2013年10/25、安倍内閣が特定秘密保護法を閣議決定し、同年12/6に成立、2014年12/10に施行された。同法は、民主党・菅 直人政権下の2010年9月に尖閣諸島周辺で起きた、中国漁船が海保巡視船に体当たりした事件で、海保職員が撮影した動画をネットで公開したことを契機に、機密や情報管理の厳格化を目的とした法が必要だとされ、検討が始まったとされている。
この法案は当初から、
- 何が秘密に指定されるのかの範囲が曖昧である
- 国民の知る権利が不当に侵害される恐れがある
- 秘密指定の半永続的な更新が可能
- 何が秘密に指定されているかが明確でない為に内部告発等の委縮に繋がる
などの指摘があり(特定秘密保護法は、日本のあり方を大きく変える | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス)、2013年10月から12月頃の世論調査結果では、軒並み賛成が反対を大きく上回っていた(特定秘密の保護に関する法律#国内の世論調査 - Wikipedia)。しかし、与党自民党は議席数を背景にこの法案を成立させた。
因みに、この法案検討の特命担当大臣だったのが、今年の2月から6月頃にかけて、強引な法解釈変更を閣議決定したことで実現しようとした検事長の定年延長を、追認する為に成立させようと検察庁法改正案を推進し、支離滅裂な答弁に終始した法務大臣・森 まさこである。
特定秘密保護法が成立 政府は基準作りなど急ぐ
特定秘密保護法は付則で、施行後5年間に特定秘密を保有したことがない機関を適用除外すると定められており、2019年12/10に、施行後5年間特定秘密の保有がなかった復興庁や検察庁などの42機関を、同法の適用対象から外す政令改正が閣議決定された(特定秘密保護法、42機関を適用除外 菅官房長官「運用見直し検討」:時事ドットコム)。
これを受けて、京都新聞は次のような社説を掲載している。
社説:特定秘密保護法 懸念拭えぬ恣意的運用|政治|社説|京都新聞
特定秘密の範囲は曖昧だ。法案の審議段階から国民の知る権利や報道の自由を損ないかねないと指摘されていた。菅義偉官房長官は「制度設計に何ら問題はない」とするが、制定当初の検討の不十分さが浮き彫りになった。
政府は今年6月末までに12機関の計581件を特定秘密に指定した。ところが外部からは実態を把握するのが難しく、恣意(しい)的な「情報隠し」への懸念を拭えない。
特定秘密に限らず、安倍政権では公文書のずさんな取り扱いや開示に対する消極的姿勢が際立つ。「森友・加計」疑惑や「桜を見る会」問題を見れば、時の政権の意向や、それを忖度(そんたく)して、官僚らが公文書を都合よく廃棄、改ざんし、意図的に保存期間を縮めている可能性がないとは言えない。
これは官房長官の菅が、定例会見で「制度設計に何ら問題はない」と強弁している映像である。
菅が「問題ない」としている根拠は、当初の予定通り5年間特定秘密の保有のなかった機関を対象から除外した、つまり必要なこと以外は秘密にしてないことが分かるでしょ?、という話である。だがそれは、既に特定秘密に指定された500余りの件が適切かどうかとは別の話であり、だから「特定秘密保護法全般に問題はない」と言える根拠にはならない。端的に言って詭弁である。
法を成立させた際に、施行後5年間に特定秘密を保有したことがない機関を適用除外することにして、そもそも特定秘密の対象にする必要がない機関も広く対象に含めておいて、後にそれらを形式的に除外すれば、クリーンに運用している印象を醸し出せるだろうと目論んで、そのような付則を設けた恐れも否めない。というか、京都新聞の社説が指摘するように、安倍自民党政権下では公文書の杜撰な扱い、隠蔽・改竄、不当廃棄が頻繁に起きており、しかもそれは歴代政権と比べても前代未聞のレベルなので、そのように見えるのは当然だ。
先日菅が総裁選立候補表明会見を行った。官邸記者クラブ所属メディアなどの大手の記者ばかりに質問が許される状況に不満を持った、フリーのジャーナリスト・志葉 玲さんが、会見の終盤に
フリーランスにも質問させてください
こんな会見、出来レースじゃないですか?
公文書を棄てないで下さい。公文書を改ざんしないで下さい。今ここで約束して下さい
と、所謂不規則発言をした。
確かに会見のシステムに則った質問ではないものの、「公文書を棄てない、改ざんしないと約束して下さい!」と言われ、何も反応を示さずにいる者が、果たして一国の首相にふさわしい人物だろうか。
「品位がない記者」は何故叫んだかー目が泳ぐ菅義偉氏、公文書の適切管理を約束できず #今日の話題 #今日のニュース - 志葉玲タイムス
菅は9/5の定例会見でも、首相が官邸などで保有する公文書の保全について問われたが、そこでも保全を名言しなかった(首相が保有の文書 菅氏、保全明言せず 識者「公文書軽視だ」 - 毎日新聞)。
官房長官とは、言うまでもなく官邸・内閣の顔役、スポークスマンである。そんな立場の人間が、公文書の保全を名言できないのに、なぜ特定秘密保護法の恣意的運用がされないと信じられようか。しかも、その男が今度は首相になる恐れが今高まっている。
にもかかわらず、NHKはこんな呑気な記事を報じる。
菅が、公文書の適切な取り扱いを求められても明確にYesと言えない、ということについての記事は、この投稿を書いている時点で、NHKには一つも掲載されていない。NHKというのは最早報道機関とは呼べないなという感しかない。
トップ画像は、Tayeb MEZAHDIAによるPixabayからの画像 を使用した。