○○大学生 / ○○大学出身です。と言う時に○○大学が東大や慶応・早稲田など有名大学だと、取り敢えず「へーすごいじゃん」という反応を示す人が日本には多い。果たして有名大学に入学 / 有名大学を卒業 は手放しで有難がるべきような要素なのか。韓国や中国など、東アジアには日本以外にも学歴を偏重する国や社会が多い。
他の東アジア諸国の詳細は知らないが、日本の場合は学歴偏重というよりも肩書偏重、と言った方がより正確かもしれない。警察官というだけで手放しで全面的に信用したり、国会/地方議員というだけで先生扱いして有難がる風潮が社会全般に確実にある。警察官が痴漢をしたとか横領したとか、政治家がこんな悪い事をした、という話が頻繁に報じられているのに。学歴もその肩書の一つなのは、有名大学であればある程有難がる傾向にあることがそれを物語る。
しかし例えば、東大を卒業後官僚を経て政治家となったが、トラブルを起こす者は決して少なくない。飲酒して度々暴行/暴言を繰り返す丸山 穂高、秘書への暴行を行った豊田 真由子などがその例だ。選挙おける公選法違反/秘書給与のピンハネ/秘書への暴行/スピード違反の揉み消し など数々の不祥事が報じられる河井 克行とその妻・河井 安里、そして昨日・10/19に秘書への暴行で起訴された石崎 徹などは、慶応卒/官僚/政治家という経歴の人物である。
学歴や肩書だけでは、その人が有難がるべき人物かを計れない例は他にも枚挙に暇がない。例えば慶応卒で、メンタリストという肩書で活動するDaiGoなる人物がいるが(DaiGo - Wikipedia)、彼は10/18にこんなツイートをした。
大して税金払ってない奴ほど、税金の使い方に敏感なとこあるよね。
— メンタリストDaiGo (@Mentalist_DaiGo) October 18, 2020
もっと稼いで払ってからどうぞ。
大学を卒業できるだけの知識を持ち合わせているとは到底思えない内容だ。日本の選挙権の歴史はこうだ。
1889年 直接国税15円以上納める25歳以上の男子
1900年 直接国税10円以上納める25歳以上の男子
1919年 直接国税3円以上納める25歳以上の男子
1925年 25歳以上のすべての男子
1945年 20歳以上のすべての国民(女性含む)
2016年 18歳以上のすべての国民
税金の使い方に口を出したいならもっと稼いで多額の納税をしてから言え、 ということは、逆に言えば、納税額が少ない奴は黙ってろ、ということでもある。つまり彼が言っているのは、時を1889年に戻そう、ということだ。
この選挙権の変遷は、大学入学レベルつまり高卒レベルどころか、小学生6年生で習う内容だ。納税額の変遷は教えられないかもしれないが、1889年に初めて選挙権が認められた際は納税額15円以上の男子で、国民の約1%にしか選挙権がない制限選挙だったこと、大正デモクラシーの結果、納税額の条件がなくなったこと、戦後やっと女性にも選挙権が与えられ、本当の意味での普通選挙が実現したことは、間違いなく小学校で習う。自分の頃とは指導要綱が異なるかもしれないが、中学校までには確実に習う内容だ。因みに、1919年の3円の時点でも、選挙権が与えられたのは国民の5%に過ぎない。
DaiGoなる人物は、慶應義塾大学理工学部物理情報工学科の卒業らしいが、理工系だから知らないで済むような話ではないことは間違いない。そしてかれは前述のツイートの数時間後にこうもツイートしている。
生放送開始
— メンタリストDaiGo (@Mentalist_DaiGo) October 18, 2020
人生最高額を更新したので月収を公開します。 https://t.co/eAWpIASaui
自分には、彼がどうしようもない人物にしか見えない。この流れでは、単に収入額で他の人にマウントを取りたい人なだけにしか見えない。そのマウントの為に、社会を近代初期に戻せと言っているのだから目も当てられないとはこのことだろう。納税額で声の大きさが決まるなら、納税できない状況にある者は最悪選挙権が認められないだろう。納税額で権利の大きさが決まる社会は果たして平等と言えるのか。そう言えないから、現在多くの民主主義国で納税額の多少に関係なく同等の参政権が与えられる普通選挙が採用されていることは明白である。
確かに学歴や肩書は人の値打ちを推し計る際の目安になる指標であることは間違いないが、座学や日本式のテストだけに特化して長けた人、肩書を自分で作り出す人、なんてのも決して少なくないし、学歴や肩書は概ねその人の人間性と比例するようなものでもない。つまり過信は禁物としか言えないのが学歴や肩書だ。
学歴や肩書の偏重がなくなれば、詐欺に騙される人は今の半分以下に減るのではないか。学歴や肩書だけではないが、何事も自分の頭で合理性の有無を判断するようにしないと、おかしなことに巻き込まれかねない。
トップ画像は、Photo by Iñaki del Olmo on Unsplash を使用した。