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not consistent / 一貫性がない

 WBCに出場する野球日本代表はNPBのオールスターチームだ。毎年7月に行われるオールスターゲームはセ/パ両リーグのオールスターチームで行われるので、両者には多少の違いはあるものの、プロ野球選手の選抜チームという意味ではとてもよく似た性質である。そして2つにはもう一つ大きな違いがある。WBCに出る日本代表は全員が代表のユニフォームを着るが、オールスターゲームではそれぞれのチームのユニフォームを着る。


 野球やバレーボールなどは2つのチームの選手が入り乱れることがないので、チームでユニフォームが統一されていなくてもさほど大きな支障はなく、野球のオールスターゲームのようなお祭り的側面のある試合では一貫性のないユニフォームでも試合が成り立つが、サッカーやバスケットボールのように両チームの選手が混ざり合う、ユニフォームがバラバラだと見ている方も審判も、そしてプレーする選手自身にも支障があるスポーツのオールスターゲームでは、オールスター用の一貫性のあるユニフォームが用いられる。
 しかし面白いのは(実際には全然面白くない。寧ろ異様である)、ユニフォームの一貫性の必要がそれ程高くないはずの野球の方が、やれスパイクの色もチームで合わせろとか、グラブの色も合わせろだのと、サッカーやバスケットボールよりもいちいちうるさいことだ。一貫性の必要がそれ程高くないのに野球の協会はどこも過剰に一貫性を求めてくる。高校野球などはその典型的な例だ。

 もうかれこれ3か月程続いている日本学術会議の任命拒否問題に関してテレビの報道番組や映画、ドキュメンタリーを制作している有志が始めた映像プロジェクト・Choose Life Project が、昨日討論会をYoutube Liveで行っていた。

11/24 学術会議の任命拒否問題。何が問われているのか? #学術会議任命拒否問題

 Choose Life Project は、日本学術会議の任命拒否問題に関する首相と官房長官の説明を端的にまとめた動画をツイッターでも公開した。次の動画は官房長官である加藤の国会における答弁をまとめたものである。

まず、菅が10/28の衆院本会議で「必ず任命しなくてはならないということではない、ということは内閣法制局の了解を得た一貫した考え」という答弁の映像があり、これに対して立民・枝野代表が11/4の衆院予算委にて、「この一貫した考えとはいつから”一貫”しているのか」と問い、官房長官の加藤は「学術会議推薦し首相が任命するという現在の制度になった時以来(つまり1983年以来)一貫しているということ」と答えている。
 だが1983年、当時首相だった中曽根は、制度について「政府が行うのは形式的任命に過ぎない」と答弁しており、加藤の言っていることは支離滅裂だ(首相に一定の監督権 学術会議の解釈変更せず―内閣府が18年見解公表:時事ドットコム)。これを踏まえて枝野代表は、加藤に対して「形式的任命とはどういう意味か」と問うが、すると加藤は、

(中曽根の答弁は)約40年前のことだから、その趣旨を今から把握することはなかなか難しい

と、平然と言い放った。40年前の首相による答弁の趣旨を把握することが出来ないのに、一体どうして「40年前から政府として一貫している」と言えるのか。全く理解に苦しむ。馬鹿も休み休みにして欲しい。

 Choose Life Project はもう一本別の動画も公開しており、そちらでは菅が任命拒否した理由がどんどん変わる様子を伝えている。

  • 総合的俯瞰的活動を確保する観点から(任命を拒否した)10/5
  • 民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることを踏まえ、多様性が大事だということを念頭に、私が任命権者として(任命拒否を)判断した 10/28
  • 今回の任命の判断とは直結しないが、学術会議には出身大学をはじめ大きな偏りがある。閉鎖的であり既得権益ではないか(という理由で任命を拒否したが、)個々人の任命(若しくは任命を拒否した)理由については、人事に関することであり答えを差し控える 11/5
  • 今回の任命に当たっては推薦前の調整が働かず、学術会議から推薦された者の中に任命に至らなかった者が生じた 11/5

果たしてこれが、政府として一貫性がある、と言うことが可能な首相の答弁だろうか。どう見ても一貫性がない
 しかも「出身大学などに偏りがあり多様性がない推薦が行われているから6名の任命を拒否した」と言っているのに、会員がいない大学所属、会員が1人しかいない大学所属、男性よりも確実に少ない女性の推薦者の任命を拒否しており、話に全く整合性がない。またこの動画では触れられていないが、菅は任命拒否した6名を含む学術会議側が推薦した105名全員が掲載された名簿を見ていないとも述べており、では一体どうやって多様性の観点からその6名が不適当だと判断したのかも全く説明できない(菅首相、推薦リスト「見てない」 会員任命で信条考慮せず―学術会議会長と面会も:時事ドットコム)。

 付け加えておくと、「人事に関することであり答えを差し控える」必要は全くないということを、メディア各社も何故か積極的に指摘していないが、それも首相や政府、つまり権力への忖度・委縮であり、全く不誠実としか言いようがない。

 こんなにも言うことに一貫性がなくコロコロと変わり、整合性に明らかに欠ける話を平然としてしまう首相や政府を、諸外国はまともな交渉相手と認識するだろうか。「何か条約を結んでも簡単に反故にするだろうから危険だ」と考えるか、「こいつら馬鹿だから引っ掛けてやれ」と思うのではないだろうか。政府や首相は野球のユニフォームと違って、一貫性がないと外交的にも困る性質のものである。
 こんな体たらくであるにも関わらず、読売新聞と早稲田大学の共同世論調査では、菅の誠実さについて74%が評価すると回答したそうである(菅首相「誠実さ」評価74%…読売・早大共同世論調査 「説明力」43%止まり)。こんな調査結果が出るのは、読売や早大が誘導尋問をしているか、若しくは有権者のおよそ70%超が何も見ていない、雰囲気だけでしか政治を見ていないということかのどちらかかだろう。

 こんな一貫性のない首相や政権を誠実だなんて言っていたら、世界中の詐欺師が日本を標的にするのではないだろうか。


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