つい最近まで、SNSなどのWebサービスは「表現の自由」「検閲はしない」などの路線を重視するあまりに、そこで行われる誹謗中傷・差別の類に、結果的にかもしれないが寛容だった。あまりにもひどいケースに対しては、これまでも一応対応がなされてはいたが、決して積極的な対応を行っていたとは言い難い状況だった。
今年・2020年5月に、ミネソタ州ミネアポリス市警の警察官が黒人男性に対して不当な暴力で死なせる事件が発生したことを機に、米国内で Black Lives Matter ムーブメント が起きた(ブラック・ライヴズ・マター - Wikipedia)。これまでにも同様の事案が頻繁していたが、コロナ危機によるロックダウンなどで人々のストレスが高まっていたこともあってか、各地で抗議活動が活発化した。
これによって差別や偏見や、根拠に乏しいデマなどに対する懸念と危機感がこれまで以上に高まったからか、YoutubeやTwitterなどが、これまであまり積極的でなかったそれらへの対応を強化する一方で、Facebookはこれまでの路線を変えない方針を示した。そんなFacebookに対して、米国では大企業が広告を取り下げるボイコットを行っている。
Facebook最大の広告主でもあるディズニーも広告出稿を取りやめ - GIGAZINE
Gigazineによれば、Twitterはトランプ米大統領を救世主と仰ぎ、極右的な陰謀論を主にWeb上で広めている QAnon関連のTwitterアカウントおよそ7000件を、Twitterのポリシーに違反したとして永久停止処分にしたそうだ。
Twitterが陰謀論を広める「QAnon」関連アカウント7000件を永久停止 - GIGAZINE
SNSアカウントを永久停止処分にしたところで、そのアカウントを利用していた者は新たなアカウントを取得して同様の行為を続けるだろうから、アカウント停止が抜本的な解決策になるとは言えないが、それでも明確にNOを突き付けることには、少なからず意味があるだろう。但し、現在のSNSやWebサービスの多くは、アカウントの停止や投稿の削除に関する基準が曖昧であり、バランス感覚が失われれば、表現の自由を不当に制限することにもなりかねない。差別や中傷・デマなど不当な投稿に対する厳しい判断がなされるのは歓迎だが、その影響で割を食う者が出ないような仕組みも間違いなく必要だ。
米国では差別や偏見に対して積極的対応を取らないFacebookへの、企業によるボイコットが起きている。また米ツイッターは差別や偏見・デマなどに対して積極性を見せているのに、同じツイッターでも、ツイッタージャパンは相変わらず差別や偏見・デマなどに無頓着だ。
文藝春秋2020年8月号の「ツイッター 社長直撃 「つぶやきの暴力」を考える」という記事の中で、ツイッタージャパンの笹本社長は、
個人的に、百田さんのツイートの内容は時に乱暴な表現があるように見受けられますが、ポリシーやルールには違反していませんと言っている。ツイッターのルールとポリシーの中に「暴言や脅迫、差別的言動に対するTwitterのポリシー」という項目があり、
暴言や脅迫、差別的言動: 人種、民族、出身地、社会的地位、性的指向、性別、性同一性、信仰している宗教、年齢、障碍、深刻な疾患を理由とした他者への暴力行為、直接的な攻撃行為、脅迫行為を助長する投稿を禁じます。また、このような属性を理由とした他者への攻撃を扇動することを主な目的として、アカウントを利用することも禁じます。とある。百田とは百田尚樹のことで
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) January 3, 2019
など、その他にも差別や偏見・デマなど問題のあるツイートは枚挙に暇がない。例示したツイートだけを見ても「韓国という国はクズ」は韓国政府に対する揶揄として、百歩ぐらい譲れば容認できるかもしれない。だが「もちろん国民も」ともあり、それはほぼ間違いなく民族性や出身地を理由にした直接的な攻撃行為、及び攻撃行為の扇動だろう。しかしツイッタージャパンの社長は、百田のツイートは前述のルールとポリシーに反しない、と言っているのだ。
こんな状況なのに、なんで日本の大企業はツイッターへの広告を取りやめるとか、少なくともスポンサーとして苦言を呈すということをしないのか。米企業は出来るのに日本企業はなぜしないのか。日本企業は社会問題に無関心と言わざるを得ない。
そんなことを目の当たりにしていると、日本の大企業はツイッタージャパンと同じ穴の狢のようにも思えるし、ツイッタージャパンを放置している米ツイッターも、結局は誠実なわけではなく、単に世の中の風潮に合わせて責任追求されない為にポーズをとっているだけではないのか?と勘ぐってしまう。
トップ画像は、Photo by dole777 on Unsplash を加工して使用した。