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調査には本当の意味での第三者性、つまり中立性が必要

 スポーツの国際試合における審判員は、大抵両陣営とは異なる国の審判員が担当する。中立性・第三者性をできる限り明確にする為だ。勿論、自国チームや選手であっても公平な判断を下す審判員もいるが、疑念が生じることを避ける為に、両陣営とは異なる属性の者に担当させる。


 第三者とは、当事者以外の人。その事柄に直接関係のない者のことだ(第三者とは - コトバンク)。例えば民事訴訟において、一方にだけ裁判官や裁判員の選定に関与できる状況があったとしたら、その訴訟で示される判断は果たして中立と言えるか。スポーツの国際試合で言えば、一方の陣営と同じ属性の審判員が選ばれるのと同じだ。
 また罪を犯した裁判官を裁く際に、その裁判官自身や、その同僚裁判官によって判決が下されることがあったとしたら、その判断は中立性や第三者性を担保していると言えるだろうか。そう言えないことは誰の目にも明らかだ。


 首相である菅の長男が勤める東北新社による総務省幹部への接待問題に関して、総務省は関わった11人の処分を発表した。しかし総務省審議官当時に同様の接待を受けていたことが明らかになっている山田 真貴子内閣広報官だけは、厳重注意で済まされている。

総務省、違法接待認め11人処分 山田内閣広報官を厳重注意:東京新聞 TOKYO Web

 そもそも、総務省が発表した処分もあまりに軽く、これではまた同じことが起きるという感しかないが、何故か現在内閣広報官になっている山田だけは、処分すらされないのだ。首相の菅は、そのような判断が下された理由について「山田広報官は真摯に反省をし、給与を返納していることも事実。女性の広報官として期待をしておりますので、そのまま専念してほしい」と説明している(菅首相「女性広報官として期待」 7万円接待の山田真貴子氏を続投の考え :東京新聞 TOKYO Web)。

 しかし日刊スポーツによると、 会食当時、総務省総務審議官だった山田は「行政をゆがめるような不適切な働きかけはなかった」と主張しているが、調査は山田自身が東北新社に依頼、自ら報告したものと報じている。
 スクリーンショットの次の画像は、公表された調査の内容と処分がまとめられたものだ。山田よりも受けた接待の額が少ないものが大半だが、彼らが処分を受けているにも関わらず、山田は注意で済まされている。

「飲み会断らない女」山田広報官、参考人招致飲む - 社会 : 日刊スポーツ

 何か罪を犯したことが疑われる場合、警察や検察等による捜査が行われ、捜査内容を元に起訴するか否かの判断、起訴されれば裁判官(場合によっては裁判官と裁判員)によって、犯罪の有無、処分の内容が判断される。
 山田が、自身が関与した接待問題について、調査に関わり報告も自ら行い、他の関係者が処分される中で、山田だけが給与自主返納で済まされるのは、刑事事件において、容疑者が自ら捜査を行い、更には裁判官役までこなして自らの処分を判断しているような、本当に異様としか言いようがない状況である。

 日刊スポーツの記事の見出しにもあるように、今日・2/25の衆院予算委員会にて、山田を参考人招致しての真偽が行われているようだが、野党側は、独立した第三者の再調査を求めている(総務省の接待問題、身内調査に不透明感 野党「第三者が再調査を」:東京新聞 TOKYO Web)。そもそも総務省の内部調査だって怪しいのに、当事者が自ら調査報告をして、処分まで自ら決めている。調査には間違いなく中立性・第三者性が必要だ。

 この数年政府内で数え切れない程の不祥事と疑惑が生じているので、もうよく覚えていない人もいるかもしれないが、数々の第三者委員会が、本来は直接の利害をもたない中立的な第三者によって構成されなくてはならないのに、実際には第三者性が薄い性質であった、ということがこれまでも指摘されていきた(2017年1/26の投稿)。第三者委員会とは - コトバンク でも、

2011年の九州電力による原子力発電所再稼動に関する「やらせメール事件」を巡っては、第三者委員会が会社側の責任を厳しく追及したが、こうした実効性のある結論を導くケースは多くない。

と指摘している。
 その最たる例の1つに、自衛隊の日報隠蔽問題がある。自衛隊日報隠蔽問題に関して、隠蔽疑惑発覚後に更なる隠蔽工作が行われ、当時防衛大臣だった稲田が2017年3月に特別防衛監察を命じて調査が行われ、防衛省として組織的な隠蔽を認定した。しかし翌2018年、2017年の国会審議の中で稲田が不存在と説明していた自衛隊イラク派遣時日報が、実際は存在していたことが発覚した。また、2017年の特別監察の対象外だった本省情報本部で、南スーダンPKO日報1年分以上を保管していることも明らかになった(自衛隊日報問題 - Wikipedia)。
 特別防衛観察を行うのは元検事がトップを務める防衛監察本部で、独立した立場からの調査が行われる、とされていたが、結局は単なる内部調査と何も変わらず、調査も全く不充分だった。

 総務省や内閣内の問題や疑惑について調査するなら、総務省や内閣主導で行われるべきでない。中立性や第三者性が担保できないだけでなく、昨今政府は平気で隠蔽改竄捏造をする状態であり、別の面からも信用性が低すぎる。


  朝日新聞が2/23に掲載した、辺野古基地問題に関する記事に、

「判断しない」判断の理由とは?国と沖縄の元調停役語る:朝日新聞デジタル

係争委は、地方分権改革の一環で設けられ、地方自治体に対する国の対応が違法かどうか判断する総務省の第三者機関

とある。係争委とは国地方係争処理委員会のことだ。国と沖縄の間の争いを調停するのが、総務省の第三者機関、つまり、国側が任命した「第三者」なのだ。果たしてそれで中立性・公平性が担保できるのか。勿論結局辺野古移設工事に関する国と沖縄の争いは、法廷へと舞台が移っており、係争委はその前段階の対応をしていたのだが、総務省が選定に関わった係争委は、果たして「第三者」と言えるのか。一方の当事者である国の機関が選定に関わった時点で第三者性は低い。
 少なくともこの記事を書いた記者や、記事を掲載した朝日新聞の見解では「第三者」なのだろうが、自分には全くそう思えない。このような記事を書くこと、表現を用いることも、政府のプロパガンダへの加担の一種だろう。


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