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聞かれたことに答えないから、何度も同じことを聞かれる

 今、日本では、聞かれたことに答えないから何度も同じことを聞かれている、ということを理解できない者が一国の首相の座にある。日本の有権者は果たしてそれでいいのか。日本も一応民主主義国であり、関節的にではあるが、首相は有権者によって選ばれた代表である。首相の振舞いはある意味で日本の代表としての振舞いでもある。


 何のことを言っているのかと言えば、昨日・2/26の、菅のぶら下がり会見についてだ。まず一昨日・2/25の夜に、このように報じられた。

菅首相、急きょ会見見送りへ 山田広報官の問題も影響か:朝日新聞デジタル

 当初は、緊急事態宣言の一部解除に関して、2/26の政府対策本部で正式に決定しその後に会見を予定していたが、2/25に会見を取りやめる方針に転じたという内容で、政府関係者は「会見をしない理由は(東北新社に勤務する首相の息子から接待を受けていた山田)広報官だろう」「山田氏をめぐって官邸内で意見が割れ、やらないことになったようだ」と話している、とも書かれている。
 このような記事は朝日新聞だけが掲載しているわけでなく、

他にも複数のメディアが、 当初行う予定だった会見が一転して中止された、という内容を含む記事を掲載している。 

 緊急事態宣言の一部解除判断に関する2/26の正式な会見は中止されたが、菅は官邸でのぶら下がり取材には応じた。しかし、正式な会見であれば官邸記者クラブ所属メディアの記者以外にも参加する機会が与えられるが、ぶら下がりでは記者クラブ所属メディアしか取材が出来ない。つまり菅や官邸には、首相の息子と内閣広報官が絡む癒着が取り沙汰されているので、できるだけ質問を避けたい、という思惑があったことは否めない。


 そのぶら下がり取材への対応もはっきり言って酷かった。個人的には、緊急事態宣言など名ばかりだし、感染者の減少傾向も濃厚接触者の定義を狭める等して検査を絞った結果でしかない(発表される重症者や死者数は以前と変わらないのに、感染者数だけが減っていることがそれを物語っている)と考えているので、その点について詳細に聞いて欲しかったのだが、そのようなことを聞く記者が官邸所属メディアにはいなかったことも残念でならない。しかしそのようなことを別としても、菅の対応はあまりにも酷かった。

菅首相 緊急事態解除も記者会見開かず 「同じ質問ばかり」と取材対応18分:東京新聞 TOKYO Web

【ノーカット】菅総理ぶら下がり会見 緊急事態宣言の6府県での先行解除決定を受けて - YouTube

 菅は、「緊急事態宣言の6府県解除という重大な決定したにもかかわらず、なぜ記者会見を行わなかったのか。高額の接待を受けた山田内閣広報官の問題が影響したのか」という問いに対して、

記者会見のタイミングは、最後までの状況を見極めた上で判断を行った後に緊急事態宣言の全体についてきちんと会見を行うべきだと考えた。昨年の関西圏解除の際も、ぶら下がりで対応している。

と述べた。しかし、1月に首都圏の緊急事態を宣言した後の、関西など7府県の追加の際も、2月上旬の10都府県での延長の際も正式な会見を開いている。

菅首相、まさかの「ぶら下がり」対応 緊急宣言一部解除でも会見なし 司会の山田広報官隠し?:東京新聞 TOKYO Web

 また、「対策本部で新たに国民に対してお願い事をしているが、今日、会見をやらずとも国民の協力を得られると思うか」という問いに対して、

(だから)こうしてぶら下がり会見をやっている

と述べている。正式な会見は、勿論記者クラブが要求して行われることもあるだろうが、官邸側が主体となって設定するものだ。しかしぶら下がり会見とは、記者側が声掛けをして行うものであり、首相や官邸が主体的に行うものではなく、あくまでも官邸や首相は応じる側でしかない。つまり菅の話は要領を得ない。なぜ主体的に会見しなかったのかという問いに明確に答えず、菅の応答が要領を得ないので、同じ趣旨の質問が再三繰り返された
 その後も感染拡大への懸念、経済支援、ワクチン接種の見通し、そして総務省や農水省の癒着問題などの質問がなされたが、それらに関しても菅の応答が要領を得ない場合があり、同種の質問が繰り返されていることは、前述の会見動画や詳報を見れば誰の目にも明らかだ。


 菅は「今度の会見では最後まで質問を打ち切ることなく質問に答えてもらえるのか」という問いに対して、捨て台詞のように、

私も時間(予定)がある、でもだいたい(質問は)出尽くしてるんじゃないか。先ほどから同じような質問ばかりじゃないか

というようなことを述べて立ち去り、ぶら下がり取材を一方的に打ち切った。

 因みに、「私も時間(予定)がある」と立ち去った菅は、この取材対応の後は、経産大臣とたった3分話しただけだった(首相動静(2月26日):時事ドットコム)。それだけでもう、菅が今後も充分に質問を受けない姿勢であろうことが如実に表れている。


 更に酷いのは、官邸のこのぶら下がり取材に関するページだ。

令和3年2月26日 緊急事態宣言の一部解除等についての会見 | 令和3年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ

官邸のWebサイトでは、以前から記者の質問については文字起こしせずに、どんなことが質問されたかをかなり短く一方的に要約して掲載しているのだが、そもそもそれ自体にも問題がある。何故なら、質問の詳細が分からないと、それに対する応答が適切か判断することが著しく困難になるからだ。
 それだけでももう既にずっと異様な状態なのに、昨日のぶら下がりに関しては、菅の「同じような質問ばかり」という捨て台詞を正当化したいのか、同種の質問に(再)と書く始末である。(Wayback Machine)


 日本の有権者は、果たしてこんな首相でいいのか。こんな者を首相や総裁に選ぶ党が与党で恥ずかしくないのか。自分はまったく容認できないし、恥ずかしくて仕方がない。


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