スキップしてメイン コンテンツに移動
 

世界は欧米だけじゃないし、外国人は白人だけじゃない


 このブログでも何度か取り上げている所謂外国・外国人バラエティ番組。自分は基本的に外国人を扱うバラエティ番組が好きだ。日本に来る・来てはいないが興味を持っている外国人を紹介する番組などでは、日本に住んでいると当たり前過ぎて意識しないような事や、日本人が見落としている自国文化などを再確認・再認識できるからだ。
 カメルーン人の母と日本人の父の間に生まれ、現在タレント・漫画家などとして活動している星野ルネさんが、11/25にこのようなマンガをツイッターへ投稿している。

その国の人が自国の事に詳しいとは限らない、というのは世界共通のあるあるのようだ。また、日本にいる外国人を取り上げた番組だけでなく、外国に出向いてその国に住んでいる日本人を取り上げたり、日本に興味を持つ人を取り上げるタイプの番組も、日本ではあまり知られていない他国の文化等を紹介してくれるので興味をそそられる。


 昨日・11/29、TBSはウチの子 ニッポンで元気ですか?という番組を放送していた。日本に移住した外国人の生活を撮影し、それを母国に住む両親らの元へ届けて見て貰うという企画の特番だ。TBSは似たような外国人バラエティ特番・メイドインジャパンも定期的に放送している。メイドインジャパンは、日本に住む外国人が母国にはまだない気に入った日本製品をお土産に里帰りをするという企画の番組で、ウチの子ーはその変化球的な派生番組のように見えた。 メイドインジャパンは日本製品を過剰に褒め称えるテロップ・吹き替え等の演出が見られる為、ウチの子ーはそのような過剰演出を省いたブラッシュアップ版のようにも感じられた。

 しかし、ウチの子ーにも違和感を感じる部分がない訳ではない。この番組の冒頭には、
  • 世界の家族に日本で頑張る我が子の姿をお届け!
  • ニッポンで働く外国人約128万人。母国の親は心配なはず。家族がクラス世界の実家へ。ニッポンで頑張る!ウチの子VTRを上映。
という説明があった。4人の日本で働く外国人が登場し、その1人に関して2018年の3月頃撮影を行ったと推測できる場面があったので、つい最近企画・撮影された番組ではなさそうだが、番組紹介ページの解説文には、
 日本における外国人労働者は128万人を突破。さらに今後5年間で約35万人の受け入れが見込まれている。当然ながら、その外国人労働者たちには母国で暮らす家族がいる。
という文言もあるし、放送されたタイミングを考えれば、番組冒頭の説明(テロップ)も「現在国会で入管難民法改正案が審議されている」という認識に基づいていると強く感じる。ウチの子ーが11/29の放送で取り上げたのは、
  • 京料理人を目指すカナダ人男性
  • 農業に挑戦するハンガリー人女性
  • ニッポンで独立した庭師のドイツ人男性
  • 合気道を愛するロシア人女性
である。彼らには共通点がある。4人とも欧米出身者・白人という点だ。厚生労働省が公表した「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」(2017年10月時点のデータ)によれば、日本で働く外国人の出身国トップ3は、
  1. 中国 37万2263人(外国人労働者全体の29.1%)
  2. ベトナム 24万0259人(同18.8%)
  3. フィリピン 14万6798人(同11.5%)
だそう。ネパールの5.4%、韓国 4.4%を合わせるとアジア諸国が約70%を占める。次に多いのはブラジル・ペルーの日系移民が比較的多い南米諸国だ(合わせて約10%)。欧米出身の外国人労働者はかなりの少数派であるにもかかわらず、欧米系の白人労働者を4人取り上げて「世界」を標榜するのは適当なのだろうか。


 「世界」を冠する日本の番組で、本当に世界全体に目を向けているのはほんの一握りで、欧米・白人が主な取材対象になっている番組も多い。ウチのーが今回取り上げたのはたった4人なので、もしかしたら過去には非欧米系・非白人を取り上げているかもしれないと思い調べて見ると、2017年12月の初回放送で取り上げたのは「和太鼓に打ち込むノルウェー人女性」「表具店で働くフランス人男性」で(gooテレビ番組)、2回目の放送だった2018年5月の回では「盆栽を学ぶロシア人」「落語家として修業するカナダ人」「アニメ制作を目指すスリランカ人女性」だった(TBSの番組ページ)。全3回で計9人を取り上げた内、スリランカ人女性を除く8人が欧米出身の白人だった。これでは番組が、というか日本では多くの人が、世界=欧米、外国人=白人と思っていると言われてしまうのではないだろうか。
 TBSの名誉の為に注釈しておくと、TBSは毎週木曜深夜に「世界くらべてみたら」という番組をレギュラー放送しており、この番組では「世界」というタイトル通り、欧米だけでなくアジア・アフリカ・オセアニア・中南米と各国の出身者が出演しているし、世界各国を満遍なく取り上げている。

 しかし、前述したように「世界」を冠したり標榜していたりしても、欧米や白人文化しか取り上げない、もしくは欧米や白人文化に偏って紹介している番組は、TBSに限らず決して少なくない。2017年9/16の投稿でも触れたが、テレビ東京の人気外国人バラエティ番組「YOUは何しに日本へ」や「世界ニッポン行きたい人応援団」などにもその傾向は見られる。欧米や白人に注目することが悪いとは言わないが、あまりにも他の地域や出身者を取り上げないようであれば、前述のように世界=欧米、外国人=白人と思っていると言われても仕方がない。
 このような傾向は、多くの日本人が無意識に持っている、明治維新以来植え付けられてきた外国・外国人に対するイメージの表れで、一部の人達が持っているアジア地域や途上国・新興国、又はその出身者を見下す風潮が解消しない理由の一つのようにも思える。外国人労働者の受け入れを拡大するならば、そのような社会状況も変えていかなければならないと感じる。受け入れによってそれが解消していく可能性もあるが、対策をしないまま受け入れを進めれば、非欧米系外国人の不満が高まり、そのカウンターで欧米の一部で起きているような排斥機運につながり、状況が悪化してしまう恐れもあるのではないか。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。