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よく考えずに喋る人

 この週末は、戦後最悪の被害をもたらした1959年の伊勢湾台風に匹敵する勢力に達すると言われていた台風10号が九州地方に接近した。当初は九州と四国に直撃するルートも予測されたが、実際には九州西岸を北上し、相応の被害は出たようだが最悪の事態には至らなかったようだ。


 先週末にも、大型で非常に強い台風9号が九州西岸を通過したばかりで、その影響による被害も出ていた。この規模の台風が連続して日本にやってきたり、毎年のように「○○年に一度の」という大雨、洪水、水害が起きると、果たして原発の安全基準は大丈夫なのか?もしこのような天候を想定してるとしても、本当に基準は充分なのか、基準が妥当だとして、基準に沿った対策が厳密になされているのか、運用がなされているのかが心配になる。これまでの経歴から考えると、もし何か事故が起きた際には、政府や電力会社は「当時の基準と対策は妥当だったが想定外の事態に見舞われた」などとして、責任を逃れようとする気がしてならない。

 所謂現場仕事は天候に大きく左右される。現場にもよるが悪天候だと作業が出来ないことも多いし、悪天候でも作業が可能な屋内の現場だったとしても、資材等の搬入が滞ることで仕事を中断せざるを得ない、なんてことも多々ある。だから関係者は天候を結構気にするし、天候の話題は社交辞令以上の意味がある。
 先週の水曜日か木曜日に、ある職人と台風10号のことについて話していた。その中でその職人が「台風、韓国の方に行けばいいのに」と言った。この職人がどんな意図を込めてそう言ったのかは定かでない。単純に日本から逸れたらいいという意味でしかなかったのかもしれない。しかし彼は間違いなく「台風、韓国の方に行けばいいのに」と言った。
 例えば「韓国は嫌い」は差別でも何でもない。単に個人の好き嫌いの問題だ。また「韓国死ね」も、決して行儀がいいとは言えないし自分は絶対口にしないが、これも絶対的にアウトとまでは言えない。しかし「韓国人を殺す」とか「韓国は泥棒」はアウトだ。前者は暴力性が明らかで場合によっては脅迫や業務妨害などの行為にもなりかねない。後者は間違いなく偏見である。
 「台風、韓国の方に行けばいいのに」は、たとえそこに悪意が込められていたとしても、決して口にしてはならない表現とは言い切れないだろう。だが自分はどうにもスルー出来なかった。そう言った職人に対して、「もし九州の人が、台風東京の方に行けばいいのに、って言ったらお前どう思う?イラっとするよな?このヒトデナシと思うだろ?」と聞いてみた。彼は何も言えなかった。

 韓国には先週の9号も、そしてその前週にも8号が直撃しており日本と同様かそれ以上の被害を出している。

台風9号、韓国・北朝鮮でも大きな被害|TBS NEWS

2週連続で台風の被害を受けている地域の方へ台風がいけばいいのに、なんて言うのは、間違いなく人間性に欠ける発言だ。韓国に対する差別や偏見がそこになかったとしても、それ以前のレベルで人間性を疑われる発言である。

 多分その職人はよく考えずに、単に自分がいる関東地方の被害が少なければいいな、ぐらいの気分で「台風、韓国の方に行けばいいのに」と言ったのだろう。しかし、もし立場が逆だったらどう感じるか、という基本的なことを考えれば、そんな表現は選ばないはずだ。

 ハフポストが前田 敦子さんがインスタグラムで、一部の報道関係者による取材手法に苦言を呈した、という記事を掲載している。

前田敦子さん「子どもとの写真はやめて」。日常生活での突撃取材に“危ない目に遭いかねない“と苦言 | ハフポスト

 前田さんの当該インスタグラム投稿にはこうある。

この投稿をInstagramで見る

真剣な内容を失礼します。 今朝子供を抱っこしながらスーパーに向かって歩いていたら、 記者の方に声をかけられました。 後から突然でびっくりしましたし、 お断りしてエスカレーターに乗っている間もずっとで、 エスカレーターを降りた先にはカメラを構えた方がいて。。 子供が一緒だったのでとにかく危ないなと冷や冷やしました。 子供との写真はもちろんやめてほしいです。 スーパーもコンビニもいきますし、 毎日普通に生活しています。 面白おかしく物語をつくらないでほしいな。。切実に思います。 自分の心の奥の気持ちは言ったり書いたりしたことはありませんでしたが、、 今日はとにかく悲しかったですし、 危ない目に遭いかねないと危機感を感じましたので、 今まで思っていた事を含めて初めて書きました。 毎日安全に穏やかに過ごせますように。 今の気持ちを林田岬優ちゃんが 素敵な絵で表してくれました。 ありがとうね。感謝です。🌼

前田敦子(@atsuko_maeda_official)がシェアした投稿 -

 ハフポストの記事には、

(前田さんは)一部の報道関係者による取材手法に苦言を呈した。
(前田さんは)このように報道に対する切実な思いをかった(恐らく語ったのタイプミス)上で、「危ない目に遭いかねないと危機感を感じました」と続けた。

とあるが、前田さんは記者という表現は使っているものの、報道関係者とか報道という表現は使っておらず、この記者とカメラマンを報道関係者、彼らの行為を報道と捉えているのは前田さんではなく、あくまでもハフポストのライターだ。

 このハフポストのライターは、自分が子どもや家族などとプライベートを過ごしている時に勝手に写真を撮られて、その行為は「あくまでも報道です」と言われたらどう感じるだろうか。もし撮影した対象が何らかの悪事を働いていて、それに関連する場面であれば、そのような行為も「報道にまつわる」とすることが出来るかもしれない。だが、前田さんの場合は決してそんなことはないし、この記事で紹介している前田さんの件は報道でも何でもなく、単なる盗撮だろう。
 ハフポストのライターは、当該記者やカメラマンの行為を容認しているとは言えない記事の書き方をしているものの、盗撮を報道かのように表現したり、「(前田さんが)このように報道に対する切実な思いをかった(語った)」と、前田さんがそれらの行為を報道と捉えた上で苦言を呈している、という、事実とは異なるであろう表現を用いているのはどうかと思う。

 このハフポストのライターに言いたい。盗撮は報道ではない、と。それともハフポストでは盗撮も報道の一種と考えているということだろうか。

 トップ画像は、 WikiImagesによるPixabayからの画像​ を使用した。

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