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社会の流れには逆らわない方がいい?

 権力や勢力のあるものには反抗せずに、がまんして従っていた方が得策だ、という意味の「長い物には巻かれろ」という寛容表現がある。自分は長い物には巻かれろだとずっと思っていたが、辞書によっては「長物には巻かれろ」としている場合もあるようだ(長い物には巻かれろ(ながいものにはまかれろ)とは - コトバンク / 長物には巻かれろ(ながいものにはまかれろ)とは - コトバンク)。但しどちらも読みは「ながいものにはまかれろ」である。


 この「長い物には巻かれろ」という表現には9/6の投稿「自民党は日本の有権者の縮図」でも触れた。そこでは、

「長い物には巻かれておくのが賢い生き方、大人の振舞い」みたいな認識を、決して少なくない日本人が持っているが、それは全く賢くはなく、実際には「率先して長い者には巻かれるのは奴隷志願者の生き方、振舞い」と言った方が実態に即している。

と書いた。

 予定していた留学が新型コロナウイルスの影響で中止となったものの、支払った事前手数料が返金されず、日本の大学については休学を決定していたので、留学中止となったことにより休学中の活動の代替案もなく、留学予定だった為に2021年卒として就職活動を進めておらず、留学が中止となっても2021年度卒ではなくて2022年卒として就職活動をする必要があり、留年を嫌う傾向のある企業も少なくなく、留学中止による留年が就職活動に不利になる可能性がある、という不安を抱えた大学生に関する記事をハフポストが掲載している。

留学中止で返金もなし。不満と嘆きばかりの日々で私が前向きになれた理由。 | ハフポスト

 この記事の主人公・渡邊 真未さんは、前述のように複数の理不尽に見舞われている。だが下を向いて嘆くだけでは何も解決しないと考え、少しでも状況を変えようと、その方法を模索している、という内容だ。
 自分の置かれた状況、そして社会の風潮を少しでも変えようとする渡邊さんを心から尊敬する。もし自分が彼女と同じ状況に置かれたとしてどうするか、を考えてみた。自分ならまず周りの大人、大学4年生ももうれっきとした大人だが、人生の諸先輩という意味の所謂大人に、その状況を説明し助言を請うだろう。そして「嘆いても仕方がない、過ぎたことは諦めよう」と考えるはずだ。なぜそのように考えるのか。自分の周りの大人達に相談すれば、十中八九「理不尽だね。でも文句を言っても仕方ない」という旨の言葉が返ってくることが強く推測されるからだ。
 中学や高校の、今ではブラック校則と呼ばれるような理不尽な校則について、親や先生に何度か「なぜそんな校則が必要なのか」と反発したが、返ってくる返答は「中学生/高校生らしくないから」という全く説得力のない言葉だったり、「ルールはルールだから従え」という話ばかりだった。つまり「理不尽だろうが長い物には巻かれておけ」と考える大人が大勢いた。そして自分は反発はするものの、理不尽を解消する具体的行動はせずにこれまで過ごしてきた。

 このような状況に置かれた若者に必要な助言は「諦めが肝心」では断じてない。必要なのは「どうしたら理不尽を解消することができるか」を共に考えることだ。理不尽が目の前にあるのにそれから目を逸らせば、その社会の進歩はない。つまり「長い物には巻かれろ」は全然賢い選択じゃない。寧ろ愚かな選択と言っても過言でない。

 ハフポストは、雑誌や広告、放送、ウェブサイトなどで使われるストックフォトで、LGBTQ当事者の写真は、以前はデートシーンなど、いかにもカップルといったビジュアルが多かったが、最近は一緒に趣味を楽しむ、仕事をするといった日常のビジュアルに利用がシフトし、また個人やカップルだけではなくゲイカップルと子どもなどの家族写真の利用も増えている、とする記事も掲載している。

LGBTQの写真に変化。子育てするゲイカップルがトップ10入りも。背景にあるのは… | ハフポスト LIFE

大手ストックフォトサービスのゲッティイメージズでは、2018年に初めて、ゲイカップルと子どもの家族の写真が最も売れた家族写真のトップ10に入ったそうだ。

 しかし日本で売れている家族の写真は、未だに異性夫婦と子どもの写真らしい。東京レインボープライド共同代表理事の杉山 文野さんは、

(日本でも)実際の社会では家族の形が多様になっているのに、社会の中で共有されている家族のイメージはアップデートされていない

と分析している。端的に言えば、日本は世界的な潮流から遅れている。厳しく言えば時代に取り残されている、と言えるだろう。
 日本で家族のイメージがアップデートされないのは必然だ。何故なら、この7年半の間、旧来の家族像を称賛・奨励、その維持を推進し、「同性愛には生産性がない」と所属議員が言っても処分せず、同性婚を法的に認めるなどして、社会の変化を促進しようとしない政党を、過半数の有権者が支持もしくは容認してきたのが日本の現状である。7年半前に比べて全く進歩がない、とまでは言えないだろうが、こんな状況ではそのような変化が起きないのも当然だ。
 ここにも「理不尽に抗っても仕方がない、長い物には巻かれておくのが得策」という、とても浅はかで愚かな日本人の志向が現れている。

 しかもそれは今後も当分変わらないだろう。それくらい日本人・日本の社会に巣食う病は根深い。何故なら、この7年半続いた安倍政権の路線を継承すると公言している菅が、新首相にふさわしいと答える人が最も多いそうだから。


 トップ画像は、Photo by SHREY DEEPRANJAN on Unsplash を加工して使用した。

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