トップ画像に用いたのは、実はヒレカツの写真ではなくメンチカツの写真だ。ヒレカツ定食のメニュー写真にメンチカツの写真が使われていたら、メンチカツをヒレカツと偽っているのだから、それは間違いなく嘘である。但し、注目して実際に出てくるのがヒレカツ定食であれば、9割の人は文句を言わないだろう。
だがしかし、この画像を見てそれを注文し、メンチカツが出てきて、写真ではなく「ヒレカツ定食」という文字情報の方が間違いだったと言われたら、多分9割以上の人は怒るはずだ。これはまさに羊頭狗肉、看板に偽りあり、というやつだからだ。
SNS等で、新聞や通信社記事の見出しのおかしさを指摘すると、「本文も読まずに批判するな」とか、「本文を読めばそれ程おかしな記事ではないと分かるはずだ」などの反論がしばしば返ってくる。自分以外のそのような指摘にも、同種の反論がなされているのをよく見る。しかも、反論しているのがメディア側の人間であることが結構多い。
これをヒレカツ定食の話に当てはめてみると、その異様さが際立つ。どんなにメンチカツの味がよかろうが、メニューにそれをヒレカツとして掲載することは許されない。つまり記事内容がどんなによかろうが、記事本文にそれ程おかしな点がなくても、だから見出しがおかしくてもOKとは絶対にならない。見出しのおかしさに対する指摘に対して、本文を読め云々と言ってくることは、ヒレカツ定食を注文した客が「これはメンチカツでヒレカツじゃない」と指摘したのに対して、店側が「兎に角食べてみて、美味しいから」と言うようなものだ。
それがまともな話じゃないことは小学生でもわかるだろう。にも関わらず、記事の見出しのおかしさの指摘に関しては、平気でそのようなことを言う人がいる。しかも店側、若しくは同業者にもそんな人が大勢いる。
以前から何度も書いてきたことだが、電車の中吊りしか読まない人の方が、週刊誌等を実際に買って読む人よりも遥かに多い。それと同様に、新聞だって全ての記事を一言一句漏らさずに読む者なんて殆どいない。つまり見出ししか読まない人の方が、記事本文をちゃんと読む人よりも遥かに多い。それは、ネットニュースサイトやアプリ、SNSが普及して更に加速しているのではないか。
ツイッターで万単位のフォローをしている人もいるが、自分はツイートを追えないような人数をフォローしても仕方ないと思っている。本来フォローとは、その人の発信に興味があるからするものであり、ツイートを追えないほどフォローを増やしても意味がないと考えているからだ。それでも、フォローしている人のツイ―トは辛うじて全部追うことが出来ても、引用リツイートされる記事やブログ投稿の全てに目を通すことは不可能である。見出ししか読まない、というか時間等の制約上読めない記事の方が確実に多い。
だから本文内容と乖離した見出しや、不正確な見出しを、特に大手と言われるようなメディアがつけることの影響は大きく、いくら本文にはおかしいところが概ねなかったとしても、それで許されるものではない。本文云々なんてのは論点ずらしにほかならない。「批判するならまず本文を読め」という話は何もおかしくはない。しかし、本文を読まなければできないであろう指摘に対しても、本文を読んでいない指摘/批判だ、というスタンスでの反論されるケースも決して少なくない。それでは、批判を全く受け止める気がない政府や与党の幹部たちと何も変わらないではないか。
そんなことが少なくないところにもメディア全体が信用を失う理由はあるが、他にも理由は複数ある。例えば、
五輪スポンサーに雁首揃える大新聞6社に「開催賛成か」直撃https://t.co/1vMEkbD4zq
— 毛ば部とる子 (@kaori_sakai) May 22, 2021
⇒よく聞いた。
回答を控えるマスコミが、回答を控える政治家から回答を引き出せるはずがない。 pic.twitter.com/vH83mb1Nho
武漢ウイルスという呼称にはあんなに慎重だったメディアが、なぜか平気でイギリス株とかインド株とか、使ってるのは、本当にバカになったんだな、という感しかない。
— Tulsa Birbhum (独見と偏談) (@74120_731241) May 24, 2021
インド政府が新型コロナ「インド株」に関するコンテンツを全部削除するようSNSに要請 - GIGAZINE https://t.co/xyulh6ttDM
このようなことも、メディアが信用を失う要因だ。
マスゴミという揶揄の仕方は嫌いだが、そう言われても仕方がない状態を自ら作っているのが今のメディア各社/各位だ。今、官邸等の記者クラブ所属メディア、その記者の大半が、首相や大臣などの会見やぶら下がり、インタビューなどで、聞かれたことに答えない姿勢を、唯唯諾々と許し、批判もせずにただただそれを広報するのも、この低レベルなら当然なのかもしれない。