宗教の教えによって禁じられている行為、というのが、それぞれの宗教に存在する。例えば豚肉や牛肉を食べること、そもそも動物を食べること、お酒を飲むことなど、食に関連する規制は、伝統的な宗教の殆どにある。また、Googleで「宗教上の理由」で検索すると、輸血拒否に関するページがずらっと並ぶ。他にも、妊娠中絶を宗教上の理由で否定する声もまだまだ根強く残っている。
先週、MtoP教団という、飲み会の参加や残業などを強制された場合に「宗教上の理由でできません」と理由をつけて断ったり、ほかの新興宗教の勧誘を断る口実に使えるという、新しい宗教が話題になっていた。
MtoP教団は、「Twitterで手軽に入信!? 「宗教上の理由」を使うためのメディアアート宗教が話題に【やじうまWatch】 - INTERNET Watch」によると、アートディレクターのヒサノモトヒロ氏による一種のメディアアート作品なのだそうだ。教典にもそう明記されている。神さま (@free_lance_god) / Twitter をフォローするだけで誰でも入信できるようである。
因みに、前述のインターネットウォッチの記事にもあるが、2005年頃に話題になった、FSM/Pastafarianism、所謂 空飛ぶスパゲッティ・モンスター教 - Wikipedia にとても似た雰囲気が、この企画にはある。
キリスト教・聖書の教えの影響で、未だに進化論を信じない人が一定数いて、彼らは「この世界は神によって作られた」と今も信じている。2005年にアメリカ・カンザス州教育委員会で、公教育において進化論と共にインテリジェント・デザイン/ID説も教えなければならないという決議が、その種の人達が多数派を占めたことでなされた。
ID説とは、「この世界は神によって作られた」という話が政教分離に抵触しないようにする為などの理由で、その話から宗教色を削ぐ為に、神ではなく「知性ある何か」によって生命や宇宙が設計されたとする思想である。そこでボビー ヘンダーソンという人が、空飛ぶスパゲッティ・モンスターという創造主を新たに作り出し、「平等のため、スパゲッティ・モンスターが人類を作ったという説も学校教育で教えるべきだ」と主張して、ID説を教えなくてはならないという話の妥当性の低さを指摘し始めた。
これらのことが頭にあったからか、4/9-11にかけて行われたNHK世論調査の結果を見て、
日本人の約半分は、宗教上の理由で自民政権以外を支持できない
という強い思いが頭に浮かんできた。
菅内閣 「支持」44% 「不支持」38% NHK世論調査 | 選挙 | NHKニュース
各党の支持率は NHK世論調査 | 選挙 | NHKニュース
大半の人が新型ウイルスに不安を感じ、政府対応を評価せず、オリンピックも政府が言うような予定では開催すべきでない、若しくは中止すべきだと答えている(延期するが選択しにないのはおかしく、その分が観客の数を制限/無観客という選択肢に流れている恐れも充分にある)。なのに、政権の支持率は44%と不支持率を上回っており、政党支持率でも、その政府の母体である与党・自民党が37%と断トツに支持されている。
例えば、新型ウイルス関連が今最も優先度の高いことではないのなら、このような結果も不思議でないかもしれない。しかし誰がどう考えても、新型ウイルス対応は現在最も緊急性・優先度の高い問題だ。この傾向は、コロナ危機以前からずっと同じで、その時点で最も優先度/重要性の高い事案について政府を評価しないという調査結果と、政権支持/与党支持が一緒に示される状況がずっと続いている。
NHKは、政権に都合の悪いことを隠す捏造を平気でやるテレビ局なので(NHKが聖火リレー生配信で意図的に音声削除 「オリンピック反対」と沿道の声、直後に消えた30秒:東京新聞 TOKYO Web)、フジテレビと産経新聞同様に、NHKが調査結果に手を加えている恐れも考えられるが、しかし同じ傾向は、他のメディアの調査にも表れており、全く手心が加えられていないとは断定できないが、それでもこの傾向は実状とあまりにも乖離しているとは言えなそうである。
ということは、少なくとも日本人の約半分が論理的思考に著しく欠けるバカ、もしくは宗教上の理由で自民党政権以外を支持できない、ということなのだろう。
宗教上の理由によって自民政権を批判・指摘できない人達もいる。東京新聞は、
処理水「飲んでみて」と中国 麻生氏発言踏まえ放出非難:東京新聞 TOKYO Web
という記事を昨日掲載した。この記事は共同通信の配信記事である。記事の前提にあるのは、当然麻生のこの発言だ。
麻生財務相 “処理水”「飲んでもなんてことないそうですから」|TBS NEWS
この発言の現場にいた記者やメディアは、「では飲んでみて」と言わなかったこと、「中国がーと言っています」という体裁でしかそれを伝えられないことが恥ずかしくないのだろうか。
毎日新聞も、
東京五輪は「最悪のタイミング、一大感染イベント」 NYタイムズ | 毎日新聞
という記事を4/13に掲載している。なぜ自社でそのような記事を書けない、書かないのか。五輪パートナーだからか?パートナーでもそのような記事を書く、パートナーだと書けないならパートナー止める、という気概もなく、まるで他人事のように「米メディアがー」なんて記事を書き、掲載していて、よくも恥ずかしくないな、という感しかない。
日本のメディアも有権者も、どう考えても、自民党政権以外を支持できない、自民党政権の批判を禁じるという教えのある宗教の信者になっているとしか思えない。