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自民党は保守なのか

 保守と革新は対極的な政治的な理念や思想とされる。保守/conservatism とは、従来の伝統・習慣・制度・社会組織・考え方などを尊重し、革命などの急激な改革に反対する社会的・政治的な立場、傾向、思想などを指す(保守 - Wikipedia)。革新/Progressivism は別名・進歩主義とも呼ばれ、現在の社会的矛盾、不合理を次第に改善し、新しく、より優れたものを追求する思想である(進歩主義 (政治) - Wikipedia)。


 1990年代まで長く続いた55年体制下で、代表的な保守政党と言えば自由民主党で、革新政党の最大手は日本社会党だった。1993年に細川連立政権が成立・自民党が下野して55年体制が崩壊すると、日本の保守と革新はその定義がかなり曖昧になる。これまでそれぞれが保革の雄だった自民と社会党が連立するということも1994年に起きた(55年体制 - Wikipedia)。
 その後自民党と民主党という2大勢力による政治体制が2016年まで続いた。民主党は確かに中道左派的な政党だったが、果たして革新/進歩主義派と呼べるかと言えば怪しく、個人的には第2自民党、もしくは劣化自民党の側面も充分に持ち合わせていたと考える。2016年に民主党(当時の名称は民進党)が空中分解した後、手のひらを返して自民に鞍替した議員が複数いたし、福島原発事故時に当時官房長官だった現立憲民主党代表の枝野氏が「出荷制限の対象品目を摂取しつづけたからといって、ただちに健康に影響を及ぼすものではありません」と発言したことなどにも、そんな印象を覚えた。

そんな日本の政治体制の中で、最も長い歴史を誇る日本共産党は、結党以来一貫して革新/進歩主義勢力と言える(日本共産党 - Wikipedia)。100人に「共産党は保守か革新か」と問えば、恐らく99人は革新と答えるだろう。
 しかし昨今、自分には

 日本共産党は保守政党

と思えて仕方がない。

 「自民党をぶっ壊す」というフレーズを用いて人気を博した小泉 純一郎は、2001年の自民党総裁選で橋本 龍太郎と麻生 太郎を抑えて選出され、2001年参院選/2005年衆院選でも圧勝した(小泉旋風 - Wikipedia)。小泉は2006年に自民党総裁任期を満了し総辞職するのだが、その次に自民党が総裁に選んだのが安倍 晋三だった。小泉以降の自民党を見ていると、特に2012年末に民主党から政権を奪還した後を見ていると「小泉は本当に自民党をぶっ壊してしまった。自民党はぶっ壊れてポンコツの集まりになった」という感しかない(麻垣康三 - Wikipedia)。

 前述したように、自民党は保守政党だと日本人の殆どが認識しているだろう。だが果たして今の自民党は保守と呼べるだろうか。冒頭でも書いたように、

 保守とは、従来の伝統・習慣・制度・社会組織・考え方などを尊重し、革命などの急激な改革に反対する社会的・政治的な立場、傾向、思想

のことだ。確かに今の自民党も、伝統的な家族観の重視だとか、日本は伝統的に夫婦同姓だから選択的夫婦別姓に反対するとか、従来の伝統・習慣・制度・考え方などを重視する部分、制度の改革に反対する部分がある。
 だがしかし、これまで戦後どの政権も「日本国憲法では認められていない」としてきた集団的自衛権の行使を、憲法解釈の変更だけで「行使できる」としたり(安倍自民政権下における安保関連法案問題)、検察官の自主独立が脅かされ政権への忖度が生まれかねないという理由で、これまで国家公務員法の特例規定は検察官の人事には適用できないとされてきたのを、これも閣内だけで法解釈を変更して一方的に「適応できる」と言い始めたり(安倍自民政権下における検事長定年延長問題)、学術会議の推薦に基づいて首相が形式的に任命するとされてきた日本学術会議会員の任命を、拒否できると言い張ってみたり(菅自民政権下における日本学術会議会員任命拒否問題)、保守的とは間違っても言えないようなことをやっているのが今の自民党でもある。
 これらは全て自民政権による法解釈の一方的で強引な変更に関する事例であり、しかも場合によっては文書によらない口頭決裁による法解釈変更なんて話まで出てくる。そんな自民党と比べると、共産党すらも保守政党に見えてくるのだ。憲法や法律の従来の解釈を全く尊重せずに勝手に変える政党に比べたら、法を遵守している政党はどこも、どんな政治理念を掲げていようが保守政党に見えてしまう

 桜を見る会の問題についても同様のことが言える。直近昨年同問題について首相という立場で行っていた安倍の弁明が虚偽、つまり嘘だったことが発覚している。

 直近嘘が発覚したのは、桜を見る会の本体ではなくその前夜に行われた安倍側主催のパーティに関してだが、桜を見る会に関しても、従来の開催趣旨を逸脱して安倍や菅、そして自民党議員らが支持者を接待する場にしていたことが指摘されている。彼らが保守政治家ならば、会本来の趣旨を逸脱して私利私欲の為に利用することなどあってはならないのではないか。勿論革新政治家だろうがそんなことは許されないのだが、従来の伝統・習慣・制度を基本的に是とする保守派ならば尚更だろう。

 桜を見る会の問題に関しては、現首相も昨年からかなり支離滅裂な説明と擁護を繰り返してきた。

「5000円でもできる」強弁 桜を見る会迷走、はぐらかしの菅氏答弁を振り返る - 毎日新聞

 自民党の政治家らはなぜこんな男を総裁/首相に選んだのだろうか。それで果たして彼らは保守派と胸を張れるのだろうか。張れるのだとしたら言葉の意味を理解できない人達としか言いようがない。逆に言えば、これで保守政党を自負しているのだから、言葉の意味を理解出来ない・歪曲する人達の集まりが自民党だ。それは、安倍という日本語を読んで理解することも出来ない男を7年半も担ぎ続けてきたのだから間違いない。

安倍前首相がSNS投稿で”事実誤認” 慰安婦報道の最高裁判決で削除要求

 つまり、

 今の自民党は、共産党が保守政党に見えてしまうくらいにぶっ壊れてしまっている

のが実状である。


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