オリンピックについては、この状況でまだやる気でいるのか、という気分で、大会関係者や政府だけでなく、スポンサー企業は勿論、この状況で参加するという選手やボランティアなども含めて、開催に関わる全ての人たちが、感染拡大に加担し、もう既に1年以上も過酷な環境を強いられている医療関係者、そして自粛を余儀なくされている人たち、もう廃業寸前の状況にある人などへ大きな不利益を与える側としか思えず、強い嫌悪の情を抱いている。
開催自体がアウトだと思っているが、やるにしたって無観客なんてのは当然なのに、未だに観客を入れる入れないなんて言っているのが信じられない。そして感染拡大に配慮して開催するなら、極力人が集まることは控えるべきなのだから、開会式や閉会式などのセレモニーもやらないのが妥当なはずだが、こんなタイミングで開会式・閉会式の演出を担当するチームメンバーが発表された。自分にとっては、勿論ここに名を連ねる人達のことも嫌悪の対象だ。
東京オリンピック、開会式の演出チームのメンバーは? コンセプトも発表【一覧】 | ハフポスト
このメンバーの中に、1990年代に流行った渋谷系と呼ばれたミュージシャンの1人、小山田 圭吾の名があったことが、ある騒動に発展した。小山田は過去に、雑誌のインタビュー記事の中で、障害者の生徒への暴行や排泄物を食べさせたこと、オナニー強要などを、武勇伝のように語ったことがあって、そのような人物がオリンピック・パラリンピックの式典演出に相応しいのか、という声が上がった。
小山田圭吾 - Wikipedia
ただの「同級生いじめ」じゃなくて、「障害者いじめの人がパラリンピックに」ってところが重要なんですよね。 https://t.co/5etYj8wiYn
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) July 15, 2021
吉田 豪のこのツイートを見て、「収容所で虐殺に加担したことを武勇伝のように語った過去のある、ナチの看守だった音楽家を、イスラエル独立記念日の式典に起用するような」 と言えば、少し大袈裟な気もするが、そういうことだと思った。小山田に一切の芸能活動を許すな、というのならそれは言い過ぎかもしれない。しかし、オリンピック・パラリンピック式典演出に相応しい人選なのか、と言われたら、相応しくないとしか言えない。
この件について音楽プロデューサーの高橋 健太郎が、
小山田圭吾が五輪開会式の音楽を手がけたことで、ここまで批判噴出するのなら、これまでEテレで子供向けの番組の音楽を多数手がけ、毎朝、放送され続けてきたのに、何で批判殺到とはならなかったんだろう。
— kentarotakahashi (@kentarotakahash) July 16, 2021
と、ツイ―トしているのだが、自分には「今まで見逃されていたんだから、今回も見逃してやれ」と言っているようにしか見えなかった。単に今まで相応しくない人物が無頓着に子ども番組などに起用されていただけだろうが、果たしてそれが正しい判断だったと断言できるか?
世の中の全ての事象に注目できる人はいないし、だから、これまで見逃されていただけのことではないのか。なので、だから今回も目くじら立てないのが妥当、とは言えないのではないか。
もしこのツイートに関する自分の解釈が間違いでないなら、高橋の言っていることは、十数年後にやっとセクハラ被害を告白出来た被害者に、今更おせーよ、そん時言えよ、と言うようなものではないのか。少なくとも自分にはそう見える。
吉田 豪は小山田の当該記事が当時掲載された背景についても言及している。
小山田圭吾のいじめ発言は、悪趣味ブームだった当時(94〜95年)は別に問題にもならず、 その後だんだん世間の常識が変わってきてからは何度も「これはひどい!」的に掘り起こされてきたという経緯があります。そして、あれは小山田圭吾だけじゃなくて、当時の『QJ』とライターの責任も大きいかと。
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) July 15, 2021
「当時からいじめは問題だった!」ってリプライが多くて、そりゃそうだし、もちろんボクもそんな『QJ』が苦手だったんですけど、それでも次の号で謝罪文が載ったりするわけでもなく、「村上清のいじめ紀行」という連載が普通に続いていくような時代だったんですよ。それが90年代のサブカル。 https://t.co/IMfrZ2aBpZ
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) July 15, 2021
