昨日ツイッターのトレンドに「万引き理由」というワードがあった。話題の元は読売新聞の「「万引き理由に自主退学させられた」元生徒側と県が和解、校長は誤り認め直接謝罪 社会 ニュース 読売新聞オンライン」という記事だった。万引きを理由に県立高校を自主退学させられたのは不当だとして、元生徒の男性と両親が県を訴え、当時の校長が判断の誤りを認めて和解が成立した、という話である。
その記事への反応が多く投稿された為に「万引き理由」というワードがトレンドに上がったようだが、反応の殆どは「万引きしておいて退学に不平を言い、しかも和解金を80万もふんだくるなんてけしからん。自主退学ではなく強制的な退学処分にしておくべきだった」のような内容が殆どだった。
今日のトップ画像にしたのは「諂上欺下(てんじょうぎか)」という四字熟語だ。読んで字のごとく、上に諂い(へつらい)下を欺く(あざむく)ということを示している。「へつらう」は他の言い方をすれば媚びる/おもねるで、「あざむく」は主に嘘をついて人を騙すというニュアンスだが、心ないことを言うという意味もあり、この場合は後者の意味と捉えた方が分かりやすい。
つまり「諂上欺下」とは、自分よりも立場が上の者には媚びを売り、自分よりも立場が下の者、そう見なした者には馬鹿にした態度をとることである。端的に言えば、のび太には滅法強気だがジャイアンにはこびへつらうスネ夫のような者、そんな振舞いを示す四字熟語だ。映画版などで時折見せる別の側面もあるので、「スネ夫的」という表現に異論がある人もいるかもしれない。しかし漫画やテレビのレギュラー回に登場するスネ夫は、基本的には諂上欺下なキャラクターだ。
万引きは確かに何らかの罰を受けるべき行為である。そして男性が通っていたのが私立校ならば退学という処分もやむを得ないかもしれない。しかし男性が通っていたのは県立高校だし、そもそも当時男性は未成年だ。教育上の措置として、万引きをした生徒を排除するのは妥当か。排除は果たして教育だろうか。
確かに高校は義務教育ではなく自主的に通うものであるので、素行の悪さを理由にした排除に全く合理性がないとは言わない。しかし現在、日本の高校進学率は97%を超えている。つまりもう高校は殆ど義務教育と変わらない。そして、未だに学歴による差別や偏見は根強く残っており、就職などで高卒は大卒よりも冷遇されるし、高校中退/中卒は高卒よりも更に冷遇される。そんな状況で、万引き程度の理由で退学させるのが妥当かを考えれば、如何にその妥当性が低いのかが分かる。
しかし残念なことに読売新聞などの当該記事への反応は、「万引きしておいて退学処分に不平を言い、しかも和解金を80万もふんだくるなんてけしからん。自主退学ではなく強制的な退学処分にしておくべきだった」の大合唱なのだ。
前首相の安倍は、恒常的に有権者へ供応買収を行い、しかもそれを隠す為に国会で118回かそれ以上の虚偽答弁を繰り返した。
安倍前首相の「虚偽答弁」は118回 桜を見る会前夜祭巡り衆参両院で 立民が衆院調査局に調査依頼し判明:東京新聞 TOKYO Web
「正しい判断が出来ない恐れが…」という理由で首相を辞任したにもかかわらず、しかもそんなことが発覚した今もまだ議員を続け、「秘書が勝手にやった。自分は知らなかった」という全く説得力のない論法で責任逃れをしようとしているし、党もさせようとしている。また、自民党や維新には、安倍同様に公選法違反をやったり、それに匹敵するような不祥事を起こしたりしたのに、離党や役職の辞任だけで済ませ、議員辞職せずにのうのうと居座っている者が少なくない。
果たして、高校生に「万引きしたら退学になって当然、文句をつけるなんてもってのほか」と言っている人達の内のどれだけが、公選法違反や虚偽答弁などを犯した者が辞職せずに議員を続けていることに対して同様の指摘をしているだろうか。厳密に傾向を調べたわけではないが、万引きした高校生に厳しいことを言っているアカウントの多くは所謂似非保守の類、つまり自民党や維新の支持者であり、後者には目をつぶっている傾向が見られた。
そんな人達こそ「諂上欺下」だと言わざるを得ない。
諂上欺下なのは一部の国民だけではなく、メディアの大半にもそんな傾向が見られる。政治家の公選法違反や不祥事、従来発言との矛盾などは積極的に批判も指摘もしないのに、芸能人や有名人の不倫や薬物使用/所持、交通違反などに対しては、これでもかという程に攻撃的な取材を仕掛ける。例えば事故を起こし被害者が出た交通違反などに対してなら分かるが、不倫はあくまでも個人間の問題で明確な犯罪ではないし、薬物関連も、本人のイメージ悪化などによってスポンサー企業には迷惑をかけるかもしれないが、それも個人的な問題でしかなく、不特定多数に直接的な被害が出るわけではない。公選法違反や虚偽答弁を繰り返した政治家への追求に比べたら、追求や批判のバランス感覚がかなりおかしい。
こんな状況に鑑みれば、
日本は、自分よりも立場が上の者には媚びを売り、自分よりも立場が下の者、そう見なした者には馬鹿にした態度をとる人の多い、諂上欺下な国
と言っても過言ではないのではないか。
トップ画像は、mohamed HassanによるPixabayからの画像1 と 画像2 を組み合わせて使用した。