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コロナ危機の政治利用


 東京の新型コロナウイルス感染者数が再び3桁となって6日が経過した。以前にも書いたが、潜伏期間がおよそ2週間あり、2週間前の結果が今現れているので、もし今から対策対応をしたとしても、その結果が表出するのは2週間後である。つまり、新規感染者数が3桁になったことに対してこれまで新たな対応はなされていないので、少なくとも今後2週間は今の状況が続くか、更に感染者数が増えることが予想される。


 都だけではなく、全国的にも再び新規感染者数は増えている。だが、日本では相変わらず積極的な検査が行われておらず、この数字は氷山の一角と考えざるを得ない。再び新規感染者数が増えているにも関わらず、国も都もそれへの積極的な対応が全く見られない。

新型コロナウイルス感染症まとめ - Yahoo! JAPAN




 7/4に小池 東京都知事は、都での新規感染者数が3日連続で100人を超えたことを受けた会見で、
最近、近隣の県においても陽性者が増えている。いろいろ人的な交流はあるが、都民の皆様には不要不急の他県への移動は控えていただきたい。外出を遠慮していただくことによって、目下の感染拡大を防ぐということにご協力をお願いしたい
と述べた(小池都知事「不要不急の他県への移動控えて」都民に協力求める | NHKニュース)。
 知事は、都と近県でどれだけ日常的な往来があるのかを把握しているのだろうか。既に多くの人が、収入など様々な理由で休業要請に応じられる状況ではなく、一部でテレワークが進んではいるものの、全体で考えればテレワーク出来る業種・職種の方が少なく、可能な業種・職種は3割程度でしかない(テレワーク率34.6%、継続希望は8割超、生産性効果は限定-内閣府 - Bloomberg)、現在既に首都圏の在来線の通勤時間帯は、コロナ危機以前程の混雑はしていないが、他の乗客と所謂ソーシャルディスタンス・2mを確保できるような状況にない。そんな状況で他県へ移動するな、他県から移動してくるな、なんてのは全く現実的でない。実現したいなら更なる補償を今すぐに行って休業を強く促すべきだ。
 そんな対応もせずに小池知事は、
喫緊の課題はコロナ対策。命と経済を守るためにしっかりと2期目を努めたい
現状維持は後退に他ならない
などと述べている。国が緊急事態宣言を解除した後に、東京アラートなる独自の緊急事態宣言を設けたにも関わらず、都知事選が始まるタイミングで再び都の感染者数が増加し始めると、都合が悪くなったのか基準見直しと称して、基準自体を無くした知事らしい仕草だ。そんな知事を都民が再び選んだのだから、ある意味仕方がのだが、その巻き添えを食うのは全く納得できる話ではない。


 国は更に酷い状況で、東京で連日3桁の新規感染者が報告され、全国的にも再び増加傾向であるのに、官房長官は「現時点では急増傾向にあるわけではない」、担当大臣は「都知事発言、感染広がっている印象与える」などと言ってる。しかも、担当大臣は7/6に小池知事に
市中感染が広がっているわけではなく、ある程度感染源がわかっている。国の方針としては、これまで通り都道府県間の移動は自由にできる。ただし、熱がある等の症状がある場合はそもそもの外出を控えていただきたい
と話したのだそうだ。 首相などはコロナのコの字にさえ触れず、全く顔が見えない。相変わらず災害には全く対応しない男がこの国では首相を続けている。というか、有権者やメディアが続けさせている。
首相が全国一斉休校を突然決めたのは2月末のことだ。前述の新規感染者数のグラフを見ても、当時は現在よりも明らかに感染者数が少なかった。当時の状況で一斉休校が必要だったなら、今は再び一斉休校が必要なはずだ。現に学校での集団感染も起きている。
 首相が緊急事態宣言を東京など7都府県に出したのは4/7である。現在の新規感染者はその頃と同程度である。なぜ首相は一切関知せず、政府は緊急事態宣言の再検討をしないのか。再び緊急事態宣言が出れば経済が…という声もある。ならば、経済が…という心配が生じない為の対策を、小康状態だった間にしなくてはならなかったのではないか。
 6/27に突如旧専門家会議の廃止を担当大臣が言いだしたのも不可解だった。しかも、新型コロナウイルス感染症対策分科会なる新専門家会議は、
新規感染者のうち30代以下が多く、東京では7割。その結果、重症者も少ない。緊急事態宣言が出た4月上旬とは状況が異なるというのが共通認識だ
などと言っている。確かに4月とは微妙に状況は異なる。だが、全国一斉休校が決められた2月との比較はしていない。結局のところ、政府も専門家会議も都合のよいことだけを強調して都合の悪いことは無視する。だから信憑性は感じられない。

 朝日新聞は7/3にこんな記事を掲載している。

「軽症は気にしなくていい」都と官邸、経済との両立優先 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル


 現在の状況、そして都と国の対応に鑑みれば、この記事の内容・ニュアンスには信憑性が感じられる。大統領が同じ様に「コロナはただの風邪」と言っているブラジルは今どうなっているか。大統領が対策に消極的なアメリカはどうなっているか。その2つは現在世界で最も感染が広がっている国の2トップである。


 兎にも角にも、政府も都知事もコロナ対応の方向性が定まらず、ころころと基準や方針を変える。勿論新たな知見に基づく合理的な変更なら異論はないが、彼らは自己都合でころころと恣意的に説明等を変えているようにしか見えない。 都民はそんな知事を再選させた。そして週末の政権支持率調査では最低の数字が出たようだが、それでもまだ4割弱の人が支持すると答えている。

JNN世論調査、安倍内閣支持率“最低”に|TBS NEWS


 毎度毎度このような状況には憤りを感じるし、日本の有権者の判断に落胆もする。しかもこの1週間は各地で豪雨災害が発生もしている。有権者の中には「政治など誰がやっても同じ」と、達観した感を出して言う者がいるが、もしそれが本当で、日本にまともな政治家がいないのだとしたら、いっそのこともう台湾政府に統治を委託した方がよいのではないか。


 トップ画像は、Photo by Adam Nieścioruk on Unsplash を加工して使用した。

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