お前の目は節穴か、という言い回しがある。節穴とは、木の幹から枝が抜け落ちた後に出来る穴のことだ。板に加工した際にも抜け節になることがあって、大工や家具職人にとって、それは埋めなければならないものであり、概ねネガティブなものと捉えられる。そんなニュアンスが転じたのか、節穴は目と同じく丸いからか、洞察力に欠ける様子のことも節穴と表現する場合がある。
日本の状況を客観的に見れば、コロナによる五輪「中止」はあり得ない|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
これは、ニューズウィーク日本版が7/14に掲載した、エコノミスト(日本の雑誌ではなく英国の。)元東京支局長という肩書きを持つ、ビル エモットなる人物が書いた記事である。
彼がどのような想い/思惑でこの記事を書いたのかは定かでないが、エコノミスト=経済学者・倹約家と言うよりも、オリンピック開催の経済面だけに過度に注目するエコノミックアニマル、経済優先・資本原理主義に陥った人だ、という感しかない。
ハッキリ言って彼の目は節穴である。彼の主張を要約すれば、日本政府が発表する新型コロナウイルス感染状況は、状況が深刻なインドやブラジル、そして欧米諸国と比べても軽微であり、そのような状況は緊急事態とすら言えず、その程度の状況でオリンピック中止などあり得ない、である。病床に関する懸念も大袈裟で、自宅療養中に死亡する例もあるが、それはあくまでも例外なので、考慮する程ではない、である。
ツッコミどころが複数ある。まず言えるのは、日本では感染拡大が始まった当初から、政府と忖度専門家らによってPCR検査不要論が声高に叫ばれた。その影響は大きく、今でも諸外国に比べて検査数が圧倒的に少ない。検査数が極端に少ないのだから感染者数が少ないのも当然で、当局の発表など全くあてにならない。それどころか、濃厚接触者の定義も曖昧、一定でなく、また、明らかに諸外国と比べて狭く、その面から見ても明らかにに検査抑制がなされている。また、自宅療養中に死亡する者は例外と言うが、入院先が見つからずにたらい回しにされる例が複数報道され、SNSにも悲鳴のような投稿が幾つも見られる。
こんなにも簡単に不備を指摘できる見解の、一体どこが客観的なのか。そんなのは筆者の恣意的な主観でしかない。自分の主観を客観と表現するのは傲慢である。この記事を書いたビル エモットは当然のこと、「日本の状況を客観的に見れば、コロナによる五輪「中止」はあり得ない」という見出しで記事を掲載できる、ニューズウィーク日本版の目も節穴である、洞察力に著しく欠けている、と言わざるを得ない。
1週間前に産経新聞が、自民党岸田派と石破派が7/8に、都内で政治資金パーティーを開いた、という記事を掲載していた。
岸田派、結束維持に腐心 石破派は反転策見えず - 産経ニュース
市民には過密状態をつくるな、ソーシャルディスタンスを保持しろ、テレワークをやれ、飲食店は時短営業しろ、と言って、罰則や制裁すらチラつかせるくせに、一体何をやっているのか、与党がこれで、政府がまん延防止措置だとか緊急事態だとか言って、誰が納得するのか、としか見えなかったが、添付されていた岸田派パーティーの様子の写真は、そんな想いに更に拍車をかけた。
この状況で政治家が大規模なパーティーを開くだけでも強い違和を感じるのに、写っていたのは、誰もマスクをせずソーシャルディスタンスなども一切意識していない状況で、議員らがエイエイオーとやっている姿だった。
これを見て自分はこう思った。
ここで集団感染が起きても、隠蔽するからへっちゃら、って感じなんだろうね。としか思えない自民党のパーティーの様子。市民には自粛強制、圧力までかけてるのに何やってんの?
1週間前に懸念した通り、岸田派関係者から5人の感染者が出る事態になったと毎日新聞が昨日報じた。
自民党岸田派秘書5人が新型コロナ感染 8日に政治資金パーティー | 毎日新聞
見出しからも分かるように、毎日新聞のこの記事では、7/8のパーティーで集団感染が発生した懸念を示している。個人的にはもっとつっこんだ取材を行い、詳細に分析をして記事化して欲しいと感じるが、昨今の大手メディアの中では、これでもまだマシな方だ。何故なら、岸田派、自民党の隠蔽工作に加担するメディアもあるから。
岸田派秘書ら6人感染 パーティーとの関係認定なし|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト
岸田派は8日に都内のホテルで政治資金パーティーを開いていましたが、保健所によりますと、感染経路は不明で、パーティーとの因果関係は認められていないということです。
感染経路不明なのに、なぜ「パーティーと関連なし」、パーティーと因果関係がないと断定できるのか。全く理解に苦しむ。記事を書いた記者も、それを掲載するテレビ朝日も、全く低レベルというか、隠蔽に加担しているとしか言えない。
TBSはこの件に関して次のように伝えている。
自民・岸田派秘書ら6人がコロナ感染、岸田氏も「濃厚接触者」認定で2週間隔離|TBS NEWS
この岸田派は今月8日、都内で政治資金パーティーを開いていて、このうち5人はパーティー会場のホテルに出入りしていたということですが、感染との因果関係は分かっていません。派閥幹部は「日頃の人間関係の中で感染したとみられ、パーティーによりクラスター(=集団感染)が発生したとはみていない」とコメントしています。
「自民 岸田派 秘書ら6人コロナ感染 岸田前政調会長は自宅待機 | 新型コロナウイルス | NHKニュース」にも同じく、派閥幹部が「パーティーによって広がったわけではない」と言っている、という記述がある、というか、そう言い張っているとは書かれているが、それを裏付ける具体的根拠は示されていない。保健所云々という話は、これらの中ではテレビ朝日の記事にしかないので、テレビ朝日だけが保健所に取材を行っている可能性もあるが、それでも、因果関係が定かでない、と、関連はない、は似て非なる話であり、岸田派幹部が具体的根拠もなく、関連はないと言い張っていることを加味して考えれば、テレビ朝日は隠蔽工作、優しく言っても印象操作に加担していると言える。
そのような意味で、テレビ朝日の記事は、というかテレビ朝日の目は節穴であると言える。しかし、今回はたまたまテレビ朝日がそのような記事を載せただけであり、毎日新聞やTBS、NHKがそんな記事を書いて、テレビ朝日は妥当な記事を書くこともある。つまり、日本のメディア、少なくとも政治部の目は概ね節穴だ。著しく洞察力に欠けている記事を平気で書くし、掲載する。
トップ画像は、AGA・薄毛治療の病院 銀座総合美容クリニック テレビCM 「顔見ても?」編 ~AGA相談の銀クリ~ - YouTube の1カットを加工して作成したが、当該画像は、当該CMやその広告主の目が節穴であるということを意図するものではない。