AKIRAの原作者兼アニメ版監督として有名な大友 克洋さんの短編集に「さよならにっぽん」がある。アクションで1970年代後半に掲載された作品を集めたものだが、その大部分は短編集名と同名の作品「さよならにっぽん(1-5)」で構成されている。ニューヨークで道場を開いた男が主人公の物語だ(大友克洋傑作集 - Wikipedia)。
他にも「さよならにっぽん」というタイトルの作品には、さだ まさしさんのアルバム、堤 幸彦監督の映画、柳原 和子さんの旅行記などがあるが、大友マンガが最も早く発表されたものだ。
昨日も「さよならにっぽん」と言いたくなるようなことをいくつか目にした。最近はそんなことばかりで心底ウンザリしている。
まず1つ目は、
クラスター発生、同意なく飲食店名公表へ 政府が通知 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
飲食店などで新型コロナウイルス感染症の感染者集団(クラスター)が発生し感染経路の追跡が困難な場合には、都道府県が関係者の同意なく店舗名などを公表できるとする通知文書を業界団体に向け出した。感染防止の指針が適切に講じられていなかったことが発生の要因と考えられる場合は、そのことも併せて公表するとしているという件である。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、感染源となったとされる店などに中傷・脅迫ビラが貼られたり、投石等で窓ガラスを割られたりする事件が生じていることを、政府は一体どのように考えているのだろうか。これまでもパチンコ店や夜の街への嫌悪を煽るようなことを率先してやってきたので、恐らく何とも思っていないのだろう。
ハッキリ言ってこんなのは、政府がリンチを煽っている、と言っても過言ではない。だが、何故か日本ではそのような政府の姿勢に対する著しい抗議や嫌悪が起きない。つまり、過去と比べてどうということではないが、少なくとも今の日本人には、現政権と同じ穴の狢が少なくない、ということだろう。
“夜の街”を上回り...東京で「家庭内感染」が最多に 軽症者ホテルの確保は
フジテレビのこの記事によると、東京都での直近1週間の感染状況を調べると、家庭内感染が会食や夜の街を上回り、最も多くなっているそうだ。
これを踏まえると、感染防止の為に、感染源となった飲食店等を当事者の同意なく公表することが必要なのであれば、家庭がそれを上回る感染源となっているのだから、複数の感染者が出た家を、当事者の同意なく政府が公表することも必要ということになるだろう。そんなことをしたらその結果何が起きるか。偏見を煽りリンチを誘発する恐れがあるだけでなく、一方的に名前を公表されること、それによってリンチに晒されることを恐れ、体調を崩しても病院に行きたがらない人が出てくるのではないか。そうして余計に感染が広がる恐れがある。それは家庭に限らず、飲食店等の経営者や利用者だって同様だ。つまり一方的な名前の公表なんてのは悪手でしかない。
次は、
韓国で少女像に謝る安倍首相の像 菅氏「許されない」:朝日新聞デジタル
菅義偉官房長官は28日午前の記者会見で、事実確認していないとしつつも「国際儀礼上、許されない。仮に報道が事実であるとすれば、日韓関係に決定的な影響を与えることになる」と強い口調で述べたという件だ。まず確認しておきたいのは、個人的にこの像の設置を称賛するつもりは全くない。寧ろ火に油を注ぐな、という気分である。しかし、菅の示した見解は全く理解に苦しむ。例えば、この像の作成や設置を韓国政府が支援した、若しくは主導した、というのであれば、菅の示した見解にも妥当性は出てくる。だが、この像を設置したのは韓国の私立植物園であり、公の場に設置が許可されたわけでもない。それが日韓関係に決定的な影響を与える?馬鹿も休み休み言って欲しい。と言っても、無理なのはもうかなり前から分かっているので期待は全くしていない。こんな政権はさっさと引きずり下ろすしかない。
一方で共産党の志位氏は、この件について「コメントしない」としたそうだ。
共産・志位氏「コメントしない」 韓国の慰安婦に土下座像で - 産経ニュース
一部から「韓国政府ではなく韓国の民間のしたことであり、志位氏の示した見解こそが妥当である」という話が聞こえる。だが、個人的にはそう思えない。
勿論、志位氏の姿勢が間違っているとは全く思っていない。概ね志位氏の姿勢が妥当である、とは思っているが、それだけで充分かと言えば、全然足りないという観点で、志位氏の示した見解は消極的過ぎる、と考えている。
現在日本の書店は、どこも大抵嫌韓本が並んでいる。場合によっては目立つ場所にコーナーが築かれている場合すらある。韓国の民間植物園が設置した像が「日韓関係に決定的な影響を与える」のであれば、日本の書店に嫌韓本が並んでいることなどは致命的であり、まずは自国の方を正さなければならない。志位氏には、「コメントしない」ではなく、この件を逆手にとってそのような姿勢示して欲しかった。
なぜ菅や安倍がそのようなことを言わないのか、はこれを見れば一目瞭然だ。
この月刊Hanadaという雑誌は、所謂似非保守御用達のそれであり、その2020年9月号では、安倍と菅のインタビュー記事が揃って掲載されている。出版している飛鳥新社も嫌韓本やヘイト本の類を量産しているような出版社なのだが、なぜ菅と安倍はそんなメディアの(メディアと言うのすらためらうが一応)取材に応じているのか。菅や安倍に取材を依頼しても応じて貰えない、というメディアもある。つまり彼らは、全ての取材にできる限り応じているのではなく、選り好みしてこんな偏見出版社のこんな嫌韓中雑誌の取材に応じているのである。これこそ「日韓関係に決定的な影響を与える」事象ではないのか。
更に滑稽なことに、
「夢を見たければ勝手に」ロシア、北方領土交渉にまた壁:朝日新聞デジタル
ボロジン下院議長は「南クリル(北方領土のロシア側呼称)問題は終わりだ。夢を見て期待しても無駄だ」と言い放つなど、交渉は完全な打ち切りムードだ。ロシアの下院議長がこんな発言しても、「日露関係に決定的な影響を与える」なんて台詞は全く聞こえてこない。しかもメディアでの扱いも、ロシアの下院議長の発言よりも、韓国の私立植物園が像を設置したことの方が大きい。色んな意味で今の日本は感覚がおかしい。
極めつきは、
“アベノマスク”8000万枚また配布へ 本当に必要?
政府高官:「すでに市中にマスクは出回っているが、マスクはかさばるものじゃないんだから備蓄しておいてもらえばいいじゃないか」という件だ。布マスクの再配布が如何に無駄なことかは7/28の投稿で書いたので、詳しくは割愛する。そのような批判に対して政府の人間が「かさばるものじゃないんだからあってもいいだろw」と言っている、という話だ。
例えば、マスクが全くタダで貰えるなら誰も何も言わないだろう。しかしマスクの調達・配布には間違いなく予算がかかる。その予算の原資は勿論税金だ。つまり私たちが払った税金を使って無駄なマスクを再び配布しようとしている、ということだ。この国では、
無駄なマスクを配布すると予算がかさばる
ということを理解できない馬鹿が政治をやっている。いつまでこんなことを続けさせるのか。現政権を支持する人、否定せずに容認・黙認する人には、少なくともこちらの分まで税金を払って欲しい。 日本という国の評判を下げる政府というだけで認める気には全くならないが、そんな政府に税金を献上するなんてまっぴらごめんなので、それでも支持するというのなら、支持する人達だけで支えたらどうか。最早国を割ってもいいとすら思う。 だから今日の冒頭の話に「さよならにっぽん」を選んだ。