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何について言及を避けるのか、も重要

 今年は衆院選の年だ。戦後約70年間、どの政権も一貫して集団的自衛権を日本国憲法は認めていないとしてきたのに、その解釈を内閣だけで勝手に変えた安倍政権のような、超強引な法解釈変更のようなことを現政府と与党がやらない限り、今年・2021年に衆院選が行われる。その衆院選の前哨戦とも言われているのが、7月に行われる都議選だ。


 都議会自民党は6/8に、その都議選に向けた公約を発表した。新型コロナウイルスによって疲弊する経済への対応を主な柱としたが、オリンピック開催の是非には触れなかった

自民党の都議選公約 五輪開催に触れず「前に進めていく責任」:東京新聞 TOKYO Web

 現在の都政与党は都民ファーストの会である。現在は代表を退いているものの、間違いなく都知事 小池 百合子を中心とした勢力だ。前任 舛添 要一の不祥事を受けて行われた2016都知事選で小池が当選し、その勢いを背景に2017都議選で大勝し与党となった。しかし、当初透明性の高い都政実現を掲げていたのに、都議選で大勝するや否や、小池は実質的にその方針を翻し、都民ファーストの会もその方向性に異を唱えず、都民ファーストという党名は有名無実化している。
 都議会における最大与党は自民党である。どう考えても、現在都民の最大の関心事はオリンピック開催の是非だろうに、都政与党も最大野党も、それを争点化する気がない。争点化する気がないというか、声高に「開催を実現」と言えば、選挙にマイナスに働くことが分かっているから、それには積極的に触れないのだ。いや、できる限りその話題を遠ざけるのだ。

 これと同じ様なことが以前にもあった。2018沖縄知事選である。オール沖縄が推す玉城 デニーと、自民/公明/維新等が推す佐喜眞 淳の一騎打ちだったのだが、玉城が明確に「普天間基地の辺野古移転反対」を掲げたのに対して、佐喜眞は基地問題について沈黙。自公維が推す佐喜眞は辺野古移設容認だったが、それに触れることを避けた。基地問題は間違いなく沖縄県民にとって最大の争点なのに。声高に容認と言えば、選挙にマイナスになると分かっていたからだろう。
 これは、この時の知事選に限った話ではなく、沖縄における自公維系候補全般がそんな姿勢である。選挙戦略と言えば選挙戦略であり、決してやってはいけない行為とまでは言えないものの、どう考えても姑息だ。それらの候補が当選すれば、支持を得たと言わんばかりに、基地移設を推進することは目に見えている。なのに選挙ではそれを隠す。それは間違いなく誠実ではない。いや不誠実でありアンフェアだ。厳しく言えば、有権者を欺いているとも言える。

 また、自民党は国政選挙でも同じ様なことをやる。常日頃から 改憲!憲法改正!と言っているくせに、選挙が近づくと途端に憲法とは言わなくなる。これも、選挙の時だけ姑息に改憲を言わなくなる、と言える、不誠実でありアンフェアな姿勢でしかない。
 しかし残念なことに、ある程度政治に興味のある人はそれを分かっていても、無頓着な人には効果があるようで、だからもう8年も自民政権が続いてしまっている。SNSを見ていると、「政府や自民は有権者をバカにしている」という話をよく見かけるが、バカにされても仕方がないバカが、日本の有権者には決して少なくないのだろう。

カナダで車突っ込み一家4人死亡 反ムスリムのヘイトか:朝日新聞デジタル

 この記事に「現地のイスラム教徒団体は7日、「これはテロ攻撃だ」と非難する声明を発表」という表現がある。もし突っ込んだのがイスラム教徒で、突っ込まれた側が白人だったら、間違いなくテロに関する言及が行われているはずだ。イスラム教徒が車で突っ込んだり、無差別殺人をやるとテロの恐れに言及し、逆だと言及しないのなら、その背景には間違いなく偏見や差別的な認識がある。だから、当局やメディアがこの件に関して積極的にテロの恐れに言及しないのなら明らかにおかしい、と思った。
 しかし先ほど東京新聞の記事「散歩中のイスラム教徒一家に車が突っ込み、4人が死亡 カナダ首相「憎悪によるテロ攻撃」:東京新聞 TOKYO Web」を見て、無差別殺人事件に対してホッとすると言うのも変だが、カナダの首相がフェアな認識を持っていることにホッとさせられた。だが、日本のメディアはどうか。数年前にフランスなど欧州諸国で、イスラム教原理主義者によって同じ様な事件が複数起きた際は、かなり大々的に取り上げ、テロ行為と関連付けて報じていたのに、この件や、この件に限らず、イスラム教徒を標的にした憎悪犯罪が起きても、それと同じ様には取り上げないし、テロの恐れにも積極的には言及しない。


 政治家やメディアが何を言っているのか、だけでなく、それと同じかそれ以上に、何を言わないのか、何について言及を避けるのか、スルーするのか、も重要である。言葉の字面だけを追っていると、そのようなことを見落としかねない。



 トップ画像には、知らねっす 3 – イラストストック「時短だ」 と、抗議 男 女性 - Pixabayの無料ベクター素材 を使用した。

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