衣類のしわを伸ばすこて状の道具のことを、日本では単にアイロンと呼んでいるが、これは英語の clothes iron、flatiron、smoothing iron などの、アイロンの部分だけを抽出した呼称だ。英語で単に iron と言えば、鉄、若しくは鉄製の器具を意味し、衣類用のアイロンに限らない。
興味深いのは、日本でも iron はアイアンと読まれ、衣類用アイロンとは別のものと認識されている点だ。例えばゴルフに使うクラブもアルファベット表記は iron だが、アイロンとは呼ばずにアイアンと呼ぶ。
アイロン - Wikipedia によると、現在日本人がアイロンと呼んでいる器具は平安時代には既に日本に存在していたそうだ。日本の文化の多くが大陸、つまり現在の中国由来であるように、それも中国から伝わってきたもののようだ。電気アイロンが普及するまで、衣類のしわを伸ばす器具のことを日本では火熨斗(ひのし)と呼んでいたそうで、電気式アイロンの普及と共にアイロンという呼び名も広まったようである。
アイロンが日本でアイロン、英語で clothes iron と呼ばれているのは、その名の通り鉄製の器具だから/だったからだ。熱と重みで衣類のしわを伸ばすのに、比重が高く熱しやすいという鉄の特性が利用されている。
鉄は熱しやすいという特性と共に、冷めやすいという特性も持っている。そのような特性を前提にした、気性が荒々しく激しいが、同時にさっぱりしている性格のこと、特にそのような性質の女性のことを表す場合に、「鉄火」と言ったりもする(鉄火(テッカ)とは - コトバンク)。
この人の性格を表す鉄火という表現にはポジティブなニュアンスもあるが、一般的に性分に関して「熱しやすく冷めやすい」と言うと、ネガティブなニュアンスの場合の方が多い。他の国や地域と比べて、とは限らないが、しばしば
日本人は熱しやすく冷めやすい国民性
と言われる。共同通信が7/17-19に実施した世論調査によると、
これまでの政府のコロナ対応は、「評価する」35・7%に対し「評価しない」59・1%。安倍内閣の支持率は前回6月調査より2・1ポイント増の38・8%、不支持率は1・2ポイント減の48・5%で、いずれもほぼ横ばいだった。そうだ。
GoTo「全面延期」6割 全国世論調査 内閣支持率、2ポイント増38% 森友「再調査必要」82%|【西日本新聞ニュース】
世論調査の結果から考えると、どんな理由で
- ウイルス対策について政府対応を評価する:35.7%
- 現内閣を支持する:38.8%
前回調査から支持率が約2%増えたそうで、それは誤差の範囲と言えるのかもしれないが、もしそれが誤差ではなく、実際に支持がやや持ち直したのだと仮定する。この緊急時に国会の会期延長もせずに6/17に閉会し、その後は一度も閉会中審査に顔も出さず、再び感染が拡大しても、九州を中心に各地が災害に見舞われても先頭に立たないどころか、首相として会見もしないような男が、首相を務める内閣の支持が増えたのは一体どんな理由なのか。理由をあれこれ考えても、日本人は熱しやすく冷めやすいから、という理由しか思い当たらない。
国会会期中は少なからずメディアも政治の動向に注目するが、閉会中審査は週にたった1回だけで、明らかにメディアが政治に関する話に触れる機会が減っている。狂気の旅行促進策に関しては取り上げているものの、追求する側の主張の場、つまり国会が、たった週1回しかないので、取り上げられるのは政府側の方が必然的に多くなる。そして首相は最早雲隠れしていると言っても過言ではない状況で、つまり首相の不備も相対的に薄まり、それが支持率2%回復という結果に繋がったのではないか。
前述したように、無駄なマスク配布と狂気の旅行促進策だけも総辞職案件だ。だが与党からそんな声は全く聞こえてこないし、野党や有権者からも退陣論は殆ど聞こえない。コロナウイルスの所為で多くの人が忘れているかもしれないが、昨年後半に注目された桜を見る会問題だってまだ何も解決してはいないし、その後にはIRカジノ汚職の問題も発覚した。また、昨年10月に辞職した大臣2人の公選法違反事案だってある。
こんなにも問題塗れな内閣なのに、時間が経っただけで支持率が回復してしまうなら、日本人は熱しやすく冷めやすい、という話は間違いではないのだろう。勿論この場合の熱しやすく冷めやすいは100%ネガティブな意味だ。厳しく言えば記憶力が著しく悪い、簡単に騙される、のような特性と言わざるを得ない。
トップ画像は、Photo by Marcos Ramírez on Unsplash を加工して使用した。