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収入減に苦しむ非正規労働者を「見えないくん」扱い

 いじめの手法にはいろいろとある。典型的で傍目にも分かりやすいのは暴力や暴言等を浴びせる手法だ。だが「何もしない」という手法もある。一人でも成立するケースはあるが、多くの場合多数が「何もしない」にという行為に加担することで成立する。「見えないくん」などと称して、例えばクラス全体がある一人、又は少人数のグループを一斉に無視し、対象をいないものとして振舞うという手法の、排除型いじめの一種だ。


 他国ではそのようなことはない、かどうかは知らないが、日本では大人が平気でその種のいじめや排除を行う。ある社員にだけ仕事を全く与えず、居づらくして辞めるように仕向ける、というような事案がしばしば明るみになる。
 そのようなことをするのは決して一般人だけでなく、政治もそんなことを平気でやる。例えば昨日の投稿で触れた、新型ウイルス危機以前から、年末年始の休みやゴールデンウイークが曜日の並びによって長期化すると、非正規雇用労働者から収入減を嘆く切実な声が毎度のように上がることを勘案せずに、新型ウイルスの感染拡大対策という名目で帰省や旅行、初詣などによる人出増を分散する為として、1/11の成人の日まで年末年始の休みを延ばすよう企業などに働き掛ける、なんて話はまさにその典型的な例だろう。新型ウイルス危機以前から連休の長期化は非正規労働者にとって死活問題という声があるのだから、それへの対応策を含まないそのような政策は、政府が収入減に苦しむ非正規労働者らを「見えないくん」扱いしていると言っても決して過言ではないだろう。

 この見解が強引でないと言える根拠が昨日再び出てきた。朝日新聞によると、副首相兼財務大臣である麻生は、10/24に開いた自身の政治資金パーティーで、新型ウイルス対策として国民1人あたりに10万円を配った特別定額給付金について、「その分だけ(個人の)貯金が増えた」と述べ、消費を喚起する効果は限定的だったという見方を示したそうだ。

麻生氏「10万円給付分だけ貯金増えた」 効果を疑問視:朝日新聞デジタル

(個人の)現金がなくなって大変だというのでこの夏、1人10万(円給付)というのがコロナ対策の一環としてなされた
当然、貯金が減るのかと思ったらとんでもない。その分だけ貯金が増えました
カネに困っている方の数は少ない。ゼロじゃありませんよ。困っておられる方もいらっしゃいますから。しかし預金・貯金は増えた

と、麻生は述べたとのことだが、給付金が概ね預貯金に回ったと言える根拠はどこにあるのだろうか。金に困っている人が少ないと言える根拠はどこにあるのか。

 まず金に困っている人が国民全体に対して実際に少なかったと仮定する。だとしても、少数だったら無視してよいということにはならない。10万円の給付が決定する以前、自民党は減収世帯への30万円給付案を推していたが、昨日の投稿で取り上げたDOMMUNEの放送の中でも触れられていたように、経済が停滞し非正規を中心に失業が増えているのに生活保護申請の件数は増えておらず、弱者向けの助成を受けることは恥、という社会的な風潮がある中では、減収世帯を対象とした申請型給付という制度では、必要なところに必要な支援が届かない恐れが強い。
 因みに生活保護受給者などを蔑む主張をする者は、現自民党政権の積極的支持者と大きく重なっている。つまり、自民党支持者が前述の風潮を醸成している側面がある。しかし自民党は「そのような考えは間違っている」とは言わない。自民党と支持者の関係は、白人至上主義を否定しないトランプとその支持者の関係性によく似ている

 また、金に困っている人が実際に少なかったとして、経済の循環が新型ウイルス危機によって停滞しているのは誰の目にも明らかである。自民党からは3月頃お魚券やお肉券という話が上がっていたので(「お肉券」「お魚券」構想頓挫 自民の経済提言に入らず [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)、麻生は恐らく「貯蓄に回せない期限・用途を限定した商品券のほうが消費を喚起できた」と言いたいのだろうが、当時から商品券では家賃や光熱費等に使えないという批判があったし、そもそも現金給付が貯蓄に回された、という話が事実だとしたら、それは、国の社会保障には頼れない、という不安があるからだろう。前政権から副首相兼財務大臣である麻生はそれを一体どのように捉えているのか。

 給付金が概ね預貯金に回ったと言える根拠はどこにあるのか。自分が調べた限り、現在示されている家計調査は、7/31に発表された今年・2020年1-3月期のデータが最新である。

統計局ホームページ/家計調査(貯蓄・負債編) 調査結果

 麻生は副首相兼財務大臣なので、公表前のデータを見ている可能性がないとは言えないが、もしそうならば具体的なデータを示して主張をすべきだ。朝日新聞の記事にも預貯金が10万円の給付後増えたデータの有無には言及がないが、ざっとでも調べた上で記事化すべきではないのか。それとも当該記事は速報で今後詳報が出てくるのだろうか。昨今の報道を見ているとそんな風には考え難い。
 また、10万円は銀行振込で給付されたのだから預貯金額が一時的に増えるのは当然だと誰かがツイートしていた。全くその通りで、もし10万円の給付後に預貯金額が増えていたとしても、それは「金に困っている人は少ない」と言える根拠にはならない

 経済通でも何でもない自分ですらこれだけの指摘をすることが出来るのだが、日本の有権者は、いつまでこんな男を副首相兼財務大臣にする党に政府を任せるつもりだろう。日本の有権者というのは本当にマゾ、もしくはズボラ、またはその両方だとしか言えない。

 因みにTBSの映像を見る限り、当該パーティーは充分に感染対策を考えているとは思えない間隔で聴衆が着席していることも指摘しておきたい。

麻生財務相、10万円給付「その分 貯金が増えた」|TBS NEWS



 トップ画像は、Free-PhotosによるPixabayからの画像 を使用した。

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