スキップしてメイン コンテンツに移動
 

美辞麗句には反吐がでる

 美辞麗句って、字面的に暴走族が好みそうな四字熟語だな、と思い、実際にそんな名前のチームや、特攻服や卒ランなどに刺繍している例はあるのか調べてみたが、流石に使う四字熟語の意味は調べるのか、ざっくりと検索した限りではあるが、そのような例は見当たらなかった。


 美辞麗句とは、その字面同様に美しい言葉や文句を指す。この四字熟語は2つの単語「美辞」と「麗句」からなっており、どちらも共に美しい言葉の意ではあるのだが、前者には技巧を凝らした表現の意、後者には調子のいい文句という意味もある。美辞麗句という四字熟語にしても、単に美しい言葉という意味ではなく、その中でも特に、うわべだけを飾りたてた文句、のニュアンスの方が強い。


 東京新聞がこんな記事を掲載していた。

山県亮太「一生懸命は美しい」 100分の1の世界:東京新聞 TOKYO Web

 陸上選手 山県 亮太が100m走で9秒95の日本新記録を出した、ということに関する記事の1つだ(山県亮太が9秒95の日本新「出せて良かった」 サニブラウンの記録更新:東京新聞 TOKYO Web)。個人的には、所謂スポ根的なノリが好きではなく、過剰にスポーツを美化する表現をよく思えない。その傾向丸出しのこの記事も、個人的には全く興味が湧かない。興味が湧かないどころか気持ち悪いとすら思える。しかし、それはあくまでも個人の好みの問題なので、このような記事や表現を全否定するつもりもなく、好きな人が好きなように書いたり読んだりすればいい、くらいの認識だった。

 少なくとも去年頃までは。


 しかし今は、このような記事を好きな人が好きなように書いたり読んだりすることにすら違和感を覚える。それは勿論、東京オリンピックの所為だ。国や都、日本の組織委やJOC、そしてIOCが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中で、感染症対応よりも五輪開催を優先し、その影響によって日本の感染症対応が間違いなく阻害されている。
 開催強行派は恐らく、開催しても大したことは起きないとたかをくくっていて、そして、もし何か起きても矮小化、隠蔽する気満々で開催をゴリ押ししているんだろうが、本当に何も起きなかったとしても、開催ゴリ押しの余波で対策が後回しにされ、ワクチンも五輪優先にされ、つまり開催前から感染症対策の邪魔している。だから開催に反対なのだ。
 日本政府が昨年Gotoナンチャラみたいなことをやらずに、積極的な検査を実施し、開催しても問題ない環境を整えていたのなら、開催に反対することはなかったかもしれない。いや、そもそも新型コロナ危機以前から、コンパクト五輪と言いつつ、史上最高に膨れ上がった予算の問題、アンダーコントロールと言って承知した全く嘘だらけの復興五輪、オカルトレベルの酷暑対策など、コロナ危機でなくとも開催に賛成できる要素は全くなかった。

 そんな中で、一部の五輪候補、代表選手らが、「どうやったらできるか考えろ」とか、逼迫する医療現場から悲鳴が上がっているにもかかわらず、開催に違和感すら示さず「温かく見守れ」なんて言っているのを見たら、オリンピックどころか、オリンピック競技種目になっているスポーツ全般に対して、全くいいイメージを持てなくなった。

 だから、一生懸命は美しい、なんて言葉は不適切である、とすら感じる

そうやって美化した裏には、スポーツ特有の軍隊的ないじめや差別、強制、そして派閥などを作って行う勢力争いや利権に絡んだ不正、更には政治利用が隠れているじゃないか、という感しかない。この数年だけでも、一体どれだけの競技でパワハラ騒動や不正疑惑があっただろうか。枚挙に暇がないと言っても過言ではない。そのような汚いものを隠す為に、情緒的な美辞麗句を使っているとしか感じられなくなってしまった。


 敢えて言う。東京新聞の「山県亮太「一生懸命は美しい」 100分の1の世界」という記事には反吐が出る。メディア、特に大新聞は過剰に美化せずに冷静な記事を書いて欲しい。その手の表現はスポーツ紙にでも任せておけばいい。またこの記事だけでなく、「安心安全」「世界が一つに」「全員団結」「スポーツの力」「一生懸命は美しい」などの、汚いものを隠す為の美辞麗句には吐き気を覚える。


このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。