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都合のいい部分だけつまみ食い



 #安倍やめろ というハッシュタグが、昨日ツイッター上で盛り上がりを見せていた。この「安倍やめろ」という表現は、少なくとも自分には、必ずしも有効なスローガンとは思えない。とてもストレートで分かりやすい反面、攻撃性も持ち合わせていて、政治に無関心な人達の目には、反安倍=攻撃的、という風にも見えかねないからだ。

 これまでの振舞いや現状に鑑みてもまだ現政権の退陣を望まない人達のことを、率直に言って軽蔑する。言い換えれば、現政権の退陣を望まない人達は、これまでの現政権の振舞いに関心がなく現状を直視できない、若しくはしない人達だとしか言いようがない。そんな人達の主張にも耳を傾けたいとは思えない。自分はそんなに出来た人間ではない。
 2019年4/10の投稿で「「安倍政治を終わらせる」というスローガンのダメさ加減」について書いた。その月に行われた統一地方選、そして7月の参院選を前提にした内容で、安倍政治という、個人攻撃にも見えてしまう恐れのあるスローガンは、新たな支持を獲得する為の最良の選択とは言えない、という見解を示した。同じ様な理由で「安倍やめろ」というスローガンにも全面的な賛同は出来ない。

 だが、昨年4月と現在では状況が異なっていることも考慮する必要がある。昨年4月の時点では、現政権の支持率は50%を超えていたが、最新の調査では30%台に下落している。

JNN世論調査、内閣支持率35.4%で最低を記録|TBS NEWS


 個人的には「それでもまだ35%も支持するという人がいるのか…」という、絶望にも近い気分なのだが、それでも、昨年の同時期に比べれば、明らかに現政権への信頼は下がっており、不信感を抱く人が増えているというのも事実だ。
 消極的だとしても「支持する」という判断をしている人達に向けて、「安倍政治を終わらせる」とか「安倍やめろ」というスローガンへの賛同を求めても、そこに具体的な説明が感じられないなら賛同を増やせる可能性は低い。だから相手側に支持率がある程度ある状況なら、如何に安倍自民党政権が行う政策の妥当性が低いのか、が直感的に分かるスローガンを掲げなくてはならない。
 しかし、既に安倍自民党政権に不信感を持っている人達に対しては、「安倍政治を終わらせる」とか「安倍やめろ」というスローガンにも一定の効果があるだろう。何故なら、現政権の政策の妥当性の低さ、支離滅裂さ、矛盾のようなものを既に感じているから不支持という判断に至っているからだ。勿論それでも、どう妥当性が低いのかも同時に指摘し続けなくてはならないだろうが。


 #安倍やめろ というハッシュタグを伴ったツイートが数万件にも上って盛り上がりを見せたのが気に入らなかったのか、黒瀬 深なる、所謂似非保守層に人気のアカウントが、


というカウンターのツイートをしていた。#安倍やめろ というスローガンだけに注目し、そのハッシュタグが用いられた批判や指摘の内容は無視した、「#安倍やめろ と文句だけ言って何も考えない人達」というレッテル貼りと、「コロナ対策に大忙しで、総理は5ヶ月間も休みなく働いてる」というエクストリーム擁護の王道コンビネーションだ。安倍が5ヶ月休みなく働いてる?首相動静見たことがないのだろうか。それとも安倍は呼吸しているだけで働いてるという定義なのだろうか。まさにカルト教祖を称えるスピーカー役の信者代表といった振舞いだ。

 その旨ツイートしたところ、別の信者から次のリプライが届いた。


メディアが報じる首相動静を信用していないのに、首相が5ヶ月休みなく働いたと一体何から判断したのか。是非その根拠を示して欲しい。その旨ツイートしてみたが反応はない。因みに、信者たちが休みなく働いているとする教祖の、感染再拡大真っ只中の8/2の1日はこんな感じだ。

首相動静(8月2日):時事ドットコム

  • 午前10時現在、東京・富ケ谷の私邸。朝の来客なし。
  • 午前中は来客なく、私邸で過ごす。
  • 午後1時47分、私邸発。
  • 午後1時58分、東京・渋谷の美容室「HAIR GUEST」着。散髪。
  • 午後3時35分、同所発。
  • 午後3時49分、私邸着。
  • 午後10時現在、私邸。来客なし。
単に髪の手入れをしただけ。信者にとっては散髪や、私邸で過ごすことも教祖の仕事なのだろう。


 トップ画像は、Photo by Jasmine Waheed on Unsplash を加工して使用した。元画像に足したコピー・nibble とは齧る(かじる)という意味の単語だが、つまみ食いをする、の意でも用いられる。批判や指摘の内容は無視した、「#安倍やめろ と文句だけ言って何も考えない人達」という情報のつまみ食いによる見解、「首相動静なんてただのストーカーの行動記録」と言いつつ、首相は休みなく働いているとする、矛盾に満ちた情報のつまみ食い。そんなニュアンスを込めた。

「お盆の移動自粛」はGoToと矛盾する?「帰省、制限の必要ある」と専門家 | ハフポスト


 感染再拡大下で旅行促進策を強行しつつ、お盆の帰省は自粛しろと担当大臣が言う。そんなことだけでも現政権の退陣を強く望むのは妥当だ。しかし、つまみ食いに勤しむ信者たちはそんな矛盾には目を向けない。もしくはそんな矛盾から目を背ける。
 教祖や教団幹部が矛盾を厭わないのだから、その信者が同種の傾向を示すのも無理はない。オウム真理教が政界に進出しようとした時、強い違和感と懸念を感じたものだが、日本では今、オウム真理教にも匹敵するような、科学や法を無視し矛盾を厭わない集団が政治を行っている。

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