トップ画像のプラカードにあるコピー「Abuse of Power comes as No Surprise」は、訳する「権力の濫用は驚くべきことではなく、ごく当然なこと」のような意味だ。つまりこの場合の abuse は濫用や悪用の意である。この abuse という単語は他にもいくつかの意味を持っている(【英語】「Abuse 」の正しい意味と使い方|「乱用 / 虐待」意味する英語)。
神戸市垂水区の塗装業の男が、しつけのためと称して、少学6年生の娘の髪を刈り上げ、顔を蹴って全治約1カ月の眼底骨折を負わせた、という事件が報じられた。その娘は妻の連れ子で実の娘ではなかった。
11歳娘の髪にバリカン、顔蹴り骨折る 容疑の義父逮捕:朝日新聞デジタル
娘は「これまで何度もお父さんに殴られたり怒鳴られたりしたので、怖くて何も言えなかった」と言っているらしく、彼女が家出をしていて、警察が保護した際に、刈り上げられた髪と顔のあざがあったので事件が発覚したそうだ。母親の対応については記事に記述がなく、母親も暴力の恐怖に直面していた恐れもあるが、2018年の目黒児童虐待死事件もまだ記憶に新しく、もしそうだったとしても母親が警察などに相談して事件が発覚して欲しかったとも思う。
日本語の虐待に当たる英単語には maltreatment もあるが、maltreatment は主に精神的/心理的な虐待、ネグレクト・放置・無視などを意味する。この件のような暴力や身体的な虐待は、abuse が用いられる。つまり abuse には、濫用や悪用以外にも 虐待/虐待する という意味もある。しかし abuse は、罵る/罵倒する/こき下ろす/誹謗する などの意味でも用いられる単語なので、肉体的な虐待や暴力だけでなく精神的な虐待のニュアンスも含んでいる、と言えるかもしれない。
前述の記事のようなしつけと称した虐待は、何度そのような事件が報じられても、今も後を絶たない。しかし、そんな状況が一向に改善しないのは、今の自民党政権下では仕方ないことだとも思う。
しつけと称した虐待をする親は、しつけの為、つまり「子の為を思ってしたこと」と自分の暴力を正当化しようとする。とても恩着せがましく、そして醜悪な態度だとしか言えない。しかしこれによく似たことを今の自民党政権はやってきた。それは現自民党政権の沖縄県に対する態度だ。
現自民党政権は、市街地にある普天間飛行場の危険性を取り除くには「辺野古移設が唯一の解決策」だと言い続けている。つまり辺野古への基地移設は沖縄県と県民の為だと言って工事を止めない。そして更に安倍は何度も「沖縄県民の声に耳を傾ける」「沖縄県民に寄り添う」などとしてきた。しかし安倍の任期中、翁長沖縄県知事の死去に伴う2018年の県知事選、2019年の辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票、そして2019年の衆議院沖縄3区補選など、少なくとも3回は、沖縄県民は辺野古移設反対の民意を示した。
特に県民投票では直接的な民意が示されたのにも関わらず、「沖縄県民の声に耳を傾ける」「沖縄県民に寄り添う」と言っていた安倍は、実際には沖縄県民の声を無視し、工事中止はおろか一時中断すらせずに、「辺野古移設が唯一の解決策」だと言い続けた。
この沖縄県の民意を無視して「辺野古移設こそが沖縄県民の為だ」と言い続ける行為は、しつけと称して子に暴力を振るうなどして虐待する親のそれにとても良く似ている。恩着せがましく「沖縄の為」と称し、県民の意向を無視した基地建設を進めているだから。
しつけと称して肉体的又は心理的な暴力を振るう行為も、沖縄の為と称して民意を無視した基地建設を続ける行為も、どちらも間違いなく詭弁である。つまり、今の日本政府、自民党政権は虐待親のような存在だ。そんな政府が治める国から虐待がなくなるはずはない。abuse に濫用や悪用、そして虐待という意味がある理由が何となくわかった。それらには共通性がある。
しかし、最近の支持率調査では、安倍政権を基本的に引き継ぐと宣言している新政権の支持率は60%を超えている。場合によっては70%も超えた。つまり、この状況は有権者の責任でもある。何を言おうが、しようが支持を得られのなら、そのような政府の姿勢は変わることはないだろう。
トップ画像は、Photo by Samantha Sophia on Unsplash を使用した。