昨日・1/13、政府は新たに7府県に緊急事態宣言を出した。1/8に東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県に緊急事態宣言を出したが、その前日に対象地域の拡大を否定していたのに。たった5日足らずで新たに緊急事態宣言の対象地域が増えた格好だが、新たに対象になった大阪・兵庫・京都・愛知・岐阜・福岡・栃木の7府県の状況が、この数日で急に悪化したわけではない。つまり、いい加減な判断で1/8の緊急事態宣言は出されていたと言わざるを得ない(1週間足らずの方針転換 首相、見えぬ出口戦略―緊急宣言の対象拡大:時事ドットコム)。
緊急事態宣言の対象地域を増やすにあたって、昨夜首相の菅は会見のようなものを行った。世間一般ではまだこれを記者会見と呼んでいるが、菅と官邸記者クラブが行っているのは、記者会見の体裁で行われる茶番劇であり、決して記者会見と呼べるような代物ではない。そう言える根拠は複数あって、
- 記者クラブ所属メディアによる質問は事前に首相側に知らされ、菅が原稿を読むだけの単なる朗読会と化していること
- 記者クラブ所属メディア以外の参加を極端に制限し、更に少数の非記者クラブ参加者にも殆ど質問させない状況であること
- 菅が質問で聞かれたことに適切に応答しようがしまいが、「次の予定がある」として再質問を禁じていること
つまり、首相の質問に応じる姿勢が極端に低く、しかもそれに官邸記者クラブが批判もせず同調してしまっている。しかもこれは今回の会見だけに限った話ではなく、もうかなり前からで、菅が官房長官だった頃の会見も、当時の首相・安倍の会見でも同様だった。
しかし一応、記者会見と言い張れるようにする為か、昨日の会見ではロイターやブルームバーグなどの記者の質問にも応じたが、それらの記者への応答でも用意された原稿を読んでおり、つまりそれらも茶番劇の一部だった。原稿読みで対応していなかったのは、フリーで唯一の質問することができたジャーナリスト・神保 哲生さんの質問だけだった。その質問に対するスガの応答が、これまでで最悪レベルに酷かった。
令和3年1月13日 新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見 令和3年 総理の演説・記者会見など ニュース 首相官邸ホームページ
映像は会見のようなものから、神保さんの質問とそれへの菅の応答の部分を抜粋したものだ。神保さんの質問の要旨は、
- 国民に「協力を」と言うが、その間政府は何をやってきたのか
- 人口当たりの病床数世界一なのに、米国の1/100しか感染者のいない日本でなぜ医療崩壊を迎えているのか、という質問に「医療の体制が違う」と答えたが、ならば法や制度を変えれば問題は解消するのではないか
- しかし首相や政府には法や制度を改善する積極的な姿勢は見えないが、今後どうするつもりなのか。関連しそうな医療法や感染症法を改正するつもりはあるのか
である。これに対して菅はこう述べた。
まず、このコロナ感染者への医療について、政府として、そこに対応してもらっているその医療機関に対して、しっかり御支援をさせていただいたり、あるいは保健所への人員の派遣、そうした体制を作ったり、クラスターが発生すると政府のチームがそこに行って対応するなど、そうしたことについて政府は対応を行ってきました。
そしてまた医療機関でありますけれども、日本には今の法律がある中で、ひっ迫状況にならないように、政府としては、ベッドは数多くあるわけでありますから、それぞれの民間病院に一定数を出してほしいとか、そういう働きかけをずっと行ってきているということも事実であります。
そして、この感染症については先ほど申し上げましたけれども、法律改正は行うわけでありますから、それと同時に医療法について、今のままで結果的にいいのかどうか、国民皆保険、そして多くの皆さんが診察を受けられる今の仕組みを続けていく中で、今回のコロナがあって、そうしたことも含めて、もう一度検証していく必要があると思っています。それによって必要であれば、そこは改正するというのは当然のことだと思います。
前半の2段は、聞かれたこととは話の焦点がズレている。菅は何か言い訳しているようだが、その結果が「人口当たりの病床数世界一なのに、米国の1/100しか感染者のいない日本でなぜ医療崩壊を迎えている」状況であり、つまり簡単に言えば「ムダなことを」してきたと言っているにも等しいし、そもそもそんなことは誰も聞いていない。
