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万人の平等を求める先駆者になるか、時代遅れになるか。どちらを選ぶ?

 現在は、家庭用オーディオ事業はオンキョーの傘下となり、柱の一つだったDJ機器分野もノーリツグループとなっており、本体に残っているのは主にカーエレクトロニクス事業と業務用音響機器だけになってしまったが、自分が10代までを過ごした1990年代頃、既にカーオーディオブランドのカロッツェリアでカーナビの展開も始めていたが、パイオニアと言えば日本を代表する音響メーカーの1つだった(パイオニア株式会社 / パイオニア - Wikipedia)。


社名の由来 | 沿革 | 会社情報 | Pioneer

「パイオニア」という社名に込めた思いは、この単語が持つ「開拓者」という意味、そのものです。 これは、創業者の松本望がダイナミックスピーカー「A-8」のために考え出した商標で、現在も当社に受け継がれている信条も表しています。

と、パイオニア 社名の由来にあるように、パイオニアとは開拓者という意味だ。パイオニアとは - コトバンク には「他に先駆けて物事を始める人。先駆者。開拓者」とある。Pioneerで検索すると、Google画像検索では日本版でもUS版でも企業のパイオニア絡みの画像ばかりがヒットするが、ストックフォトサイト  Unsplashでは開拓、特にアメリカ合衆国における開拓時代を連想させる画像も多くヒットする。

 アメリカの開拓には負の側面も多く、一概に先駆者たちの存在は偉大とは言い難いかもしれないが、ロサンゼルスやサンフランシスコなど、今日のアメリカ西海岸発展の背景には、それらの地域を切り拓いた先駆者たちの存在がある。それらの地は誰も何もせずに自然と今日の状況に至ったわけではない。
 それは、カーナビやDJ機器の分野に関しても同じことで、日本の企業・パイオニアがその分野の先駆者として発展に大きく寄与したことは紛れもない事実だ。勿論パイオニアだけがその分野を切り拓いたわけではないものの、同社のそれらの分野での存在感は大きい。または間違いなく大きかった。つまり、パイオニアの功績がなければ、カーナビを含むカーエレクトロニクス分野も、今では当たり前になっているデジタル音源を用いたDJプレイも、もっと発展が遅れていたかもしれないし、場合によっては今のような状況にはなっていなかったかもしれない。

 昨日・3/8は国際女性デーだった。この画像は朝日新聞が掲載した広告で、社会運動家・フェミニストとしても知られるクリエイティブディレクターの辻 愛沙子さんが手がけたものだ。

 彼女のこのツイートには、目を覆いたくなるような醜悪なリプライがいくつかぶら下がっている。同じ様に女性の地位向上を求める主張、特に女性、中でも若い女性による主張には、同種のどうしようもない馬鹿げたリプライが多く集まる傾向にある。辻さんが手がけたこの広告には「未来は勝手に進まない。進めてきた人たちがいる」というコピーがあるが、その種の誹謗中傷に負けずに行動する辻さんなども、将来から見たらその種の人、先駆者・開拓者の1人ということになるだろう。


 日本の民主主義はいつ始まったと言えるだろうか。民主主義・民主制の定義は一定ではない(民主主義 - Wikipedia)。だから日本の民主主義が始まったと言えそうなタイミングは複数ある。例えば1890年もその一つである。日本初の衆議院選挙が行われた年だ。しかし当時の選挙は制限選挙であり、直接国税15円以上を納める25歳以上の男性だけ、全人口のたった1%しか選挙権がなかった。果たしてそれは民主主義と言えるだろうか。民主主義の始まりには違いないが、今考えれば明らかな民主制とはとても言い難い。
 1897年に制限選挙の撤廃・普通選挙の実現を目指した普選運動が始まり(普選運動 - Wikipedia)、何回かの選挙権の条件緩和を経て、1925年に普通選挙法が成立(普通選挙 - Wikipedia)。この年も日本の民主主義が始まった年と言えるかもしれない。しかし、納税額の条件は撤廃されたものの、女性には選挙権が与えられなかった。これも今考えれば、明らかな万人の法の下の平等・民主制とは程遠い。
 日本で女性に参政権が認められたのは1945年で、男女20歳以上の者に選挙権が与えられた。執務提要 | 内閣府男女共同参画局には、

女性の参政権問題については、戦前から運動が続けられてきたが、戦後10日目には市川房枝他が戦後対策婦人委員会を結成し、同委員会は9月24日には政府・両院及び各政党に対する婦人参政権など5項目の要求を申し合わせた。10月11日にGHQが参政権の賦与による日本婦人の解放を含む5大改革を指示したが、10月9日に成立した幣原内 閣はGHQ指示の前日の10日には独自に普通選挙法(婦人参政権)改正を決定した。これは戦前からの婦人参政権運動の成果でもある。

とあり、女性の参政権はGHQの要求によるものではなく、あくまでも日本独自の成果だと言いたげだが、戦争直前・戦中の日本が民主的な状態とはかけ離れていたことは明白で、太平洋戦争の敗戦がなければ、日本における女性参政権は間違いなくこのタイミングでは実現していなかったはずだ。
 しかしそれでも、市川 房枝のような先駆者がいたことも、1945年に女性参政権を含む完全普通選挙が日本で実現し、民主主義・民主制のスタートラインに立つこととなった理由の一つだろう。市川 房枝ら先駆者がいなければ、翌1946年の第22回総選挙で女性議員39名が当選することにはならなかったはずだ。


 どんな分野においても先駆者や開拓者がいることは同じで、アメリカにおける黒人の権利も自然と認められたわけではなく、1860年に奴隷制反対を唱えたリンカンが大統領となったこと、1950年代の公民権運動と1964年の公民権法制定、1992年のロドニーキング事件とロス暴動、そしてまだ記憶に新しい昨年・2020年のBLM運動などを経て今日に至っている(アフリカ系アメリカ人公民権運動 - Wikipedia / ブラック・ライヴズ・マター - Wikipedia)。
 日本における普通選挙・女性参政権、そしてアメリカにおける黒人の権利正常化(地位向上という表現もあるが、黒人の権利を高めようというよりも、あるべき状態を回復するというのが実情であり、厳密には正常化である)でも先駆者や開拓者が道を切り開いてきたように、日本における女性の権利正常化に関しても、今の状況に至るまでには先駆者や開拓者の存在があった。しかし日本における女性の権利正常化は、アメリカにおける黒人及び有色人種の権利正常化と同様にまだまだ道半ばであり、辻さんのように、差別主義者に負けずに声を上げる人は、未来から見れば先駆者であり開拓者の一人だ。
 現在の日本の民主制はまだまだ完全とは言えないが、先人たちが切り開いてきたその恩恵を全ての有権者が享受している。差別を直接的にしたり、見て見ぬふりをする者になるか、明確な意思表示をしてノーを突き付ける先駆者になるか、どちらを選ぶかは現代を生きる全ての個人が選択することになるが、差別主義者に対するカウンター行動を示せば、男女平等に限らず、誰でも万人の権利正常化・万人の法の下の平等実現における先駆者になれる。自分の子や孫の世代に胸を張れるのはどちらだろうか。


 トップ画像は、Photo by Yomex Owo on Unsplash を使用した。

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