自分にとって不都合な実情から目を背けることを現実逃避と呼ぶ。バブル崩壊以降の日本は現実逃避の連続と言っても過言ではないだろう。少なくとも民主党政権から安倍自民党政権への移行して以降は明らかに現実逃避の連続だった。安倍自民党政権、そしてそれを引き継いだ菅政権も、明らかに不都合な真実から目を背け、自分達に都合のよいことばかりを過剰に強調する傾向が強く、それはかなり深刻な影響を日本社会に及ぼしている。
例えば、2016年に首相だった安倍は、
憲法に指一本触れてはならない、考えることもだめなら思考停止だ
と国会で発言している(【衆院予算委員会】安倍首相、民主党に「思考停止」「弱々しい」憲法改正をめぐり(1/2ページ) - 産経ニュース)。またテレビ番組でも「いま思考停止している政治家、政党の皆さんに真剣に考えてもらいたい」と述べ、改正に消極的な野党を牽制している(安倍首相、改めて憲法改正に意欲 消極的な野党を牽制:朝日新聞デジタル)。
既にこのブログでも何度も指摘しているように、安倍のこの主張は詭弁である。何故ならば、安倍は「改正についての議論をしないのは思考停止」という旨の主張をしており、現状維持も含めて改正の是非を議論しようというのではなく、改正する前提で議論しないと思考停止だと言っているからだ。
憲法改正の議論をしないのは思考停止だ!と声高に叫ぶ割に、安倍政権は選択的夫婦別姓制度や同性婚について殆ど議論をしてこなかった。また、諸外国では大麻の合法化・非犯罪化が進んでいるにも関わらず、日本ではその種の議論も殆どされていない。つまり安倍とその周辺は、何故か憲法改正に関してのみ「議論しないのは思考停止」と声高に主張していた、としか言いようがない。
現首相の菅は安倍政権の官房長官であり、しかも全政権を基本的に踏襲すると公言しているので、この前政権の主張は今も同様と考えるのが妥当だろう。
IOC:国際オリンピック委員会は、バッハ会長が11/15-18に訪日すると発表した。それにつてい朝日新聞がこんな記事を昨日掲載した。
バッハ会長「菅首相と五輪中止は議論しない」 訪日発表 - 東京オリンピック:朝日新聞デジタル
新型コロナウイルスの影響で来夏に延期された東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの準備状況確認が目的で、菅義偉首相との会談や、選手村、国立競技場を視察する予定だ。バッハ会長は「来夏の大会開催に自信を持っている。訪日後、全ての選手や関係者がさらに自信を深められるようにしたい。(菅首相との)話し合いでは中止は議論しない」と訪日の意義を強調した。
とのことだが、新型コロナウイルス感染が欧米だけでなく日本でも再び広がりつつある状況でなぜ、中止に関する議論はしない、と訪日前から公言するのか。全く理解に苦しむ。
「憲法改正について議論をしないのは思考停止だ」と声高に主張していた政権の官房長官であり、現首相である菅はバッハ会長に対して「欧米だけでなく日本でも再び感染が拡大しているのに、オリンピック中止を議論しないのは思考停止だ」と指摘・批判するだろうか。もししないようであれば、前政権・現政権・そして与党自民党と憲法改正論者たちはの大半は、思考停止という話を恣意的に持ち出す人達と言わざるを得ない。
今の状況で来年のオリンピック中止を視野に入れないのは、明らかに現実逃避である。都合の悪い現実から目を背け、自分達に都合の良いばかりを強調するなら、オリンピックにも日本にも未来はない。
現実逃避をしているのは現政権やIOCだけではない。多くの日本の有権者も、今自分達が置かれている状況、つまり現実から目を背け問題を先送りする傾向が明らかに強い。自分達の選択や判断は、自分達だけでなく子や孫の世代にも影響を及ぼす。全ての人が国の将来に対する責任を負っている、ということから目を背けてはならない。