吉田 豪は単に当時の状況を示しているだけなのだが、世の中には、自分の目に入る、耳に聞こえる範囲だけが世界の全て、と勘違いしている人が一定数いる。次のツイートのように、悪趣味ブームなんてなかった、イジメが許容された時代もなかったとか、吉田 豪は小山田のいじめを擁護する為にそんな捏造をやっている! のようなことを言う人がかなりいる。
吉田さんの本好きなんですが、悪趣味ブームなんて聞いた事ないしイジメが許容された時代は無いし、
— 𝗡𝗢𝗡𝗕𝗜𝗟𝗜◪𝕂-𝟙ファン (@nonbili2016) July 16, 2021
自分含めた世の中の常識がこんな凄惨なイジメを受け入れた事は無いです。
狭い業界や個人を指すならいいですけど、同時代に生きた者を巻き込んだ捏造はしないで欲しいです。
これは、「かつて奴隷制があった」と言っている人に対して、「奴隷制を擁護する為に奴隷制が認められていたなんて捏造するな」と反論するようなものである。「かつて奴隷制があった」ということは事実であり捏造ではないし、奴隷制があったと言っただけで、それを奴隷制の擁護と言うのは拡大解釈も甚だしい。
吉田
豪が主張しているのは、奴隷が社会的に許容されていた時代があったように、遠くない過去の日本に、いじめという行為や被害者の損害が社会的に軽視されていた時代があった、ということだ。そんな意味での、実質的な社会全般における ”許容” であって、捏造でもなんでもないし、いじめの容認・擁護でもない。
「いじめは最悪」「それを自慢げに話したことも最悪」なのは当然の話で、なぜそれが当時は当たり前のように雑誌に載り、さほど問題視もされなかったのかという背景の説明をずっとしているだけなんですよ。 https://t.co/FVEZU2a3cb
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) July 16, 2021
なぜあんな話を語ったのかというと語っても大丈夫そうな空気があったからだろうし、なぜあんな話が載ったかというと載せても大丈夫そうな空気があったからだよなって話です。いまと違うのはネットの有無だけじゃなくて、あの時期、不道徳不謹慎悪趣味鬼畜を良しとする空気があったのも影響してる、と。 https://t.co/oYiZ3oFlzJ
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) July 17, 2021
「吉田豪が“悪趣味ブーム”という有りもしない歴史を捏造して、小山田圭吾のいじめを擁護した!」という歴史捏造。
— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) July 16, 2021
この騒動を受けて、渦中の小山田が昨日声明を出した。
小山田圭吾さんの謝罪声明全文。傷付けてしまった本人に「直接謝罪をしたい」 | ハフポスト
この声明をどう受け止めるか、それは人それぞれだろうが、自分の目には、この件でオリンピックと関係者に迷惑をかけました、と言っている面の方が強く感じられ、誰に向けた謝罪なのか?という感しかない。しかも辞任はせずにオリンピック式典には関与し続けるそうである。
反省だけならサルでもできる https://t.co/3nb19QkwRS pic.twitter.com/fD85L4UuUs
— Tulsa Birbhum (独見と偏談) (@74120_731241) July 15, 2021
このツイートは、反省と口にするだけで失敗を繰り返す大臣の西村、そして前安倍政権/現菅政権の面々を揶揄する趣旨で投稿したが、小山田にも同じことを言いたい。
この小山田の釈明と辞任否定について、ツイッタージャパンの扱いも酷かった。ツイッタージャパンは、”小山田圭吾氏辞職せず” の ”せず” を削って、小山田圭吾氏辞職 をトレンドとして流布していた。それでは意味が全くの正反対になってしまう。
辞職せず
— Tulsa Birbhum (独見と偏談) (@74120_731241) July 16, 2021
から”せず”を削ってトレンドとするツイッターってのは、フェイクニュースの温床と言っても過言でない。 https://t.co/qtYY1DWmb8 pic.twitter.com/y7cQQfbwbf
こんなフェイクニュースを平然と流布するのがツイッタージャパンである。これを仕様で片付けるなら、もう何でもありあだろう。いくらでも世論に影響を与えることが出来てしまう。
この件は、たった一つのことから、こんなにも様々なことが短期間に発展して起きる、というとても興味深い例だった。
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