最後の段は、一応聞かれた「医療法/感染症法改正するつもりはあるのか」に触れてはいるが、結局「必要であれば、改正するのは当然」としか言っておらず、決して「状況打開の為に改正を目指す」とも「改正しないでも現状打破は可能」のような、明確な回答はない。つまりやはり聞かれたことには殆ど答えていない。
しかも、このタイミングで国民皆保険を見直すなどと言いだしたのだから恐ろしい。感染症の影響は経済的に弱い者が受けやすいのに、社会福祉制度の根幹である国民皆保険を見直すとは、一体どんな了見なのだろうか。言い間違いなら何も考えていない、意図した発言なら恐ろしいことを考えている、と言えるだろう。
主にアルバイトやパートタイマーの仕事に関する情報誌・タウンワークが「“バイトに受からない人”の典型的な特徴と“受かる人”の共通点 <履歴書・面接・電話etc.>」という記事を掲載している。記事で紹介されているバイトに受からない人の特徴の中に、「質問に対する返事がトンチンカン」という項目があり、
質問に対する答えのピントがずれていると、会話能力や理解力に疑問を持たれてしまいます。相手の質問の意図をよく理解し、答えを的確に返すことを心掛けましょう。
というアドバイスがある。また電話やメール編にも「話の内容が要領を得ない」とあり、
緊張して話がしどろもどろになり、「何を言いたいのかわからない」と思われると、マイナスの印象になります。質問事項などはあらかじめメモにまとめておき、最初に用件を伝えてから話し始めるとスムーズです。
と解説している。つまり前段の応答から判断すると、菅がもしバイト面接を受けたとしたら、聞かれたことに答えないという理由で不採用になる、と強く推測できる。当該記事には他にも、採用されない人の特徴として、
- 目を見て話さない
- 言葉遣いが幼稚、または乱暴
- 足を組むなど、態度が横柄
- シフトに入れる日時が限られすぎ
- 声が聞き取りにくい
などが挙げられており、それらは菅の態度や姿勢に少なからず合致する為、やはり菅は基本的にバイト面接で落とされるタイプだろう。
シフトに入れる時間が限られすぎは、直後に予定がある時間帯を選んで会見のようなものを行う、ということを示唆して例に挙げた。前述の映像からも分かるように、昨日の会見のようなものでも「次の日程があるから」という理由で早々に会見のようなものが打ち切られた。しかし昨日の首相動静はこうだ。
首相動静(1月13日):時事ドットコム
- 午後1時52分から同2時16分まで、小泉進次郎環境相。
- 午後6時17分から同31分まで、新型コロナウイルス感染症対策本部。
- 午後7時1分から同41分まで、記者会見。同42分から同57分まで、藤井健志官房副長官補、吉田学新型コロナウイルス感染症対策推進室長、厚生労働省の樽見英樹事務次官、福島靖正医務技監。
- 午後8時29分、官邸発。
- 午後8時35分、東京・赤坂の衆院議員宿舎着。
- 午後10時現在、同議員宿舎。
どう考えても、記者会見と次の15分たらずの会談は順序を逆にすべきだ。そうすれば次の予定を気にせず充分に質疑に応じることができる。なぜそうしないのか。早々に会見のようなものを打切り、極力質問に答えたくないからと言わざるを得ない。
毎度毎度首相会見のようなものの後には、この種の口実の為の予定が組まれている。しかし予定が済んでからでないと、次の予定が緊急性のあるものかどうかは分からず、会見のようなものの最中にそれを指摘するのは中々難しいかもしれない。しかし、例えば1/11のように、夕方以降特に予定のない日も確実にある(1月11日(月):時事ドットコム)。なぜ誰も、1/11のような夕方以降に予定のない日に会見をしないのか聞かないのか。なぜ会見後に予定を入れるのか、答える気がないから、説明する気がないからじゃないか?と質問しないのか。つまり、官邸記者クラブが翼賛メディア化し癒着しているとしか言いようがない。
バイトの面接すら落第するであろう男が首相であること、主要メディアがそんな男が主導する官邸と癒着して役割を果たしていないこと、そんなことの積み重ねが、今の感染拡大に歯止めがかからない状況の原因である。