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だろう運転 な感染症対策

 運転免許を持っている人なら だろう運転かもしれない運転 の話は知っているはずだ。教習所でそれについて習い、運転免許の更新時にも大抵それについて触れられる。例えば、見通しの悪い交差点にさしかかった際に、死角から何も出てこないだろう、と考えて徐行や一時停止を怠るのが だろう運転 で、何か飛び出してくるかもしれない、と考えて用心して準備するのが かもしれない運転 だ。


 個人的には、何も出てこないかもしれない、何かが飛び出してくるだろう、でも成立してしまうので、だろう運転とかもしれない運転という話では、ちょっと分かり難いと感じるのだが、一般的には、だろう運転とは楽観的な予測に基づく運転態度を意味し、かもしれない運転とは慎重な予測に基づく運転態度を示すことになっている(だろう運転 - Wikipedia)。

 同じ様な考え方は災害対策でも通用する。何十年に一回起きるかどうかの地震に備えるのは果たして無駄か。そんな地震はまだ起きないだろう、と考えて対策を怠るのと、もしかしたら明日大きな地震が起きるかもしれない、と考えて対策をするのは、どちらが賢いだろうか。
 また、最近は豪雨や大雪が予想される場合、鉄道等の公共交通機関が事前に計画的な運休を行うようになったが、それが一般的になる以前、その是非について、予想通りの豪雨や大雪にならなかった場合、運休は無駄になる、のような主張も多かった。天気予報は百発百中ではないが、地震予測よりは間違いなく精度が高い。起きうる最悪の事態に備えて事前に準備することは、万が一予想が外れたとしても、それは決して無駄とは言えないだろう。それを無駄と言うのは、病気になる前に死ぬかもしれないのに保険に入るのは無駄、みたいな話だ。勿論過剰に保険をかけるのは無駄かもしれないが、0か100か、みたいな話は短絡的な思考でしかない。
 転ばぬ先の杖、という慣用句がそれをよく示している。パンクするまでタイヤをすり減らす方が、1本のタイヤだけで考えたら最大限にコストの対価を得たことになるだろう。だが、パンクによってホイールを壊したり、事故を起こして自分のクルマや人のクルマに損害を出す恐れを勘案すれば、若しくは最悪人身事故を起こして他人をケガさせたり死なせたりする恐れもあり、すり減ったタイヤはパンクする前に交換する方が賢い。最悪に備えるのは、最悪にならなかったとしても決して無駄ではない。


 だろう運転のことを思い出したのは、このツイートを見たからだ。現政権の新型コロナウイルス対応はずっと だろう運転 だ。悪名高き所謂アベノマスク配布は、「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」という安易な発想で行われたそうだし、昨年、副首相の麻生が「どのみち私はちょっと偏見があるので恐縮だが、これは風邪だから、はやり病だから」「この種の話は6月に何となく収まるのかなと思わないでもない」などと楽観的な見通しを示した。だが、寧ろそれ以来日本の状況は悪化の一途を辿っている。そして、今も政府お抱え専門家集団の長を務めている尾身は、昨年7月に「旅行自体が感染を起こすことはないですから。もしそれが起きていれば日本中は感染者だらけ」と言って、GOTOトラベルなる旅行促進政策にお墨付きを与えたが、それをやった後、日本の感染者は激増した。

 昨年3月、予定通りにオリンピックをやるやらない、とすったもんだしている中で、開催強行派は少しでも感染者数を少なく見せたかったのか、積極的はPCR検査に対する大反対キャンペーンが行われた。他の国では積極的な検査によって感染者発見と隔離に努めるのがセオリーになっていたのに。日本ではそのまま積極的検査は行われず、つまり他国に比べて検査数が著しく少ない為、また、濃厚接触者の定義も段階的に狭められている為、発表される感染者数の信憑性も当然低い。昨年の4月の時点で既にそれは指摘されていたが、日本の検査数は今も飛びぬけて少なく、発表される数字の信頼性が低い、無い、という評価も少なくない。

 本来、オリンピックを今夏に開催したかったのなら、昨年のうちに万全の対策を行い、開催できる状況を整えるべきだったのに、現政権は楽観的な観測に基づいて、充分な準備をやらなかった。つまり、日本の新型コロナウイルス対策、オリンピック開催強行は、オリンピック開催しても感染拡大はしないだろう、というだろう運転にほかならない。


 菅政権は、基本的に安倍政権を踏襲すると公言して成立した。安倍政権の目玉政策は、明らかに失敗だったアベノミクスという経済政策で、現政権も政府内では財務・経産官僚が幅を利かせていると言う。
 投資関連用語に リスクヘッジ というのがある。例えば、資産運用において、通貨価値の下落等による資産価値が一方的に下落することを最小限に食い止めるために、円建てだけでなくドルでも資産を運用するなど、起こりうるリスクを予測して、何か一つに全額ベットするのではなく、別のリスク回避策を準備し、最悪の事態を招かぬように備えることを指す。

 これも間違いなく だろう運転ではなくかもしれない運転を、という考え方だ。経済に長けた官僚が幅を利かせているそうなのに、なぜ世界的なセオリーである積極的検査を行わず、ワクチン接種に全額ベットするような方向に進み、更に世界的に見てワクチン政策にも失敗するという状況になっているのだろう。

「五輪とワクチン」で夏の賭け 首相、期待と焦り 通常国会閉幕 | 毎日新聞



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