国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である
と、日本国憲法の第41条に定められている。国会は主権者である国民の意思を反映する、国の最高機関であり、三権分立に基づき行政と司法を監視し、それらに行き過ぎがあれば牽制することが国会の役割だ。
現在の国会は果たしてその役割を果たせているだろうか。昨日・7/2に行われた国会の閉会中審査・厚生労働委員会でのやり取りを見て欲しい。
「客観的な数値基準は、時の政権の思惑や政治イベントにかかわらず国民の命を守るために必要」— Choose Life Project (@ChooselifePj) July 3, 2020
東京都で新型コロナの感染が拡大しています。一方、都は、休業を再要請する際などに使う"数値基準”を撤廃したばかりです。
都の感染爆発は、防げるのでしょうか。#国会ウオッチング pic.twitter.com/JyKrLAsCdR
これは、3時間半弱行われた議論の内のごく一部を抽出した、たった2分の映像だが、この映像が恣意的な抽出でないことは、審査全体を見れば分かる筈だ。
立民 田島議員や社民 福島議員が、感染者が再び増えている東京都の状況と都の対応についての政府の考えを問い、加藤厚労大臣や宮下内閣府副大臣が答弁しているのだが、対応に関する基準が変えられたり、急になくなったりしている現状について、政府関係者は曖昧な表現ではぐらかすばかりでまともに取り合わない。これはどう考えても論理的な議論とは言い難い。
政府側はその場しのぎで都合の悪い質問から逃げていると言わざるを得ない。自民党本体は7/5投開票の都知事選について自主投票としたが、実質的には現東京知事・小池氏の支持を表明している。
都知事選、自民は自主投票 二階氏は小池氏支援へ:時事ドットコム
このような国会でのやり取りはかなり前から状態化してしまっている。なぜそんなことになっているのか。政府と与党が一体となり、そのような論理的でない政府側の答弁を、与党から選ばれる議長が許しているからだ。だから首相が平然と「広く募ったが募集はしてない」なんて言ってしまうのだ(「幅広く募ったが、募集はしていない」 桜を見る会 安倍首相、苦しい答弁続く 衆院予算委 - 毎日新聞)。
国会での議論は建前上は政府対国会となのだが、日本は議員内閣制であり、国会与党議員から内閣総理大臣が選ばれる為、国会と政府が癒着した状態になり易い。それは決して日本だけの傾向ではないし、日本でも昨今急に生じた状況ではなく、戦後ずっとその状態が続いている。だがそれでも、現政権以前はある程度の議論の質が保たれていた。実質的に政府と与党が癒着状態であっても、あまりにも論理的に破綻した答弁を議長が認めず、与党議員であっても批判していたからだ。だが、前述の映像を見ても分かるように、今の国会からはそれもなくなっている。
ではなぜ国会がそのような状況に陥っているのか。それは有権者がそのような状況でも尚、「他よりもまし」というどうしようもない理由で政権与党に票を投じる、若しくは「誰がやっても同じ」というどうしようもない理由で投票を棄権するからだ。
つまり、政権と与党議員らには緊張感がない。論理的に破綻した議論を自らがしても、論理的に破綻した答弁を許しても、自分達はまた当選できる、という認識でいる。だから平気で論理的に破綻した議論をするし、他の議員や政府関係者がそれをしても積極的に批判しない。批判しないどころか肯定すらする。こんな状況の直接的な原因は、与党から選ばれた議長による論理的に破綻した議論を許す国会運営、そのような答弁に異論を呈さない与党議員らの怠慢だが、広義で言えば、そんな与党を積極的に、若しくは投票の棄権によって消極的に支持する有権者の怠慢でもある。
論理的に破綻した議論が国会で漫然と行われているのは、その国の政治的なレベルの低さの紛れもない証拠である。
この話を別の視点から考えると、政府や都の杜撰なコロナ危機対応は、有権者の見る目のなさ、政治への関心の低さが招いたものであり、自業自得と言ってもいいだろう。
今週末7/5は東京都知事選の投票日だ。前回2016年都知事選の投票率は59.7%だった。前々回2014年都知事選の投票率が46.1%だったことを考えるとまずまずの数字だったようにも思えるが、それでも40%もの有権者が投票を棄権している。今回はコロナ危機という状況もあって、またテレビを始めとした大手メディアがどういう訳か都知事選報道を積極的に行っていない状況もある。
東京都民でなくても、東京で働いている人はかなり多い。その人達は当然都内で働くこと、消費することで都に相応の税金と経済効果を及ぼしているが、都知事選の選挙権はない。勿論他県で働く都民もそれらの地域に相応の税金と経済効果を及ぼすが、その地域の首長選等の選挙権はない為、東京だけが特別とは言えないかもしれない。しかし、前者と後者、どちらの方が多いのかと言えば間違いなく前者だ。都民はそういうことも勘案して、有権者としての政治的責任を果たすべきだ。都民はそんな都知事選の投票権を持たない人に関するコロナ対応も左右する立場だ。
東京都のコロナ新指標、数値基準なし 小池知事会見:朝日新聞デジタル
オリンピック延期が決まるまで沈黙し、延期が決まった途端に突然しゃしゃり出る、東京アラートだなんだと騒いだ割に、都知事選が始まるとまた沈黙する。そんな者を再び都知事に選んだら、東京のコロナ危機対応はどうなるだろうか。よく考えて1票を投じるべきだ。
トップ画像は、mohamed HassanによるPixabayからの画像 を加工して使用した。