2017年の衆院選で自民党は「この国を、守り抜く。」をスローガンに掲げた。しかしそれから3年の間に何があっただろうか。2019年、ロシア側の態度硬化に伴い、自民党政権は北方領土について「日本固有の領土」という表現を止めた。そして2020年、世界中で新型ウイルスが広がったが、既に抑え込みに成功した地域がある一方、日本では新規感染者が減らない。比較的感染者数が少ないアジアの中では中国に次ぐ感染者数で、このままいけば中国の感染者数を抜く勢いだ。因みに中国の人口は日本の少なくとも10倍である。
トップ画像の元ネタはこれである。この2017年衆院選の際に自民党が掲げた公約の内、一体どれだけが達成されているかを、日本の有権者なら確認しておくべきだ(衆院選公約:自民党「この国を、守り抜く。」 - 毎日新聞)。
外交や公衆衛生上、国を守っていないだけにとどまらず、前 安倍自民政権は日本の法治と民主主義を壊してきた。
その最たる例が、2015年に強引に成立させた安全保障関連法案だ。安倍政権は、戦後一貫してどの政権も踏襲してきた「日本国憲法では集団的自衛権は認められていない」という解釈を閣議決定だけで覆し、それを当該法案の妥当性の根拠とした。つまりこれは憲法とこれまで日本の政治が積み上げてきた前例の軽視である。言い換えれば立憲主義に反する。憲法軽視については、憲法の規定に基づく国会招集要求を無視した事例も複数ある。
また、2019年の参院選とその後に、首相や閣僚に対する批判の声を上げた者、声を上げずにプラカードを掲げただけの者を警察に排除させるという行為も行った。これについては、警察権力の暴走と捉えることもできなくはないが、しかし安倍自民政権から警察のそのような振舞いに対する批判や指摘や対処は全くない。つまり、もし政権が主体的にやらせたのではなくても、事実上はやらせた、若しくは容認しているに等しい。
更に2020年には、合理的な法的根拠も示さずに、またもや閣議決定に基づき検事長の定年延長を行おうとし、それを後付けで適法化しようと、検察庁法改正案を強引に成立させようとした。その中では法務大臣から口頭決裁という、近代民主国家にあるまじき手法まで飛び出している。
現 菅自民政権が発足した際に、60%を超える支持率を記録したという。自分には報道機関が適切な調査を行う資質に欠けているか、日本の有権者が常軌を逸しているかのどちらかとしか思えない。何故なら自民党が総裁、つまり首相に決めた男は、前政権でずっと官房長官を務め、頻繁に、合理的な根拠も示さずに「批判は当たらない」「○○する立場にない」などと説明することを拒否してきた者だからだ。それだけにとどまらず、桜を見る会の問題などについては、筋の通らない説明、つまり嘘を吐いていたことも明白であるからだ。
菅自民政権は間違いなく前政権を踏襲している。それは総裁選で菅自身も公言していた。そして今週はこんなことが起きた。
「日本学術会議」 任命されなかった6人の学者はどんな人? | ハフポスト
日本学術会議は、科学に関する重要事項を審議したり、研究の連絡をすることを目的にした科学者の組織で、政府に対して提言をするのも役割の一つである。210人の会員は非常勤特別職の国家公務員で、内閣総理大臣が管轄するが、政府から独立して職務を行う「特別の機関」だ。推薦された人を任命しなかったのは、会議が推薦する方式になった2004年度以来初めてのことである。
内閣総理大臣による日本学術会議会員の任命は、本来形式的なものだ。でなければ会議の政府からの独立性を担保できない。議員内閣制の日本では国会が内閣総理大臣を指名し、形式的に天皇が任命するという方式になっているが、戦後は象徴天皇制となっており、天皇は一切の政治的権限をもっておらず、任命を拒否することはできない。内閣が管轄するものの政府から独立して職務を行う日本学術会議の性質上、内閣総理大臣による会員の任命は、天皇による内閣総理大臣の任命と同様に形式的でなくてはならない。
しかし菅はこれを否定したのだ。つまり、菅は日本をまた一歩独裁国家に近づけた、と言える。政府に対して提言をする役割をもつ機関の会員に、政府に対して批判的な者を任命することを拒否したのだから。
前自民党政権、そして現自民政権は日本の法治と民主主義を壊す存在である、ということは、最早疑いようのない事実である。