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自民政権の適切な損切り時期はとっくのとうに過ぎている

 筋肉は裏切らない、は2018年に流行語大賞にノミネートされた表現だが、その頃急に用いられ始めた表現ではなく、それ以前からボディビルダーなどの間では使われていた表現だ。他人に裏切られることはあっても、自分で鍛えた筋肉に裏切られることはない、という意味がが込められた表現だが、そこには所謂「継続は力なり」の要素も含まれている。


 「継続は力なり」は、果たしてどんな場面にも当てはまる真理だろうか。決してそんなことはない。日本語には「下手の横好き」という全く正反対な表現もある。「継続は力なり」は、地道に努力を続けていけば、いつか必ず成果は出る、のような意味だが、「下手の横好き」は、大好きで熱心に取り組んでいるのに、いつまで経っても上達しない様子、を示す。
 確かに長く続けることが成功に繋がる場合もある。しかしどれだけ続けても成果が出ずに、場合によっては損失だけが積み上がっていく場合もある。例えばパチンコは、継続は力なりが真理とは言えない典型的な例だ。一台のパチンコ台をどれだけ延々と打とうが確実に胴元である店が勝つように設定されており、継続して打ち続けても客は負けるだけ、金を吸い上げられるだけである。
 例えば1カ月毎日同じ台を打ち続けて、その収支を詳細に記録して本にでもまとめて、投じた金額以上の収益を上げることができたなら、それはある意味で「継続は力なり」だろうが、大抵のパチンコ打ちはそんなことを目的にしているわけではなく、単にギャンブルとしてパチンコを打っているだけで、基本的には継続はしても力にはならない。打つこと自体を楽しむ範囲でなら継続が力にならなくても何の問題もない。だが投資のような感覚でパチンコに入れ込むならそれは大きな問題性を孕む。
 因みに投資の世界では、損失をそれ以上膨らませない為に資産の保有継続を止める場合がある。それを一般的に「損切」と呼ぶ。つまり「継続しない方が力になる」場合も確実にある

 昨日朝日新聞は、労働環境の悪さに関する記事を複数掲載した。

「保育園理事長がパワハラ」元保育士らが損害賠償求める:朝日新聞デジタル

公立中教職員の16%、過労死ライン超え 群馬で調査:朝日新聞デジタル

 共に教育現場の労働環境の悪さに関する内容という共通点があるが、教育現場の労働環境だけがこのような状態なのかと言えば、決してそうではない。前者は、被雇用者が団結して訴えを起こしたから記事になっただけのことであり、同じ様な経営者は日本に星の数ほど存在しているだろう。後者の、群馬県の中学校教員の16%が過労死ラインを超えた労働を強いられているという件も、決して群馬県の中学校教員に限った話ではないだろう。最悪の時期に比べたら、恐らく全体的にはやや改善傾向かもしれないが、明らかに過労死ラインを超えた残業、しかもサービス残業を強いられている人をまだまだ見かける。つまりこれらは単に氷山の一角でしかなく、決して珍しい事例ではない。
 但し、教育に関わる人達の労働環境が、他にも増して悪いという実状はあるかもしれない。昨日は、土日の練習試合で生徒を引率した教員に交通費/旅費を支給していない自治体が23府県に上る、ということも報じられていた。

23府県、教員に部活交通費なし 公立高校の土日引率、法令足かせ:東京新聞 TOKYO Web

記事は「交通費/旅費を支給していない自治体が23府県に上る」としているものの、支給している自治体が適正な額を支給しているかには言及していない
 もう15年以上前のことだが、自分の同級生が母校の部活のコーチをしていた。コーチをすることで貰えるのは月2万円程度の定額交通費だけだと言っていた。土日のみコーチをするだけならその額でも足りるかもしれない。しかし平日も学校に通って部活動のコーチをして、土日に遠征があれば全然足りないだろうし、夏休みなどは合宿もあるだろうし、概ね全く不充分だろう。 つまり、支給していない23県だけでなく、支給している県にも問題がある恐れがあり、この記事や調査は不充分な恐れがとても高い。

 現自民政権が「働き方改革」を声高にアピールし始めたのは2016年衆院選からだが(政策BANK|参議院選挙公約2016)、それ以前から同様のことを政策として掲げてきた。例えば、2013年5/28付の資料「「女性が輝く社会の実現」のための政策」の中に、

  • わが国においても、国全体で働き方を改革し、先進国として模範となるような新たな社会システムを作り上げていくことが不可欠である
  • 長時間労働の抑制等、働き方の見直しを徹底しなければ女性が企業で真に輝くことは難しく、企業の労働生産性の向上も望めない
  • 「まずは隗より始めよ」ということで、国会対応のあり方など霞が関官僚の働き方を見直し、彼らのワークライフバランス推進を図る
  • 女性のライフスタイルに応じた働き方や社会参画を応援するため、地域のコミュニティ活動やNPO活動等を通じた社会参画を積極的に支援する

などの文言がある。つまり、現自民政権が「働き方改革」という看板を掲げ始めたのは2016年衆院選以降であるが、2013年5月、つまり政権発足直後から既に、それに類する看板を、女性活躍と共に掲げていたのだ。

 現自民政権が働き方改革を標榜してから実質的に8年以上、明確に看板化してから数えても既に4年以上が経過しているのに、未だに劣悪な労働環境の問題に関する記事が、かなり頻繁に見られる。しかも、私企業だけでなく公にもまだまだ労働環境の問題が多い状態だ。

 2012年の民主党から自民党への政権交代以前、「首相がコロコロ変わるのはよろしくない」という話をよく聞いた。

その年の12月に成立した安倍自民政権は、その後およそ7年半続いたが、7年半もの間「働き方改革」を標榜したにも関わらず、未だに労働環境の問題は殆ど解決していない。長ければいいというものではない、ということは、安倍自民政権とそれを継承する菅政権が如実に物語っている

 勿論、あまりに短すぎる期間で成果を求めるのは決して好ましいとは言えない。しかし、自分達が設定した目標達成期限を何度も延期し、いつまでも「道半ば」と言い続ける人達・政党を信用し続けるのも愚かだ。現自民政権の適切な損切り時期はとっくのとうに過ぎている。既にパンパンに膨らんでいる損失の更なる拡大を抑える為に、今すぐにでも自民政権を損切りするべきだ。


 トップ画像は Photo by Nigel Msipa on Unsplash を加工して使用した。

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