9/7(月)〜9/13(日)の一週間、TOKYO DANCE MUSIC WEEK2020 が行われている。日本では未だに新型ウイルスの感染拡大を抑制することが出来ておらず、既にほぼ感染拡大を止められているニュージーランドや台湾のように、人を大勢集めたイベントを開ける状況ではない為、所謂音楽フェスの体裁ではなく、ネット配信とラジオ放送を使った催しだ。
TOKYO DANCE MUSIC WEEK
具体的には、日本を代表するVJ 宇川 直宏さんが主催する、日本のインターネット配信番組/世界レベルでのDJプレイネット配信の草分け的存在 Dommune と、在京FMラジオ局のJ-WAVE、日本のヒップホップカルチャー草創期の重要人物・いとう せいこうさんが中心となって、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて始めた配信イベントプロジェクト・#MDL(MUSIC DON’T LOCKDOWN)という、3つのプラットフォーム上で、9/7-13の一週間、様々なダンスミュージック界隈の関係者、アーティストらが参加したトーク番組や、DJプレイ/ライブ演奏 などが毎晩配信される。
昨日・9/9は丁度折り返しの3日目だった。この3日間Dommuneは、いつものスタイルで、19:00からトーク、22:00頃から24:00時頃までDJプレイを放送していた。トークのテーマは、初日が日本のみならず世界の現代ダンスミュージック史を語る上で絶対に外す事の出来ない、ローランドのリズムマシーンについて、2日目はテクニクスやパイオニア、そして今は亡きベスタクス製など、ダンスミュージックシーンに強い存在感を示してきた機材について、そして3日目の昨日は今後の日本のダンスミュージックシーンの将来と、同イベント開催主体でもある、日本のDJ/ダンスミュージックシーンの業界団体・JDDA:Japan Dance Music & DJ Association 立ち上げの経緯と、今後の活動方針などの報告などだった。
自分はこの3日間、ラジオを聞くように、デスクワークをしながら、Dommuneを聞いていた。テクノ愛好家にありがちな、オタク気質でありテクノロジー/機材好きな性分の自分にとって、1/2日目のトークは聞き逃す/見逃すわけにはいかないものだった。特に2日目はDJ機材全般の歴史を振り返る、といっても過言ではないようなとても濃い内容で、懐かしくもあり、そして一部忘れかけていたその時々のあだ花のような機器たちを、出演者らが熱く語る姿は、基本的にアーカイブを公開しないDommuneに、是非ともアーカイブ公開をお願いしたいくらいだった。
ただ昨日・3日目の放送の冒頭でふと思った。自分の世代にとってはとても魅力的な出演者ばかりだが、いかんせん20代以下の世代が少なすぎではないか?と。1/2日目のトークテーマに鑑みれば、当時を知る世代に演者が偏るのは仕方ないとは思うものの、リアルタイムを知らない世代にも、ダンスミュージックシーンの歴史や機材の変遷に興味を持ち、相応の見識を有している者もいるだろうし、また逆に当時を殆ど知らない世代を演者に加えることで、所謂ダンスミュージック界隈の生き証人/機材オタクのような人たちとはまた別の視点を提示することも、所謂ご新規さんに番組を見てもらう、ダンスミュージックシーンに興味を持ってもらう為には必要だったのではないだろうか。
3日目の出演者も、やはり業界の重要人物と言われるような、つまり相応の年齢の人ばかりだったので、これでは若い人達の目を惹けないのではないか、しかも男性ばかりだったので、おっさんが思い出語りをしているだけみたいな印象になっているのではないか、という危惧を覚えた。
その旨をツイートしたところ、宇川さんから
明日大半が若い世代!!!!!!!!だと思いますよんーー!!!!!!!
— UKAWA NAOHIRO™ (@DOMMUNE) September 9, 2020
みてね!!!!!!!
というリプライがあった。確かに翌日・4日目のテーマは、
"withコロナ時代”の東京のナイトタイムエコノミーとナイトシーンの女性の活動のこれまでとこれから
となっている。カッコ付ではあるが "withコロナ時代”の という表現には、個人的にいい印象を感じない。だが、シーンで活動している女性に焦点を当てる回が用意されていることは評価したい。そして宇川さんが言うように、これに若い世代が多く出演するのであれば、それも評価に値する。
しかし一方で、敢えて女性にフォーカスするのではなく、全般的にもっと女性の演者を増やしてもよかったのではないか、若い世代の出演者を増やしてもよかったのではないか?とも思う。
ダンスミュージックシーンは他の芸能文化に比べると確実に歴史が浅い。特に日本ではまだ30年、長く見積もっても40年程度の歴史しかない。伝統芸能と呼ばれるようなものに比べれたら赤子も同然、歌謡や演劇等に比べてもその歴史の長さは半分にも満たない。だから、この3日間Dommuneに出演していたような所謂業界の重鎮と言われるような人達も、彼らの同世代の人達に比べ考え方などは確実に若い人よりだ。しかしそれでもやはり、30代後半以上の男性ばかりが場を占めている状況は好ましいとは言い難い。
女性や若手にフォーカスすること、そのようなコーナーを設けること自体を否定するつもりは全くない。だが、なぜ敢えてフォーカスする必要があるのかと言えば、フォーカスしないとそれらのカテゴリーの人達が見えない/見え難いような状況があるから、でもあるだろう。
ダンスミュージックシーンは、日本社会全般に比べれば男尊女卑傾向は確実に薄いと思う。しかしそれでもやはり、まだまだダンスミュージックシーンですら「全く男尊女卑傾向はない」と言えるような状況でないことも確かだ、ということを再確認したし、若い世代を取り込む為に出来ることの余地はまだまだ多い、とも感じた。
そういうことを可視化し、そして実行する為にもやはり、全般的にもっと女性の演者を増やしてもよかったのではないか、若い世代の出演者を増やしてもよかったのではないか?と思う。シーンの発展の為にはまず注目を集めることが必要だが、若い人の注目を集めるには、彼らの同世代がそこにいるのはとても大きな要素ではないだろうか。それは女性に置き換えても同様で、特別扱いするのではなく、通常の状態で当たり前にそこにいる、というのがとても重要だと考える。
トップ画像は、Photo by Alex Knight on Unsplash を加工して使用した。