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怠惰か無能か、若しくは怠惰で無能か


 サボるという日本語は、破壊活動という意味のフランス語 Sabotage/サボタージュに「する」を付けて日本語化し、更にそれを短縮化した略語である、ということを自分が知ったきかっけは、Beastie Boys の曲「Sabotage」だった。ビースティボーイズのサボタージュは、1994年にリリースされた彼ら4枚目のアルバム・Ill Communication の収録曲の1つである(サボタージュ (曲) - Wikipedia)。


 このサボタージュという曲は、彼らの楽曲の中で最も有名な曲の1つで、ミュージックビデオの監督をスパイク ジョーンズが務めたことでも知られている。彼らが当時気に食わないと思っていたレコーディングエンジニアのことを書いた曲らしく、ビースティボーイズのメンバーの1人、アドロックことアダム ホロヴィッツは、エンジニアのマリオ カルダートJr. について、
いかにマリオが俺たちを押さえつけいていたか、いかに彼がすべてをメチャメチャにしようとしていたか、そして彼が俺たちの素晴らしい芸術作品をいかに妨げ(“Sabotage”)ようとしているかを曲にしたら、面白いんじゃないかって思ったんだ
と言っている(ビースティ・ボーイズ、“Sabotage”が腹立たしいエンジニアに向けられた楽曲であることを明かす | NME Japan)。


 このように本来は破壊活動や妨げることを意味するサボタージュが、なぜ日本語のサボる、つまり単に怠けるという意味になったのか。それは、サボタージュには「妨げる」から派生した、職場には出向くが意図的に怠けることで雇用者・経営者の利益を下げるという、労働組合の賃金や労働条件に関する抗議方法を指す場合がある。ストライキと似ているが、ストは職場に行くこと自体を拒否したり、労働を拒否することによる抗議だが、サボタージュはそれに比べて少し緩い抗議手段だ。つまりサボタージュもストライキもボイコット運動という意味では同種である。
 このサボタージュの「妨害を目的とし意図的に怠ける」の、怠けるだけが抽出された結果が今の日本語のサボるだ。授業をサボる/仕事をサボる/手伝いをサボる、では本来の意味で「サボる」が使われる場合もあるが、練習をサボる/トレーニングをサボる などは、怠けることの不利益を受けるのは概ね自分であり、本来のサボるのニュアンスとは異なる用法だと言える。だが、状況やその意図とは関係なく、サボる=怠けること全般に使っても問題ない、という認識が現在の日本では一般的だ。


 6/25、東京地検特捜部は、公職選挙法違反の事実を会見で自ら認めた菅原 元経産大臣を不起訴処分とした。

菅原前経産相を不起訴処分に 香典問題、起訴猶予か:朝日新聞デジタル


 「公選法違反常態化の菅原一秀を東京地検が不起訴処分、起訴猶予は妥当ではない | ハーバー・ビジネス・オンライン」によると、東京地検は不起訴の理由を、
  • 大半のケースでは自らが弔問しており、香典の代理持参はあくまで例外と位置づけられ悪質性が低いと判断。公職選挙法を無視または軽視する姿勢が顕著とまでは言い難い
  • 経産大臣を辞任し、会見で事実を認め謝罪したことを考慮
と説明しているようだ。このように大臣にもなった与党の政治家が、複数回公職選挙法を犯したにも関わらず、大臣を辞めて会見で謝罪すると不問になる一方で、セルフ式のコンビニコーヒーで、50円安いサイズ違いのカップに多くコーヒーを注いだ件について、被疑者が行為を認めて「ボタンを押し間違えた」と説明しても逮捕されている(「コンビニコーヒー」100円カップに150円ラテ注いで逮捕…ボタン押し間違えも窃盗罪? - 弁護士ドットコム)。
  2019年に起きた池袋での自動車暴走死傷事故‎(東池袋自動車暴走死傷事故 - Wikipedia)の、通商産業省の元技官でクボタの元副社長も務めた加害者が、他の同様のケースの加害者は軒並み逮捕されるのに、この件では逮捕されなかったことを理由に、上級国民だから逮捕されないのか、という主張が多くなされた(上級国民 - Wikipedia)。
 個人的にその件に関するその種の主張は、逮捕=懲罰という誤った認識に基づく穿った話だと思う。だが6/20の投稿でも触れたように、現内閣が「余人に代えがたい」として法解釈を歪曲してまで定年延長を決めた黒川 東京高検検事長が、恒常的に新聞記者らと1000点100円というレートで賭け麻雀をしていたことが発覚したが、訓告、つまり口頭注意だけで済まされたのに、一方で一般市民が同じレートで賭け麻雀をしていた件に関して書類送検された、ということに鑑みれば、この国の法の下の平等を、それを遵守しなくてはならない政府や検察が破壊している、人によって明らかに対応が異なる、と言わざるを得ない。

 文春オンラインが昨日こんな記事を掲載した。

菅原一秀前経産相に公選法違反の新疑惑 バス旅行で有権者800人を接待 | 文春オンライン


 この記事の内容が妥当だとすると、菅原氏を前述の理由で不起訴処分とした東京地検の捜査力は、文春記者にも劣るということになる。片や特権の認められた国家権力の一部である捜査機関、片や特権など何もない単なる民間メディアだ。どちらの捜査分析力が高くなくてはならないかは誰でも分かるだろう。現時点では関係者が当該記事の内容を否定する動きは見られない。ということは、

 東京地検は捜査をサボった

と言われても仕方がないのではないだろうか。サボタージュの本来の意味は
  • 意図的に怠けること
  • 破壊行為
  • 妨たげること
だ。東京地検は捜査を意図的に怠けた恐れがあるし、法の下の平等を破壊する行為をしたとも言えるだろう。捜査機関であるにも関わらず、汚職の実態が明らかにされることを妨げた、とも言えそうだ。つまり正確な意味で、東京地検はサボった、のだ。


 菅原氏と同時期に同じく公職選挙法違反の疑いが浮上して法務大臣を辞し、先日逮捕された河井氏に関しては、広島県内の多くの地方議員・首長が金を受け取ったことを認めており、汚職が全くなかったということには絶対ならないだろう。
 その件に関連して、複数の元自民党議員が、自民党では選挙の際に金品を配ることが当たり前になっていると告白している。
そんなことを勘案すれば、菅原氏、若しくは自民党は東京地検や検察庁にも金をばら撒き、菅原氏が不起訴処分になったのでは?とも疑いたくなる。金をばら撒くという露骨なことをしていなくても、検事長の定年を強引に延長したのだから、何らかの方法による癒着、圧力があったのではないか?と思わずにはいられない。


 法の下の平等が成立しない国は法治国家とは言えない。つまり先進国とは間違っても言えない。政府与党や捜査機関が法の下の平等を壊しているのに、選挙に行っても、声を上げても何も変わらないなどと言って見逃すのは、自分の首を絞めるどころか、誰かの権利や自由を奪う行為への加担にすらなり得る。

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