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憲法改"正"という羊頭狗肉

 これは羊頭狗肉を分かりやすく表現する為に誇張して作ったイメージである。こんなにも分かりやすい羊頭狗肉はそうそうない。写真のBMW 5シリーズは同車種の第1世代で、1972年から81年にかけて生産されたモデルなので、純正ナビやカメラなんてあるはずない。


 古い車をレストアする際に、高級車を新車で買える以上の予算つぎ込んで、近年のモデルの中身に入れ替え、見た目は趣がある古いモデルのまま、現在の交通事情に合わせて中身をアップデートする手法が全くないわけではない。しかし、その手のカスタマイズを行う場合、ボロボロの外見をそのままにすることはほぼない。
 比較的状態の良い古い車の場合、積もった埃もそのクルマの歴史と捉える場合もあり、埃埃を払うと100万円単位で価値が下がるなんて話もあるが、その場合は全てに手を入れずありのままを保つので、トップ画像のような状態でアダプティブクルーズコントロールや追突軽減システムが付いているなんてのはあり得ない。
 クルマという一般人にとっては家の次に高額な買い物をする際には、大損しないように少なからず情報を集めるもので、大抵はその種の広告の胡散臭さに気付けるだろう。だが、ここまであからさまな羊頭狗肉には中々引っかかる人はいないだろうが、羊頭狗肉は大抵分かりにくい程度に調整され、巧妙に優良誤認を誘おうとする優良誤認とは - コトバンク)。自動車で言えば、見た目だけをピカピカにしておいて走行距離を改竄するとか、事故車なのに修復歴なしと表記するとか、メーター改竄車なのにそれを積極的に説明しない等の手法で、客を騙し車両価格をつり上げようとする。


 今日、5/3は憲法記念日だ。1947年5/3に日本国憲法が施行されたことにちなんで、1948年から祝日になった。自分が子どもの頃は、憲法記念日に憲法を意識するようなことはなかった。今も政治や社会問題に無関心であれば、憲法記念日に憲法を意識するようなことはないのかもしれない。ただ、少なくとも現在の自民党政権が成立した2012年以降は、政権と与党が改憲を進めようとしていることもあって、憲法記念日の前後には、憲法を意識させる調査や講演等が多い。なので、少しでも政治や社会問題に興味を持っていれば、5/3は憲法について考えさせられることになる。

 5/3の前後には憲法を意識させる調査が行われる、と書いたが、今年は既に次のような記事がある。

 最早報道機関の調査も信用ならないという感しかない。何故なら、何をどう変えるのかを提示せずに「改憲は必要か」と聞いているのだから。何をどう変えるのかを明示せずに改憲必要性を調査することにどんな意味があるのか。そんなことを大手と言われるメディアがこぞってやっているのだ。
 何に関して変えるのかにかかわらず「変えた方がいい」という回答を全て合算する調査や、その結果を見出し化することは、改憲勢力に与する扇動とすら言えるのではないか。このような調査を行うこと、その結果を報じることは、改憲勢力に有利に働く羊頭狗肉にほかならない。

 現在、改憲勢力で一番規模が大きいのは政府と与党、つまり自民党である。それらが一体どんな改憲を目指しているのか、をちゃんと認識した上で「改憲が必要」と言っている人はどの程度いるだろうか。ただなんとなくフワっと「改憲が必要」と言っている人がかなり多いのではないかと感じる。

というツイートから続くスレッドに、自民党、つまり現在の改憲勢力がどんな風に憲法を変えようとしているのかが、とても分かりやすくまとめられている。ツイッターだと少し見づらいので、説明画像を引用させてもらうことにした。

 これを見れば分かるように、現在の改憲勢力が、つまり自民党政権が進めようとしている改憲は、国民の権利を縮小し、国家権力を増大させようという方向性だ。このような内容を把握していたら、それを明示した上で「自民党の改憲案に賛成か」という設問を前提に調査をしたら、「改憲が必要」と答える人は、果たして「必要ない」と答える人を上回るだろうか。上回る結果が得られるとは到底思えない。


 漫画家のぼうご なつこが憲法記念日にちなんでこんな漫画をツイートしている。

ここに描かれているように、憲法は権力を縛る為のものだ。それを権力側が主導して変えようなんてのがそもそもおかしい。しかも前段で示したように、改憲によって権力を縛る規定を緩め、逆に国民を縛ろうとしているのが、現在の改憲勢力である。
 例えば万引き犯が、「万引きが違法であるために、万引きする権利が侵害されている」「万引きしても罪に問われないように刑法を改正すべきだ!」と言っていたとして、一体誰が賛同するだろうか。いくら「改正」という言葉を用いても、それは内容とはかけ離れた羊頭狗肉であり、多くの人にとって改正ではなく「改悪」であると、誰もが容易に認識できるだろう。
 現在の改憲勢力、つまり現政権や与党 自民党が「憲法改正」と言っているのもそれとかなり似ている。権力を行使する側が「憲法に縛られたくないから変えたい!」と言っている。それを「憲法改"正"」という表現を用いて、何か素晴らしいことを実現しようとしている。反対する側はそれを邪魔する抵抗勢力である、という印象を演出している。そして、何をどう変えようとしているかを前面に出すと、前述したように支持を得られないことを分かっているから、何をどう変えるかではなく、変えるべきか変えないべきかを争点とし、変えないのは進歩を拒むことかのように演出し、支持を喚起しようとしてる。変化は必ずしも進歩とは限らない。例えば、戦前、ナチによってドイツが変質してしまったように、変化が後退になる場合も間違いなくあるのに。


 つまり現在の改憲勢力は、見た目だけピカピカにしたポンコツ車を羊頭狗肉の看板で売ろうとする中古車屋のようなものだ。そして、大手メディアの多くが、そんな中古車屋の車両を掲載し大々的に宣伝する中古車情報サイトのようなものである。


 トップ画像にはPublicDomainPicturesによるPixabayからの画像 を使用した。

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