It takes 20 years to build a reputation and five minutes to ruin it. If you think about that, you'll do things differently. / よい評判を築くには20年かかるが、それを失うのには5分あればよい。それが頭に入っていれば、やることは違ってくるだろう。
は、世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの筆頭株主で、同社の会長/CEOも務めるウォーレン バフェットの言葉とされている名言だ。
果たしてこのバフェットの言葉がオリジナルなのか、それともそれ以前からある認識の言い回しを変えたものなのかはよく分からないが、日本でも「信頼を得るには多くの時間が必要だが、失うのは一瞬」という話をよく耳にする。仕事上の関係にしろ、友人との関係にしろ、ポッと出の新顔にいきなり全幅の信頼をおく者はそうそういない。関係を重ね徐々に信頼関係が築かれていくものだ。金貸しだって一見客にいきなり大金を貸すことはないが、返済実績を積み上げていけば限度額は徐々に増えていく。しかし返済が滞った途端に積み上げた信頼は失われ、同じ額を借りることは出来なくなる。ましてや契約不履行を繰り返す者を信用するなんてあり得ない。
BuzzFeed Japanは1/22に「政府批判は仕方ない。でもワクチン不安は煽らないで。三原じゅん子副大臣がメディアの煽り報道に苦言」という記事を掲載した。満員電車はカラオケやライブハウスほど感染の危険はないとか、積極的なPCR検査は医療現場を圧迫し医療崩壊の原因になりかねないので、するべきはクラスター対策である、という話を煽ったBuzzfeed Japanの医療関係記事には不信感しかないので、いつもならリンクをつけるところだが、敢えてリンクは張らない。この記事に妥当性があるならリンクをつけてもよいが、この記事にも認知の歪みが感じられる為にそうすることにした。
この記事の冒頭には、
新型コロナウイルス対策で期待がかけられながらも、メディアによって不安を煽る報道が始まっているワクチン。かつて日本ではHPVワクチンで恐怖を煽り、接種率が激減する失敗を経験しています。私たちは今、このワクチンとどう向き合うべきなのでしょう
とある。確かに直前に、「新型コロナワクチン、6割超「受けたくない」 女子高生100人にアンケート | ORICON NEWS」という記事が、毎日新聞が転載したこともあって、内容が不適切だと話題になった。Buzzfeed Japanの記者がそれを念頭に当該記事を書いたことが強く推測されるが、自分の目には、新型ウイルスワクチンへの不安を煽る報道が深刻化しているという感も、深刻化が懸念されるという感も全くない。むしろ目立っているのは、オリンピック開催を強行に主張しているにも関わらず、日本政府のワクチン関連政策は他地域に比べて遅れている、混乱しているという報道の方だ。
- ワクチンめぐり政府内で齟齬?河野太郎氏VS坂井副長官 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
- 新型コロナ: 「6月までに確保」を削除 河野氏、ワクチン接種で: 日本経済新聞
- コロナワクチン 当初「6月末」で合意もファイザーとの正式契約は「年内」に|TBS NEWS
更には、これらの報道と時同じくして、政府は「五輪開催はワクチン普及を前提としない」と言い始めた(菅首相、五輪開催はワクチン普及「前提としない」 接種の管理は「マイナンバーの活用を検討」:東京新聞 TOKYO Web)。
個人的には、Buzzfeed Japanの記事には、日本政府のワクチン関連政策は他地域に比べて遅れている、混乱しているという報道の方が明らかに多いのに、メディアによってワクチンへの不安を煽る報道が始まっていると強調することで、印象操作したい意図があるのでは?政府批判の矛先を少しでも逸らせようという意図があるのではないか? と感じる。明確な意図がなかったとしても、不適当な認識に基づいて書かれた記事とは、少なくとも言えるだろう。
