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毎回運行前点検をすることはムダなのか

 新車を短期間で乗り継ぐ人はあまり経験しないだろうが、1台に長く乗る人だったり、中古車で買った車に乗る人なら、エンジン警告灯がついたり消えたりするようになって、「うわ!どれだけ修理にかかるんだろう…」と心配になった経験が1度くらいはあるのではないか。自分のように中古車を乗り継いでいると、エンジン警告灯がついても「どうせセンサーの故障でしょ?」くらいにしか思わなくなってしまうが…。


 自動車のメーターパネルに装備される警告灯の数は、最近はかなり多くなっている。次の画像は、1枚目が1998年型スズキ エブリィのメーターパネルで、2枚目は2019年型のメーターパネルだ。

1998年式には、ブレーキ警告灯/エンジン警告灯/バッテリー警告灯/油圧警告灯/シートベルト非装着警告灯くらいしかないが、2019年式には数えきれない程の警告灯/インジケーターが備わっている。およそ20年で、勿論自動車の機能が増えたこともあるが、警告灯の数は倍どころではないくらいに増えた。更にそれよりも20-30年前の自動車、特に大衆車には殆ど警告灯がなかった。日本初の大衆車とされる1958年に発売されたスバル360の最初期型のメーターは速度計だけで、警告灯はおろか燃料計すらなかった。
 燃料計を警告システムと捉える人は今や少数派だろうが、燃料計はガス欠による立ち往生を防ぐ機能であり、燃料計は自動車で最も重要な警告システムと言えるだろう。燃料計はなくても走行は出来るが、あると人間の見落としを防ぐことが出来る装備は警告システムと言える。最近では燃料計だけではなく、燃料の残量が一定の量を下回ると点灯する燃料警告灯・エンプティランプを、ほぼ全ての車が備えている。その他の主な警告灯の意味や点灯時の対処方法は「メーターパネルの警告灯・表示灯の意味と 点灯したときの対処法 トヨタモビリティ東京」などでまとめられている。

 昨今の自動車には車両の不具合や異変をドライバーへ伝える警告システムが多数搭載されていて、何かしらの警告灯が結構頻繁に点灯する。しかし冒頭でも触れたように、センサーが不具合を起こして警告灯が点灯しただけで、実際には車に不具合はなかった、ということもそれなりにある。センサーが不具合を起こすことがあっても、それらの警告灯の類は決して無意味ではない。実際には不具合がなくてもそれが自動車の点検をするきっかけになるからだ。その点検や検査によって別の不具合が見つかったり、消耗品が交換時期を迎えていることに気付けたりすることがしばしばある。
 自分が免許を取得した頃は、運行前点検が毎回必要だと教えられたが、昨今は適切な時期に検査すればよいという方針に代わっている。それは前段のような観点からなのだろうが、タクシーやバスなど人の命を預かる旅客業務に用いる自動車は、基本的に運行前に毎回点検が行われている。つまり故障や事故防止の為には、どんなに検査をしてもし過ぎることはない。異常がないことを確認することに意義がある。すべき時に点検すればよいというのは、つまり異常が事前に分かるということであり、その時に必要なのは点検ではなく修理だ。
 異常を早期に知ることができれば、その異常が他の異常を誘発するのを避けることにつながり、深刻な故障を避けること、深刻な故障が事故に繋がることを避けることにつながる。これは人間も同じで、定期的に検診・健康診断を受けることで体の異常を早期に察知できれば、深刻な疾患に陥ることを最大限避けることが可能になる。

 昨日・1/8の新型ウイルス新規感染者数は全国で7882人だった。2020年12/31の約4500人から約1週間で倍増する勢いで、1万人を超えるのももう時間の問題だろう。

新型コロナウイルス感染症まとめ - Yahoo! JAPAN

 神奈川県は1/9以降、保健所が行う濃厚接触者の調査を大幅に縮小すると発表した。これまでは、感染者が確認されると保健所が濃厚接触者や感染経路を詳しく調べる「積極的疫学調査」を行ってきたが、感染者が急増し対応できなくなってきているというのだ

保健所ひっ迫で接触者調査を縮小|NHK 首都圏のニュース

 感染者症対策において検査は一丁目一番地である。人と人との接触によって感染症が広まるのだから、感染者を早期に見つけて隔離治療することが、感染症を収束させる最も効果的な方法だからだ。しかし神奈川県は感染者を早期に見つけて隔離治療することが既にできなくなってしまった。一部の自称専門家や政府関係者らが、「積極的な検査は医療崩壊を招く。するべきところに検査すればよい」などと言っていたが、検査すべきところを調べることができなくなったのが現状で、「積極的に検査をしてこなかったことが医療崩壊を招いている」とも言うべき状況になっている。

 「積極的な検査は医療崩壊を招く。するべきところに検査すればよい」という言説を自動車業界に置き換えて考えると、「毎回運行前点検をすることはコストの無駄だ。すべき時に点検すればよい」と言っているのも同じだ。だが、不具合を見つけるのが点検であり、つまりすべき時とは最大限の頻度でとしか言いようがない。全ての人間に新型ウイルス感染警告灯がついていれば、検査すべきタイミングが分かるだろうが、そんな警告システムは人間には装備されていない。発熱などがそのサインだと言う人がいそうだが、発熱したら既に手遅れだ。その際には検査だけでなく治療が必要になっている。治療にかかるコストを極力増やさない為に必要なのが検査だ。
 自動車にしろ、個人の健康にしろ、感染症対策という社会全体の健康維持にしろ、どれだけ点検/検診/検査してもし過ぎることはない。どれだけ多く、繰り返し点検/検診/検査をして、修理や治療などにかかるコストをおさえるかが、車両/人体/社会の健全な状態を保てるか、健全な状態を回復できるかがかかっている。


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