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目指してる、未来がちがう。


 目の付けどころが、シャープでしょ。は、2016年に台湾の鴻海傘下となった日本の電気機器メーカー・シャープが、1990年から2010年まで用いていたコーポレートスローガンだ。使用していた期間が20年と長い為、シャープのスローガンと言えばこれ、と記憶している人も多いのではないのだろうか。

 シャープも日本を代表する総合家電メーカーの1つではあるが、ソニーや松下電器(現パナソニック)に勝るブランドかと言えば、決してそこまでとは言えない、というのがシャープのポジションと言ったところだろう。例えば、マツダも日本を代表する総合自動車ブランドではあるが、トヨタ/日産/ホンダの三強程ではない、のと似ている。
 シャープのこの「目の付けどころが、シャープでしょ。」というコーポレートスローガンは、マスを狙う大手中の大手とは違う、少しニッチな目線での商品開発・商品ラインナップ、のような意味なのだろうが、それは昨今のマツダが、三強以上にデザイン性を前面に押し出したブランド構築を行っているのとも似ている。


 目の付けどころ、とはつまり着眼点・注目すべきポイントのようなニュアンスの表現である。以前にも書いたが、自分は子供の頃に白い車を見て「赤いクルマ!」と言っていたそうなのだが、それはテールランプに注目してそう言っていたらしい。この目の付けどころは、ポジティブに言えば面白い発想、ネガティブに捉えれば誤解を招く表現、と言えるのではないだろうか。

よみうりランドのバイト2人感染 従業員10人濃厚接触 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル


 こんな記事が昨日報道された。東京都稲城市にある遊園地・よみうりランドで働く従業員2名の新型コロナウイルス感染が確認された、という内容である。記事によると、
  • 2名はアトラクションの運行要員で勤務中はマスクを着用していた
  • 濃厚接触者はアルバイト10名
  • 来園者に濃厚接触者はなく、来園者の感染も確認されていない
  • 2名が勤務していたスペースを消毒した上で営業継続
というのがこの件のポイントだ。だが、よみうりランドや朝日新聞の目の付けどころは決してシャープではない。更に言えば、誰が濃厚接触者に当たるかは保健所の判断だそうだから、保健所、つまり行政の目の付けどころもおかしい。
 なぜ、よみうりランド/朝日新聞/保健所・行政機関の目の付けどころがおかしい、と言えるのか。マスクを付けて勤務していた状況で同僚が濃厚接触者になるのだとしたら、もし2名が電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤していたのだとしたら、2名が乗車した車両に乗り合わせた乗客だって濃厚接触者と認定すべき状況だった恐れがあるのに、よみうりランドが公表した資料にも、朝日新聞の記事でも、感染経路やどの様に通勤していたかに全く触れていないからだ。

 2名は7/12・7/14にそれぞれ発熱したそうだから、凡そその2週間程度前に感染した恐れが考えられる。そして彼らはよみうりランド内で生活していたわけではないだろうから、通勤以外・よみうりランド以外にも濃厚接触者がいても全くおかしくない。しかし記事は、そのようなことにも一切触れていない。しかも濃厚接触者の判断は保健所によるものなのだそうだから、同じ様に職場内だけ、若しくは職場+家族だけで濃厚接触者を判断するのが今の行政の基準なのだろう。果たしてそんなことで感染の拡大は防げるだろうか。
  例えば、東京の7/10の感染者数は224人で、その内100人以上が感染経路不明である。

東京都の感染者、過去最多の224人 経路不明は100人超:東京新聞 TOKYO Web


小池都知事や西村担当大臣、それ以外の自治体首長や政府も、ナイトビジネス界隈を「夜の街」と称してスケープゴートにしてきたが、それが如何に合理性の低いことかは、前述のよみうりランドの件、そして感染経路不明者の多さを考えれば一目瞭然だ。


 このような、通勤経路に全く触れないよみうりランドの発表、朝日新聞の記事、保健所の判断は、政府が強行しようとしているGoToキャンペーンにとって都合が悪いからだとしか思えない。
 4月に緊急事態宣言を出した頃には盛んに、ステイホーム、県をまたぐ移動の自粛を、なんて言っていたのに、昨日政府のお抱え学者が「旅行自体に問題はない」と言い出した

尾身会長「旅行自体に問題はない」との見解|日テレNEWS24


 また「3密(密閉・密集・密接)を避けて」とし、それが出来ていないとパチンコ店や夜の街をスケープゴートにし、劇場やクラブ等には、非現実的な基準の厳正な対策を求める一方で、副首相がこんな政治資金集めのパーティーを行っている

コロナ禍の中、麻生派が異例のパーティー 思惑は…



 シャープは、鴻海傘下になった2016年からは「Be Original.」というコーポレートスローガンを用いているが、「目の付けどころが、シャープでしょ。」の後、2016年までシャープが用いたコーポレートスローガンは「目指してる、未来がちがう。」だった。


 検査を積極的に行うなどして、新型コロナウイルス感染拡大を抑えることに成功している地域や国もあるが、どうやら現日本政府の目指す未来は、それとは全く別物のようである。日本では未だに検査すら満足に受けられない状況であり、感染者が増加する中で、政府が旅行を促進するキャンペーンに1兆円以上もの予算を使う。



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