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いいかげんな政治、いいかげんな報道

 本当にデタラメなことばかりだ。人間は感情のある生き物であり、論理だけでは成り立たないことは重々承知しているが、それにしても今の日本はあまりにもデタラメだ。例えば、中央官庁の幹部の利害関係者との癒着に関して平然と嘘を国会で吐いたが、しかし政府や与党幹部の面々は誰もそれを厳しく責任追求しようとしない。デタラメもデタラメ、いい加減極まりない。


 ミャンマーでは2/1に軍によるクーデターが発生、国民が抗議デモを連日行っているのだが、デモ隊に向けて銃口が向けられ、既に複数の市民が命を落とす惨事になってしまっている。それに関連した記事

「日本政府はミャンマーの人々の声を無視しません」丸山大使が大使館前でデモ参加者とビルマ語で直接対話(高橋浩祐) - 個人 - Yahoo!ニュース

を、ジャーナリストの高橋 浩祐さんが書いている。見出しと記事本文に大きな違和はないので詳細は割愛するが、この記事を読んで、というか見出しを見てまず、

 日本政府は日本国民の声すら無視するのに、「日本政府はミャンマーの人々の声を無視しません」という話には説得力がない

と強く感じた。日本国民の声すら無視する、という話に関しては後述する。それ以外にも、国外からも再三差別的・非人道的と指摘される難民政策や入管の振舞い、そして実質的な人身売買だとすら言われることもある外国人技能実習制度のことなども勘案すれば、こんな話は舌先三寸でしかない、という感しかない。
 今のミャンマーの状況では、市民は藁をもすがる思いで、日本政府にも国軍や暫定政府への牽制を求めるだろう。しかし、現在の日本政府は口だけは達者だが、実際は何もしないことばかりだ。例えば、普天間基地の辺野古移設について、知事選や県民投票などで何度反対の民意を示しても、現在の自民政権は「県民の声に耳を傾ける、寄り添う」と言いつつ、移設工事の一時中止さえすることなく工事を続けている。また何かある度に、一刻も早く北朝鮮拉致被害者の帰国を実現する、という決意を口にするが、いつまでたっても決意を口にするだけで具体的には何も動いていない。そんな状況がもう8年も続いている。
 丸山 駐ミャンマー大使は「皆様の要請文は責任を持って日本政府に提出する」と述べ、「私たちが軍隊に求めているのは、ミャンマーの指導者、アウンサンスーチー氏の釈放です。ウィンミン大統領を含む逮捕されたすべての政治家は、直ちに釈放されるべきです。私たちは、あらゆる問題に対する平和的かつ民主的な解決策を求めています」とデモ参加者に訴えたそうだが、自国民の声にすら耳を傾けず、口先ばかり達者な現日本政府なのだから、「日本政府はミャンマーの人々の声を無視しません」という話には全く説得力がない。いや、日本政府は無視はしない(が具体的に何かするとも言ってない)ということかもしれない。


 「日本政府は日本国民の声すら無視する」と言える根拠は他にもある。今夏に開催が予定されている東京オリンピックに関して、少なくとも2021年以降の世論調査で、開催すべきとしている国民は2割程度だ。

東京五輪・パラ「開催すべき」16% 先月より11ポイント減 | 選挙 | NHKニュース

 朝日世論調査―質問と回答〈2月13、14日調査〉:朝日新聞デジタル

 あなたは、東京オリンピック・パラリンピックをどのようにするのがよいと思いますか。(択一)

  • 今年の夏に開催する 21%
  • 再び延期する 43%
  • 中止する 31%
  • その他・答えない 5%

にもかかわらず、そんな国民の声を無視し、未だに政府・首相は「人類がコロナとの戦いに打ち勝った証として五輪開催」などと言っている。

 また、2/20に行われたG7首脳テレビ会議で、今年の夏、人類がコロナとの戦いに打ち勝った証として、安全・安心の大会を実現したい、という日本の(政府、又は首相の)決意について、G7首脳全員の支持を得ることができたと、首相の菅は言っている。

令和3年2月20日 G7首脳テレビ会議についての会見 | 令和3年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

 しかしこの、G7首脳全員が今夏の東京オリンピック開催を支持した、という内容の記事は、日本語メディアにしか見当たらず、海外主要メディアでは殆ど報じられていない。一応ロイターの英語版記事が見つかったが、それも、菅がそう主張している、というだけで、他国政府や首相らの声明を元にした記事でも、取材した記事でもない。

 オリンピックの公式サイトにはこの件に関する投稿があるのだが、

G7 Leaders send message of support for the Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020 - Olympic News

 この記事によれば、G7の首脳が支持したのは、

The communique issued at the end of the virtual meeting of G7 Leaders supports the “commitment of Japan to hold the Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020 in a safe and secure manner this summer as a symbol of global unity in overcoming COVID-19

である。日本語にすると、

COVID-19を克服した世界的な団結の象徴として、今夏、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を安全・安心に開催することを日本が約束する

であり、つまりG7首脳らが支持したのは、今夏のオリンピック開催でも、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証としての開催でもなく「(充分に環境を整え、完全な対策を行い、)安全・安心に東京オリンピックを開催すると日本が約束したこと」だ
 確かに菅は似たようなことを言っているが、菅の言葉は「安全・安心の大会を実現したい」であり、「安全・安心の大会を約束する/した」というニュアンスとは異なる。前者が「安全安心な大会にできるよう努める」のような努力目標的なのに、後者は「確実に安全で安心できる大会の開催が約束されなければ、開催は支持できない」というニュアンスもある、最低条件的な表現である。

 
 組織委会長 森は、女性蔑視発言にばかり注目が集まってしまっているが、女性蔑視発言をした前日・2/2に自民党本部で行われた会合で

(新型)コロナ(ウイルス)がどういう形であろうと必ずやる

と発言している。

東京五輪・パラ「コロナがどういう形だろうと必ずやる」 森喜朗会長が言及 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 また組織委の新会長となった橋本も、五輪担当大臣として出席した1/27の参院予算委員会で、「新型コロナウイルスの感染段階が最も深刻なステージ4の状態でも開催するのか」という野党議員の質問に対して、

開催はすでに決まっている

と、感染状況にかかわらず開催を強行する姿勢を示している。

五輪開催、政府が決めることでない IOC等と連携し準備=菅首相 | ロイター

 菅自身も「ワクチンの普及が五輪開催の前提ではない」という姿勢を示しており、安全/安心な開催環境づくりに対して、どう見ても今の政府や日本の大会関係者が積極的とは言えず、つまりG7首脳らは、 そのような姿勢では開催を支持できない、日本が安全/安心な開催を約束できなければ開催を支持できない(約束できるなら支持する)という見解を示した、ということだったのではないだろうか。

 そのような話だったから、日本政府の発信、それに忖度した、というかプロパガンダに加担した日本メディア、そしてIOCなど以外から、「G7首脳全員が東京大会開催を支持」という話が殆ど聞こえないのではないのか。
 更に言えば、オリンピックの公式サイトでは、本文にはG7首脳が”何を”支持したのかが具体的に書いてあるが、日本政府の発表や日本メディアの記事では、政府や是が非でも開催したい人にとって都合のよい曲解が出回っているように見える。つまり政府やメディアは、日本人の英語力が低いことにつけこみ、真っ赤な嘘ではないが妥当とは言えないニュアンスを平然と流しているのではないか。


 日本は政府だけでなく、大手メディアも含めて、本当にいい加減な国になってしまっている。 


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