こんな画像を作ると、必ずと言っていい程「誹謗中傷だ」という反応がある。そう受け止め得る自由も勿論あるだろうが、全く何の根拠もなくこんな表現をしているわけではなく、そう考えられる幾つかの根拠に基づいた表現であり、風刺であるという信念の下でこのような画像を作っている。但し、元ネタに倣って「支離滅裂な思考・発言」としたが、画像の人物がこう発言した、という事実はない。
昨日(1/20)菅は衆院本会議で、立憲民主・枝野代表の質問に対する答弁の中で、
民主国家において平和的な政権移行は極めて重要だ。選挙の結果を暴力で覆すことは断じて許されない
と述べた。これについての、
トランプが退任するタイミングまで待ってから表明するのだいぶダサくて笑った https://t.co/7OInwxvL7b
— イスラエルエリカちゃん #StayAtHome (@syuu1228) January 20, 2021
というツイートが注目されている。果たしてそれは笑える話だろうか。個人的には全く笑えないという感しかなかった。
それは何故か。米国でトランプ支持者らによる議会占拠事件が起きた当時、
- イギリス・ジョンソン首相「トランプ氏が襲撃をあおり、自由で公平な選挙結果に疑問を投げかけ続けるのは完全に間違いだ」と批判
- ドイツ・メルケル首相「怒りと悲しみを感じた」とトランプ氏の責任に言及
- フランス・マクロン大統領「1人1票という普遍の理念への攻撃だ」と非難
など、各国の首脳陣が明確に否定/批判の意を示す中で、日本の首相である菅は「バイデン次期大統領の下で米国民が一致結束して歩んでもらいたい」「民主国家の代表みたいに世界で思っているので、極めて残念だった」のような表現しかしていなかった。これについては、与党内からも「菅義偉首相が非難のメッセージを発すべきだ」「同盟国の大きな問題だ。あってはならない事態として発信しなければならない」などの批判が起きた。
つまり、前述のツイートの「トランプが退任するタイミングまで待ってから(こんな声明を)表明する」という認識は、概ね妥当と言える。菅は、トランプ氏からバイデン氏への政権移行がほぼ確定する新大統領就任当日まで「選挙の結果を暴力で覆すことは断じて許されない」と言わなかった、という認識には大きな間違いはないだろう。
だが果たしてそれは、ダサくて笑えるような話なのだろうか。なぜ自分がこれを決して笑えるような話、笑って済ませられる話と思えないのかと言うと、それは、菅が、つまり日本の首相が、陰謀論に毒されている恐れを感じるからだ。
米国では昨年の大統領選以来、トランプとその支持者が「バイデンは不正選挙を行った」と主張し続けている。しかしこれまで、それを裏付ける合理的な根拠は何も示されていないし、何も見つかっていない。トランプ側が要求したそれに関する調査によって、寧ろトランプに利するような選挙不正が行われた疑いの方が浮上している。そしてその極めつきが2021年1/6に発生した、米大統領選の最終的な手続きである選挙人投票の集計確認が議会で行われる日を狙った、トランプ支持者らによる議会占拠/襲撃事件だった。
なぜ菅はバイデン氏の大統領就任当日まで「選挙の結果を暴力で覆すことは断じて許されない」と言わなかったのか。これまでに示したことから考えると、
菅には、ツイッターで妄言を吐きまくるトランプ信奉者同様に、バイデン政権へ移行しない可能性がある、という認識があったのではないか
という仮説が生じる。更に言えば、菅のみならずその周辺など政府中枢に同様の認識があったのではないか?という懸念もある。それがトップ画像が風刺と言える根拠だ。
自国の首相や政府が「バイデンが選挙不正を行った」とか、「トランプ政権は2021年1/20以降も継続する」などの陰謀論に毒されていたとしたら、果たしてそれをダサいと笑えるだろうか。恐ろしすぎて自分は全く笑うことができない。
但し、1/13に外相の茂木が議会占拠事件について「選挙の結果を暴力で覆すことは断じて許されない」と非難し、「米国民がバイデン次期大統領の下、困難を乗り越え、再び団結することを切に願っている」と述べている(米議会乱入を非難 茂木外相:時事ドットコム)。ということは、菅が陰謀論に毒されている恐れはあるが、政府が取り返しのつかないレベルで陰謀論に毒されてしまっている、ということはなさそうだ。
しかしこの記事にはまた別の見方もあって、同じ時事通信の、昨日菅がやっと「民主国家において平和的な政権移行は極めて重要だ。選挙の結果を暴力で覆すことは断じて許されない」と述べたことを伝える記事「菅首相、米議会襲撃「断じて許されず」:時事ドットコム」を見れば分かるように、菅は「新大統領の下で、米国民が一致団結して歩んでいくことを期待する」とも言っており、つまり1/13の茂木の発言をなぞっているだけとも言える。ということは、単にライターが書いた原稿を読んでいるだけという見方も出来る。
本人やその周辺が陰謀論に毒され、そして単にライターが書いた原稿を読むだけの男が、自国の首相であることは決して笑い事ではない。
因みに、時事の記者は「菅首相、米議会襲撃「断じて許されず」:時事ドットコム」で、菅の昨日の国会での発言について、
トランプ氏支持者による米連邦議会への乱入事件など大統領選後の混乱について「民主国家において平和的な政権移行は極めて重要だ。選挙の結果を暴力で覆すことは断じて許されない」と厳しく非難した。
と表現している。厳しく非難した?何とも政権や首相への忖度精神に満ちた表現だ。