安倍 晋三が、朝日新聞の報道について「なかなか、捏造体質は変わらないようだ」と、講演の中で述べた、という記事を毎日新聞が掲載した。これについて言いたい事が複数ある。
安倍氏が朝日新聞批判「捏造体質変わらないようだ」具体例示さず | 毎日新聞
見出しには「具体例示さず」、記事にも「「捏造」の具体例については言及しなかった」とあり、一応、記者は違和感を示すことで信憑性の低い主張だと言いたいのだろう、と推測することもできる。だがしかし、見出しにも記事本文にも、根拠不明の話で中傷にもあたりかねない、のような、明確に批判的な記述、若しくは異論を呈すような記述はない。
このような報道姿勢は本当に公平公正だろうか。信憑性の低い話なら報道する価値はない。安倍が信憑性の低い話をしていることを報じるなら、そう明確に書くのが公平公正な報道だろう。「「捏造」の具体例については言及しなかった」という表現があっても、世の中には「具体例を示すまでもない程に捏造体質なんだろう」のような、非論理的な解釈をする人も少なからずいる。事案の評価を殆どせずにこのような記事を書くことは、安倍の根拠のない主張を流布し、捏造体質という中傷に加担している側面が少なからずあるとも言えるだろう。
勿論、読み手にも事案を自分の頭で考えて咀嚼する責任はある。しかし、報道機関を自称するなら、書く側にだって当然責任は生じる。そもそも、
安倍晋三前首相は22日、東京都内で行われた講演で、朝日新聞の報道について「なかなか、捏造(ねつぞう)体質は変わらないようだ」と批判した。「捏造」の具体例については言及しなかった。
とあるが、安倍の根拠なき主張は批判に当たるのか。記事だけでなく公式Twitterアカウントでこの記事を紹介する際にも、毎日新聞は「批判」としている。
安倍晋三前首相は東京都内で行われた講演で、朝日新聞の報道について「なかなか、捏造(ねつぞう)体質は変わらないようだ」と批判しました。https://t.co/YSxV0whtAp
— 毎日新聞 (@mainichi) April 22, 2021
つまり、根拠も示さずに他者を「捏造体質」呼ばわりすることは、毎日新聞にとっては中傷ではなく批判ということなのだろう。そんな認識で何が報道か。何が公平公正か。
更に言えば、安倍の説明に関して「前首相」という肩書だけで果たして妥当だろうか、日本人の多くは権威主義的であり、その種の肩書にめっぽう弱く、肩書だけで物事を判断してしまう悪い癖がある。
安倍は昨年9月に、持病を理由に「正常な判断が出来ない恐れがある」として首相を辞した人物だ(病気が理由で正しい政治判断できないと首相 | 共同通信)。また、首相在任中に国会で100回以上も虚偽答弁を繰り返した人物でもある(安倍前首相の「虚偽答弁」は118回 桜を見る会前夜祭巡り衆参両院で 立民が衆院調査局に調査依頼し判明:東京新聞 TOKYO Web)。安倍の枕詞には、
- 正常な判断が出来ないと首相を辞した
- 在任中に100回以上の虚偽答弁を繰り返した
が必要だろう。特にこの記事は、根拠なく朝日新聞を捏造体質と言っている、という内容なので、特に後者はマストだ。
そのような情報を入れない記事が、公平公正だとは全く言い難い。○○が□□しました、△△と言いました、とだけしか書かない記事は、ハッキリ言って報道ではない。それは政治宣伝にすらなり得る。それを分かっていないなら報道機関としての資質に著しく欠けている。分かっていてやっているなら悪質だ。