新型コロナウイルス感染拡大による、外出を控えなくてはならない状況は、多くの人の生活環境に大きな変化をもたらしている。6月下旬に政府は外出・移動自粛要請を解除したが、その後東京を中心に新規感染者が再び増えている状況であり、未だに外出や移動は出来るだけ控えた方が賢明であることは明白だろう。
自分は外出しないことがそれ程苦ではなく、外出出来ない、出来る限りしないように自制することによるストレスは殆ど感じていないのだが、そのような生活環境の変化にストレスを感じる人も少なくないようで、またストレスからではなく、家に居る時間が長くなるという状況から、飲酒量が増える、ゲームをする時間が増えた、という人は自分の周りにも結構いる。
コロナ禍で酒の飲み過ぎ、依存症のリスクも 埼玉 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
新型コロナウイルスが原因の様々なストレスでお酒を飲み過ぎる人が増える可能性があるとして、埼玉県やさいたま市が注意を呼びかけている。という記事を、朝日新聞が6/4に掲載していた。またハフポストは昨日、
缶ビール→自作ハイボール→4Lの焼酎へ…。コロナ禍でアルコール依存症予備軍となった私は減酒を決めた | ハフポスト
という、ライター・姫野 桂さんの、この数か月間の酒にまつわる体験談を掲載している。
日本でも違法なドラッグの問題はあるものの、多くの人にとって最も身近な依存対象の代表格はやはり合法な酒と煙草だろう。煙草は近年嫌煙の風潮が異様な程に高まっており、日本で最も身近なハードドラッグはやはり酒だ。酒と煙草以外でも、ゲームやギャンブルなどが依存対象として問題視されることもあるが、コロナ危機下においてギャンブルを始めようという人は多くないだろうし、ゲーム依存もコロナ危機下において酒と同様に懸念が高まってはいるようだが、ゲーム以外、例えばテレビ・動画サイト等に割く時間が増える人だって似たりよったりなのに、なぜゲームだけが槍玉にあげられるのかが、個人的にはよく理解できない。
ハフポストは昨日、こんな記事も掲載している。
「いまの悔しさに耳を傾けて」新型コロナでスポーツ大会中止、学生の依存症予防とメンタルケアを | ハフポスト
新型コロナの影響で、甲子園やインターハイといった学生スポーツ大会が軒並み中止となり、目標を失い、喪失感を抱えた学生アスリートがメンタルヘルスを崩したり依存症になってしまう懸念がある、という内容だ。
記事は、回復途中のアルコール、薬物、ギャンブル、ゲーム依存症者で、スポーツに打ち込んだ経験のある295人に対して、スポーツを辞めたことが、自身の依存症に影響があったかを尋ねたところ、
- スポーツを辞めたことがきっかけで依存症を発症した:30人(10%)
- もともと依存傾向や依存症であったが量や頻度が増えた:64人(22%)
- 特に影響はなかった:201人(68%)
元アスリートの依存症患者さんは意外に多い。 人と競ったり、比較する心性は依存症と非常に親和性が高い。 スポーツによる達成感は脳内で大量のドーパミンを放出し、非常に大きな快感をもたらすことから、優秀なアスリートほど、『脳内麻薬』依存症になっているといえるかもしれないという、国立精神・神経医療研究センター・松本 俊彦さんのコメントを紹介している。つまりざっくり見積もって、スポーツ選手の中にはスポーツ依存症状態の人が一定程度、10-30%程度は存在している、ということだろう。
確かにスポーツ依存とアルコール/ドラッグ依存を比較すれば、スポーツ依存の方が身体的健康への害が少ないことは明白だし、ギャンブル依存と比較して精神的な害が低いことも分かる。だが、果たしてそれらの依存と同様のように深刻視されるゲーム依存とスポーツ依存を比較した場合はどうだろうか。
スポーツへの依存もゲームへの依存も、どちらも達成感が目的である。勿論どちらも他のことを疎かにする程病的にのめり込むのは好ましくない。しかし、スポーツの上達と好成績を目指して時間や労力を割くことと、ゲームの上達と好成績を目指して時間や労力を割くことに、一体どれ程の違いがあるだろうか。また、日本では将棋のプロが存在し、プロ棋士を目指す人達の多くは、依存症とも思える程将棋に生活の大部分を割く。なぜそれは将棋依存と言われて問題視されることはないのに、ビデオゲームになると依存症だと問題視するのか。自分にはその差が全く分からない。
2020年3月、香川県議会が全国初のネット・ゲーム依存症対策条例なるものを成立させたが、そのような条例が必要であるならば、例えば将棋、そして多くの運動系部活等も対象にした依存症対策条例が必要ではないのだろうか。
同条例については、意見公募での賛成意見の水増し疑惑が浮上して注目を集めた。県内在住の高校生が憲法違反だとして訴訟の準備を進めており、県弁護士会も廃止を求める会長声明を発表するなど、施行後もその是非が問われている。
トップ画像は、Photo by Damir Spanic on Unsplash、
Photo by Sigmund on Unsplash、Photo by Tobias Tullius on Unsplash、Photo by freestocks on Unsplash を組み合わせて加工し使用した。