そして検察が仕事をしない為に、司法も行政機関の抑制・牽制を充分に果たしているとは言い難い。つまり、国家権力が行政権に偏っている状態が今の日本だ。国家権力が一か所に集まる・国家権力を一か所に集める体制のことを一般的には「独裁」と呼ぶ。

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