2021年の上海モーターショーが4/19に開幕した。2021年の上海モーターショーは、コロナ危機発生以降、初めて行われた世界的に主要なモーターショーである。
1990年代までアジア圏で最重要視されていたのは東京モーターショーだったが、日本市場の縮小と中国市場の拡大傾向によって、上海モーターショーへのシフトが00年代後半に始まり、リーマンショックが起こったことで、自動車業界もコスト削減を余儀なくされ、海外ブランドの上海シフトが決定的になり、それ以降は上海モーターショーがアジア最大規模になった、という経緯がある。
近年は海外ブランドのみならず国内の自動車メーカーも上海モーターショーの方を重視しているきらいがある。且つてはどのブランドにもあった国内専売モデルも、今では軽自動車を除けばトヨタにぐらいしかない。つまり、もう日本市場は日本の自動車メーカーにとっても最重要な存在ではなく、その結果東京モーターショーも重要度が著しく下がってしまった。その辺りの事情については、前回東京モーターショーが行われた2019年10月の投稿で詳しく書いている。
東京モーターショーは2年毎に開催されるイベントだが、前回も縮小傾向が酷かったのに、2021年の東京モーターショーは、コロナ危機の影響で中止されると、4/22に発表された(東京モーターショー、初の開催中止 「安全、安心な環境は困難」 - BBCニュース)。67年の歴史の中で初の中止なのだそうだ。
皮肉にも上海モーターショーの開催期間中の発表であり、その差が鮮明に感じられた。個人的には、コロナ危機による中止というのは口実で、日本の自動車メーカーも、実際のところはコロナ危機と関係なく、もう東京モーターショーをやりたくないんだろうと推測する。日本でイベントを開いても拡販の見込みは薄いし、海外ブランドが殆ど参加しないから国外からの注目も低いのに、そんなイベントに金を使いたくない、というのが本音なのではないだろうか。オンライン・バーチャルイベントも開催しない、という点にそれが強く滲む。
東京モーターショーの中止を発表したのは、主催団体である日本自動車工業会会長で、トヨタの社長でもある豊田 章男だった。中止の理由は前述のBBC記事によると「新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、来場者の安全確保が難しい」で、豊田は
多くのお客様に安全、安心な環境でモビリティーの魅力を体験していただくメインプログラムの提供が難しいと判断した
と説明している。記事には、3度目の緊急事態宣言が出されることも中止に影響した、という記述もある。
この話は全然しっくりこない。何故なら、第4波や緊急事態宣言などを理由に、10月の東京モーターショー中止がこの段階で発表されているのに、7月に開催予定の東京オリンピックは、今もまだ開催予定と言っているからだ。主催者が異なるのだから判断も異なっておかしくない、と思う人もいるのだろうが、トヨタは東京オリンピックの主要パートナーに名を連ね、人を集める懸念など批判も根強い聖火リレーで山車を走らせ、更には豊田 章男自身も聖火ランナーとして走っている。
スポンサー一覧
聖火リレー 大音量、マスクなしでDJ…福島の住民が憤ったスポンサーの「復興五輪」:東京新聞 TOKYO Web
2021年4月6日 聖火リレー 豊田社長メッセージ | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
前述の、東京モーターショーの中止発表に関するBBCの記事には、
こうした中、3カ月後に迫る東京五輪については現在も開催の方向で準備が進められている
という記述もあるが、自分の知る限り、日本のメディアで「なぜ東京モーターショーは感染拡大を理由に中止するのに、東京オリンピックは開催する気なのか」という異論が呈されていない。トヨタはオリンピックに限らずテレビや新聞社にとっても重要なスポンサー企業で、特にテレビは、24時間(は言い過ぎでも深夜帯を除けば)必ずどこかのチャンネルでトヨタのCMが流れている(トヨタがスポンサーをしている番組が放送されている)とまで言われてきた程だ。
豊田 章男、いやトヨタ全体としての姿勢に強い不信感を覚えるのは当然のこと、それを指摘しないメディアにも、そして未だにオリンピックをやつつもりでいる政府/与党/組織委などにも、全く納得がいかない。日本はそんな話が公然とまかり通ってしまう低レベルな国になってしまったな、と今日もまた再確認させられている。