「学術会議が推薦した105名全員が掲載された推薦者リストは見ておらず、任命を拒否した者の中で加藤 陽子教授の論文しか読んでないが、学術会議会員には旧帝大出身者が多く女性や若手が少なく多様性に欠けているので、かなり悩んだが女性や私大出身者、比較的若い推薦者6名の任命を拒否した」という、いくつもの矛盾を孕んだことを平気で言う首相の所為で、やっと招集された臨時国会は日本学術会議会員の任命拒否問題で持ち切りだが、本来今最も議論すべきはコロナ対策だ。
5月頃まで、やれカラオケだライブハウスが集団感染の発生源になるだの、パチンコ店が自粛要請に応じないだのと、政府や自治体、所謂自粛警察のような人達と一緒になって危機感を煽りまくったメディアも、最近は全然コロナウイルス対策や現状について取り上げなくなった。全く取り上げないわけではないが、間違いなく報道全体に占める割合が減っている。6月末から新規感染者数が増加に転じたものの政府は具体的な対応を行わず、旅行促進政策を強行。そしてそれを正当化する為に5月以前よりも感染者数が増えていたにも関わらず「大したことない」感を醸し、メディアもそれに乗じているのが現状ではないだろうか。
しかし現在も、7月末から8月頃に比べれば少ないものの、10月中旬以降新規感染者は再び増加に転じており、日本の累計感染者数は公式の発表でも10万人を超え、既に中国を抜いた。これらの数字は保健所や自治体の指示に基づく検査の結果だけらしいので、独自に検査を受けた人の数は含まれていないようだし、この数字も実態よりも少ない恐れのある数字だ。兎に角韓国や台湾などの隣国とは全く異なる状況なのが今の日本である。
新型コロナウイルス感染症まとめ - Yahoo! JAPAN
国土交通省が、都内のタクシー事業者が申請していた「利用者にマスクの着用を求めても理由なく拒否された場合に運転手が乗車を断ることができる」という新型コロナウイルス感染防止対策を認可した、とNHKが報じている。
マスク着用拒否はタクシー乗車断ります 事業者の申請を国認可 | 新型コロナウイルス | NHKニュース
旅客自動車運送事業運輸規則や道路運送法などで、タクシーなどは正当な理由なく乗務員が乗車拒否することは出来ないことになっている。感染防止策として、マスクの着用を拒否する客の乗車を断ることを、正当な理由に基づく乗車拒否として国交省が認めた、という話だ。
この話には「え?今更?」という感しかない。3-5月頃にかけて、前述のようにパチンコ店やライブハウスやクラブ、また飲食店や水商売や風俗業などが感染源になるとして槍玉にあげられ、それらの業種や映画館や劇場などに感染防止対策が求められ、充分な対応をしていないと判断された場合には営業停止処分を科す恐れもあるという姿勢が、政府や自治体によって示され、場合によっては職員が派遣され実質的な実力行使が行われる場面も見られた。にも関わらず、かなり狭い密室空間になるタクシーに関して、今更こんなことが報じられたら、「今まで対策してなかったってことだよね?」と思うのも当然だろう。
この対策は集団感染の防止ではなくあくまでもタクシー運転手の感染防止だ。しかし厚労省は飲食店従業員などの受動喫煙防止を理由に禁煙や厳格な分煙を推進する立場の役所であり、「集団感染防止策ではないので後回しなってました」は通用しないだろう。
このようなケースを見ると、前述の業種に対してばかり懸念が過剰に示されていたという感しかない。これまでの感染者の推移を見れば、そのような厳格な対策をもっと全般的に実施することが感染の抑止に役立つのは明らかなので、決して対策は全般的に緩くていいという話ではない。明らかな二重規範による対応が政府や自治体によってなされているのは明白で、それは十中八九偏見に基づくものであり、その点は全く看過できない。
ある業種には厳格な対策を求めるのに、別の業種では求められていないのは、タクシーの件だけでなく次の件からも明らかだ。
マスクしていないと注意したらスプレーかけられ 男逃走:朝日新聞デジタル
東京メトロ半蔵門線の車内で、マスクを着用していない男を注意した男性が、マスクをしていない男に催涙スプレーのようなものを吹きかけられ病院に搬送された、という話である。都近郊の電車は、最早コロナ危機以前とそれほど変わらない通勤ラッシュがもう当たり前になりつつある。殆ど人はマスクをしているが、していない人もしばしばいるし、通勤時間帯等ではそんな人と隣り合わせになることも決して珍しくない。だから自分は現在できる限り電車等公共交通機関を使わないし、どうしても使わないとならない場合は通勤時間帯等混雑を避ける。
以前から何度も書いているが、ライブハウスやクラブなどにはキャパの50%以下などの人数制限を要求するのに、毎日ラッシュが起きる公共交通機関にはそのような対策を求めないのか、全く理解に苦しむ。このようなことからも、政府や自治体が二重規範による情緒的な対応しかしていないと説明できる。
そもそも、感染防止対応を怠る店などには営業停止も辞さないとしていたのに、新型ウイルス対策を議論する為の場でもある国会を招集しなかったり、コロナ危機以外の件で支離滅裂な説明をして時間を浪費する政府は、その責任をどう考えているのか。与党は、これまでも散々支離滅裂で矛盾に満ちた説明を繰り返してきた者を首相に選んだのだから、首相も政府も与党も、そんなことは全くお構いなしなのだろう。
そんな人達に政権を預けている限り状況はよくならない。ウイルスは、かなり時間がかかるだろうが、将来的に自然に改善に向かうとしても、その頃にはまた別の問題が浮上し、それに対して適切な対応がなされないことが強く懸念される。