田崎 史郎なる人物がいる。時事通信社で政治部記者や解説委員を務めた経歴を持ち、2006年頃からテレビのワイドショーなどでコメンテーターをするようになった。安倍政権下では、首相と頻繁に会食を繰り返しており、また自民党への政党交付金から田崎に資金が渡っていたことでも知られる。安倍と寿司屋で会食することが多かったことから、一部では「スシロー」と呼ばれている。
田崎はしばしばかなり強引な安倍・自民擁護を繰り広げる人物である。なぜそんな人物を、テレビ局/番組は政治解説役として起用し続けるのか理解に苦しむ。田崎のようになぜかテレビが起用し続ける人物には三浦 瑠璃などもいるが、彼らのような者を起用し続けているというのも、現在自分が幾つかのテレビ局、というかテレビ業界全体に対して不信感を感じている理由の一つだ。タレントや芸人は、少し過激なことを言えばどんどん敬遠されるのに、なぜ彼らは、おかしなことを言ったり、場合によっては偏見や差別的なことを言ってもテレビに出続けられるのか。
田崎は1/18のテレビ朝日・羽鳥慎一モーニングショーに出演し、
(オリンピックの開催を)主催国が返上したといった場合は、契約で日本にペナルティーが課せられる。
と述べた。この発言がどんな文脈で行われたのかは報知新聞が
玉川徹氏と田崎史郎氏が東京五輪開催を巡り激論「田崎さんが何を言って…」「それは別の問題」 : スポーツ報知
という記事で文字起こししている。オリンピック開催の為に予算を割くよりも、それを感染症対策に回すべきではないのか、という他の出演者の主張への反論の中で当該発言があり、田崎は「中止すると余計に金がかかるからやるしかない」と言っているのだ。
しかし田崎はこの発言をたった1日で撤回した。翌1/19の同番組の中で、
昨日のやり取りの中で間違いがありまして、主催国が返上した場合はIOCとの契約でペナルティーが課せられると申し上げたのですが、あれは私の間違いで、お詫びして訂正します
と謝罪した(田崎史郎氏が謝罪 東京五輪問題関連の発言「私の間違いで、お詫びして訂正します」 : スポーツ報知)。つまり、オリンピック開催しなくても違約金などは発生しない、そんな契約は存在しない、ということだろう。厳密には、契約がないかあるかには言及しておらず、田崎が確認できなかっただけで実際には契約が存在する可能性もあるが、たった1日で発言を撤回したこと、「ペナルティーが課せられると申し上げたことは間違い」という言い回しから考えれば、十中八九ないことを確認したということだろう。
こんなにもいい加減なことを強弁する人物を、テレビ業界は一体全体いつまで政治解説として起用するつもりなのだろうか。テレビ業界はその信頼性を自ら落としていることに果たして気づいているのだろうか。
この件は決して田崎だけの問題ではない。しかしなぜかそのような報道は全く見当たらず異様だ。なぜ田崎だけの問題ではないのかと言えば、組織委委員長の森 喜朗がこれまでに「中止にしたら3倍の費用がかかる」とか「開会式の簡素化をすれば違約金が発生」などと発言しているからだ。
それらの発言は共に2020年7月にされたものだ。
「五輪開会式の簡素化難しい」 森会長「違約金が発生」:中日新聞Web
三時間ある開会式を短くすれば、経費は一番安くなる。(しかしIOCは)駄目だと言っている。すでに時間の枠を売っていて、違約金が発生する。組織委員会が払えるか
五輪中止なら…森会長「誰が弁償?費用は倍とか3倍に」 - 東京オリンピック:朝日新聞デジタル
一生懸命に組織したものが完成せずに終われば、無駄に終わる。保証とか弁償などに対して、誰が弁償するのか。そういうことを考えれば、倍とか3倍になるということがわかるんじゃないかな。日本の事情だけで決められる問題ではない
森は田崎とは違い、ハッキリと「大会を中止すれば違約金が発生」とは言っていない。朝日新聞の弁償額が開催費用の3倍云々という話も、あくまで憶測であることを織り込んでいる。しかし、開会式を簡素化すると違約金が発生、という契約があるなら、大会中止にだって違約金を設定してありそうなものだ。そうでないならあまりにもズボラ過ぎる。日本政府や日本の組織委なら、そんなズボラな契約をしそうなものだが、契約大国アメリカの放送業者などがそんなズボラな契約を結ぶとは考え難い。つまり森は、田崎同様にいい加減なことを言っている恐れがかなり強い。
自分のように強い論調で指摘するのは、主要メディアでは難しいかもしれない。しかしそれでもそこに矛盾がある恐れを指摘するくらいはして当然なのではないだろうか。テレビも新聞も、日本の主要メディアはどこもオリンピックの協賛企業になっている。だからそんな記事が出てこないのではないかと疑ってしまう。
もしこの仮説に大きな間違いがないのだとしたら、日本は安倍の「アンダーコントロール」という嘘でオリンピックを招致しただけでなく、組織委委員長も嘘吐きだったということになる。森は昨年・2020年10月に、組織委名誉最高顧問なる新たな役職を用意して安倍を就任させた(東京五輪パラ組織委 名誉最高顧問に安倍前首相: 日本経済新聞)。桜を見る会問題で安倍の虚偽答弁を強引に擁護し続けた現首相のスガも含めて、東京オリンピックを未だにやるやると言い続けてるのは嘘吐きばかりだ。
嘘で塗り固められたオリンピックとして、2020東京オリンピックは開催/中止にかかわらず後世に名を残すことになるだろう。