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何事も下地が8割

 中古マンションを買ってDIYで内装を仕上げた友達がいる。面白がって何度か作業を手伝いに行ったことがあるのだが、同じ様に手伝いに来ていた本職の塗装工の人が、「内装は下地が8割」と言っていた。壁や天井を塗装で仕上げるにしろクロスで仕上げるにしろ、下地がいい加減だとそれが仕上げに響くのだ。


 壁紙用のクロスは大抵凸凹で厚みのある風合いだったり、比較的滑らかな表面でも細かな模様が施されたものが多い。それは下地作りにかかる手間を省く為なのだそうだ。クロスが凸凹した表面で厚みもあれば、多少下地に難があってもそれを吸収して目立たなくしてくれる。細かい模様にも同じ様な効果がある。薄くて単色のクロスもあるが、そのようなクロスを使う場合は下地がモロに響き、下地がいい加減だと表面にムラや影ができてしまうらしい。だから細心の注意を払って下地作りをしなくてはならないそうで、業者としてはあまり選んで欲しくないらしい。クロス仕上げではなく塗装で仕上げる場合は尚更で、その塗装工が言うには、だからクロス屋よりも塗装の方が概ね下地作りが上手いんだそうだ。

 高校生の頃、自分の原付バイクを自家塗装で2トーンカラーにしたことがある。当時はまだインターネットもなく当然YoutubeのDIYチャンネルなんて全く影も形もなかった。それまでに自分がやった事があった塗装はプラモデルの塗分けぐらいだ。だから完全に手探り独学で始めた。
 最初は洗車してマスキングしただけですぐにスプレー缶を吹いた。勿論ガンガン垂れる。色も載らず地の色が透ける。そこで初めて、ホームセンターの店員にどうやったらうまくいくのかを聞いた。何種類かの紙やすりで表面をざらつかせ、塗る部分の地の色が塗装に響かないようにサーフェーサーを塗り、その上に塗料を塗ることが必要だと知った。更に綺麗に仕上げようと思ったら、更にクリア塗装を重ね、コンパウンドで磨くことも必要だという話だったが、そこまではしなくとも、最低限下地は作らないと塗料代を無駄にするだけだと教えてもらった。

 この投稿を書くに当たって「下地が8割」で検索してみたら、そのようなDIY系のページよりも、化粧に関するページの方が圧倒的に多かった。何につけても下準備が大事ということには共通性があるんだろう。どんなに上手い人が歌っても、ギターを弾いても、ドラムやベースがしっかりしていないと台無しになるし、料理だって、材料選びや仕込みに手間を割けばその分上手くなる。


 昨日の投稿でも触れたように、明らかに新型ウイルスの4度目の感染拡大が起きているのに、日本では未だに充分な検査が行われていない。感染拡大を防ぐのに最も必要なのは感染者の隔離だ。感染者を隔離して感染症の拡大を抑制する為には、感染症の早期発見が不可欠で、その為には出来るだけ多くの人に高頻度で検査をする必要がある。それは、多くの国がそれをやっていることからも明らかだ。
 つまり、日本の新型ウイルス対策には、出来るだけ多くの人に高頻度で検査する、という下地がない。下地がない/悪いからいつまでも状況がよくならない。中には「欧米諸国は日本より検査が多いのに感染者も日本より多いじゃないか」のようなことを言って、広く検査しても無駄だからする必要性はないと主張する人もいる。でもそれは考え方が稚拙で、ではなぜ野球選手やサッカー選手らは定期的に検査を受けているのかを説明できない。日本は欧米に比べて感染者が少ないのだから、広範な検査をすれば、台湾やニュージーランドのように既に収束させられていたのに、やらないから収束させられていない、というのが妥当な認識だろう。状況の悪い方に合わせて考えるのは日本人の悪い癖だ。

 生活保護に関して、働いている人よりお金が貰えるのはおかしい、と言って嫌悪する人がいる。しかしそれも、生活保護は最低限度の生活をするのに必要な制度なので、働いても生活保護以下のお金しか貰えないことがおかしいし、生活保護以下のお金しか貰えないなら、堂々と生活保護を申請できる社会があるべき姿だ。
 女性が権利向上を訴える場合にも、「男も同じようなことを我慢している」のようなことを言って嫌悪する人がいるが、本来認められるはずの権利を蔑ろにされて我慢しているなら、女性に同じ我慢強いるのではなく、一緒に権利向上を訴えるべきなのだ。
 このようなことも、悪い方に合わせて考える日本人の悪い癖である。兎にも角にも、我慢すること耐え忍ぶことが美徳という、日本人の根底にある下地の悪さが、様々なことに深刻な影響を及ぼしていると言えるだろう。


 今の自民党政権の下地の悪さをも相当だ。仕上げをしたら下地の悪さが響いて、下地作りに失敗したことが発覚したら、手間でも仕上げも下地も一度削って、もう一度下地作りからやり直すべきなのだが、今の自民党政権は、仕上げた後に失敗が発覚しても(不祥事・政治判断ミスが露呈しても)、失敗を隠そうとそれを認めようとしない。失敗を認めずにその場だけを繕うから、下地の悪さは残り続け、いい加減な下地の上に何度仕上げをしても上手くいくはずなどない。その繰り返しが今の自民党政権だ。しばしば人気や知名度だけのタレント議員を公認する、そのような者、タレント議員以外でも全くの門外漢を政務官や大臣などにも平気で起用するあたりにも、自民党政権の下地の悪さが出ている。
 幸いなことに今年・2021年には衆院選がある。そろそろ日本の政治の下地、つまり与党を変えないと、少なくともまた次の衆院選まで失敗が続くことになるだろう。


 トップ画像は、Jarrett TilfordによるPixabayからの画像 を加工して使用した。

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