オリコンの記事のように、不用意にワクチンへの不信感を煽る記事が全くないとは言えないし、市民の間にワクチンへの不信が全くないとも言えない。だがしかし、それらは本当に「ワクチンへの不信」なのだろうか。自分はそうは思わない。
これまで日本で、原爆・公害などの被害がどれだけ適切に認められてきたか。そのような問題が起きる度に国は責任を認めようとせずに、被害者らが裁判で訴えるなどの負担を、被害に加えて更に強いられてきた歴史がある。ハンセン病の問題、障害者の権利の問題、いくつもの薬害訴訟などでも、被害者が声を上げても国は過失を認め責任を負うことから逃げてきた。そのようなこれまでの政府の姿勢が、HPVワクチンや新型ウイルスワクチンの不信の背景にはある。
更に言えば、現自民党政権下では公文書改竄や隠蔽が幾度も発生しており、調査結果やデータの捏造なども起きている。これまでの政府も過失や責任から逃げる傾向があったのに、それに加えて改竄隠蔽捏造が横行し、首相が公選法違反を隠す為の虚偽答弁を118回も行い、周辺や与党がそれを擁護し続け、更には検察までそれを不起訴とする状況で、一体どうして国が信じられるだろうか。
つまり、確かにHPVワクチンに関しては間違いなくメディアが不安を煽った側面があったが、新型ウイルスワクチンへの不信は、ワクチンへの不信ではなく主に「現政権への不信」である。もし新型ウイルスワクチンに不都合な真実が発覚しても、今の政府はそれを隠そうとするのではないか、認めようとしないのではないか、責任を取らないのではないか、という不安である。
そういう意味でBuzzfeed Japanの記事「政府批判は仕方ない。でもワクチン不安は煽らないで」は無理がある。不安を煽っているのは不誠実な政府の姿勢にほかならない。
今社会不安の原因となっているのは決して政府だけでなく、メディアもその原因である。
陰謀論が蔓延する背景には、主要メディアへの不信感もあるよね。イラク戦争開戦前後の米国メディア大手、酷かったし。日本のメディアは現在も官邸記者クラブとかやたら首相にヘコヘコ。単に陰謀論を馬鹿にするだけでなく、メディア人が襟元ただす必要があると思う。
— 志葉玲 『13歳からの環境問題』著者/『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』編集協力 (@reishiva) January 24, 2021
全く志葉さんの言う通りだ。メディア全体が腐りきっていると言えるかどうかは定かでないが、間違いなく報道の中枢である政治報道、特に官邸周辺記者らが、あんなにも体たらくな会見に甘んじているのを見れば、報道への信頼感が失われるのは当然だ。
法政大学教授の上西 充子さんも、「「#政治部日本語大辞典」 ~政治報道を読み解くために~|上西充子/ Mitsuko Uenishi|note」という投稿を最近公開している。
「野党は反発」「批判が予想される」「安全運転」「丁寧な説明」「かわした」「攻めきれず」「だらしない」など、報道各社の政治部による国会報道や政局報道・社説などで使われる特有の政治用語の、背景にある意図やそれらの用語がどのような影響を及ぼすかなどの考察であり、大雑把に言えば、メディア各社は中立を装った無責任な態度を改めるべきである、といった趣旨である。
世の中に「本当の馬鹿」というものがいるとすれば、それは「自分たちに危害を加える」権力者を支持・応援する奴らのことだな。
— 哲夫:反ファシズム (@bbtetsuo) January 24, 2021
というツイートが今朝タイムラインに流れてきたが、「自分たちに危害を加える権力者を支持・応援する奴ら」に成り下がっているメディアが多いことは、とても嘆かわしい。いや嘆いているだけではこの惨状から抜けだすことはできない。信頼できないものは信頼できないと声を上げなければならないし、その声を捻じ曲げようとする者にも声を上げていかないといけない。
なぜこのコロナ危機下で、更に政府やメディアとまで戦わないとならないのか。この時期に日本に生きているだけで不幸である。